鼻へkiss
第一印象、可愛い。
小さくてふわふわしていて、甘いお菓子みたいな女の子。
こんな子が本当に存在するのかと驚いた。
身長目測150cmちょっとに、柔らかそうな少し癖のある髪の毛は甘そうな薄い茶色。
長いまつげはしっかりと上を向いていて、小動物みたいに丸い瞳はキラキラしていた。
何だこれ、撫で回したい。
そう思った時にはもう体が動き出していて、彼女の頭を撫でていた。
突然のことに彼女はきょとん、と大きな瞳をさらに見開き私を見上げた。
うん、可愛い。
何度でも言おう、可愛い。
「あ、あの?」
撫でられるままの彼女は首を傾げる。
ふわふわの髪に指を絡ませながら貴女の名前は?なんて問いかける。
初対面の彼女に対して不躾なのは百も承知だ。
まず相手に名を聞くのなら自分から名乗るべきだとも思うし。
それでも彼女は微笑む。
そして形のいい唇をゆっくりと動かす。
「……ちゃん、起きてよ、礼ちゃん」
ゆさゆさ、と体が揺すられる。
心地いいソプラノが耳に馴染んで溶けてゆく。
重い瞼をゆっくりと開けると、視界が定まらず目の前の彼女が何重にも見えた。
あぁ、私は眠っていたのか。
目の前の彼女は出会った頃と何一つ変わらない笑顔。
目を細めてクスクス笑う。
「気持ちよさそうに寝てたね」
なんて言いながら。
夕日が差し込む教室には私達二人しかいない。
そんなにいい夢見てたの?なんて彼女の声。
私は窓から空を見上げそうだね、なんて笑う。
貴女と出会った時の夢だよ、なんて。
目の前の彼女の髪を撫でるとだらしなく頬の筋肉を緩ませる。
そんな彼女も可愛い。
頭の後ろに手をやり、彼女との距離を詰めさせる。
チュッ、なんて軽いリップ音をさせて私は彼女の鼻頭にキスを落とす。
照れくさそうな彼女を見て、私も笑うのだった。