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不視議な彼女とフリーター!  作者: 銀虎
退屈な日常からの脱却
2/5

出逢い

 ガチャッ

「ただいまー」


 ドアを開け、俺は空の部屋に向かって言う。

 部屋には勝手に流れているラジオの音だけが鳴り響いていた。もちろん、返事はない。

 まったく、この孤独感はいつまでたっても慣れない。


「あー、疲れた」


 俺は深く溜め息をついたあと、冷たい床に寝そべって暫くの間、天井を眺めてみる。

 ほんとに汚い天井だ。年季が入ったぼろアパートとすぐ分かるほどに。


「……さて、書くか」


 ようやく気が落ち着いた俺は、ムクッと上半身を起こすと、机上を見た。次にカバンの中から新品のペンを……


「あれ?……ない」


 そこでやっと気がついた。折角買ってきたペンを無くしてしまったことに。

 カバンの中身をぶちまけた。あのときに違いない。


「まじかよ」


 いろいろとうんざりとしてしまった俺は、再びコンビニへ向かう気力も起きなかったので、そのまま布団へと入った。

 ふて寝というやつだ。


「明日は明日の風が吹く」


 そう心の中で呟いて自分を励ましてみたが、思い起こされるのは、やはり何の変哲もない退屈な日々だった。

 そんな自分が嫌になったので、さっさと瞼をおろして寝ることにした。




…………

「ジリリリリッ……」


 外で気持ちよさそうに鳴いている鳥とは対照的に、騒々しい目覚ましによって俺は叩き起こされた。


「う……んぐっ……」


 目覚ましを叩いたのち、のそりと体を持ち上げる。

 汚い天井が視界いっぱいに広がる。


「はぁ、今日も独りか……」


 そう呟き、朝っぱらから憂鬱な気分に(さいな)まれる。

 今日も退屈な一日が始まる……はずだった。



「…………?独りじゃないよ?」

「どぅわあ!?」


 不意に背後から聞き慣れない声がした。

 盛大に驚きつつも声のした方を見ると、その先にいたのは金色の髪をもつ少女だった。小学生くらいだろうか。容姿は明らかに日本人のそれではなかった。

 早々、俺はパニックだ。

 そもそも、俺以外に人がいる事自体がおかしい。


「えーっと、なんで俺の家に女の子がいるんだ?

 もしかして、酒の勢いで……いや、昨日は酒なんて飲んでないはず」


 そもそも、俺は酒に弱い。つまり、呑むことすら考えられない。


「それにしても、見たこともない子だ。これってもしかして誘拐になるんじゃ……」

「ねえ、さっきから独りでぶつぶつ何言ってるの?」


 不意に彼女が顔を覗きこんできた。

 俺ははっと我に返った。そうだ。こうなった経緯なんて今はどうでもいい。まずはこの状況をなんとかしなくては。


「ね、ねえ。お嬢ちゃん。お家は何処なのかな?」


 なんか誘拐犯のような言い回しになってしまったが、気にしないでおこう。そして、問題は彼女の返事なのだが。


「お家?ここが私のお家!」

「はぁ!?」


 いやいや、意味がわからないから!?

 こういうときは、とりあえず交番へ届ければいいのだろうか?

 彼女の顔をちらりと見てみる。…………いや、もう少し質問してからにしよう。それからでも遅くないはずだ。彼女をみていると、不思議とそう思った。


「えーっと、ご両親はどこにいるのかな?」


 俺はモーニングコーヒーを淹れながら聞いた。


「うーん、両親はいないけど、ご主人様ならいるよ?」

「ん…………?」

「私のご主人は天野 浩太(あまの こうた)!」

「ブフゥッ!?」


 それを聞いた俺は盛大に口に含んだコーヒーを吹き出してしまった。

 だって、当たり前だろ?それ、俺の名前だもん。

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