退屈な日常
『近年、地球の地磁気が弱まっており……』
独りしかいない部屋にラジオのニュースが虚しく鳴り響く。
「俺が子供の時考えてた未来ってこんなんだったかな……」
誰に問いかけるでもなく俺は一人つぶやいた。
もちろん、その問いかけに答える声があるはずもなく……。
「はあ、こうなるなら、大学行くべきだったかなぁ」
床に仰向けになり、身の辺りを見渡してみた。
部屋に物はほとんどなく、窓やドアは立て付けが悪いのかやけに寒い。ガスなどのパイプラインは止められて使えない。更には、普段の情報源はラジオから流れる音声、それのみだった。
自分でいうのもなんだが、非常に殺風景な部屋だ。
……誰がこんな将来を想像できただろうか。
二十歳を過ぎてもなお、収入はバイトのみ。
採用試験の面接を通過した経験はなし。
てゆうよりも、受かっていたならば、俺はとっくにサラリーマンになれている。
なにより、一番の間違いは将来の夢が決まっていないからといって、大学へ行かなかったことだ。
行こうと思えばいけたというのに。
「はあ、出来ることなら俺の人生やり直したい……」
そんなことを呟きつつ、俺は重い腰を持ち上げて、机へと面と向かった。
気は乗らないのだが、俺にはその必要があった。
無論、就職のための履歴書を書くためである。
「カチッ」
ペンをノックしてから、書類へと個人情報を書き込むべく、ペンを走らせる。しかし、文字は書けず、ただ、掠れた線が描かれていく。
……要するに、インクが切れていたのだ。
「はあ、ペン買いに行かないと駄目か」
気だるそうに立ち上がると、そのままフラフラとコンビニへと向かった。
…………
「ありがとうごさいました」
俺はその声を背にして、コンビニを後にした。
夜道は非常に見通しが悪い。特に俺の家へと続く道は殆ど人通りがない。
非常に暗い道だった。
「ドンッ」
ぼーっと歩いていたら、うっかり前方から歩いてきた人とぶつかってしまった。その勢いで、俺は持っていたカバンの中身を道にぶちまける。
「す、すみません……」
俺は詫びをいれつつ、道にばら撒かれたそれを拾いはじめた。先程の人からの、きつい視線が感じとれる。
まったく俺の人生、最悪だ。少なくとも、決して良い人生ではない。
「はぁ、どこで間違ってしまったんだか」
俺は深い溜め息を吐きつつ、空をふと見上げた。
その日の夜空は異常な程に、赤く染まっていた。
「どこかで火事でもあったのかな?まあ、あんだけ遠ければ、家には来ないか」
我ながら不謹慎な発言だ。本当にそうだとしたら、ただごとじゃないのだから。
『この光線には特殊な波長の光が含まれており……ジ…ジジッ…………これって私のことなのかな?ふふっ』