07.また殴られに行って貰いましょう。
できちゃったって何が? 何がってあれですよ。べビちゃんですよ!!
もう本当その辺はしっかりしてよ! お二人さん。
純真無垢な(また言っちゃったよ)乙女には刺激強すぎだから。
友香に相談された時覚えがあるみたいな話になって、本当勘弁して。その事想像しちゃって、悩んでる友香の前だってのに壁に頭ぶつけまくったよ。
あれは地味に結構痛かった……。
そりゃね、まだ処女でそんな事無縁の私ですけど、人並みに知識はあるわけで。でもって興味もちゃんとあるから、俗に言う耳年増ってやつだと思いますよ。
そんな相手に、めっちゃ身近な二人の性の話しをされちゃあ堪らんよ。そりゃ頭打ちたくなるよ。
「ただいま……」バイトから慶が帰ってきた。そしてこの状態を見て、判断して……シカトすることに決めたようだ。
えー、お兄ちゃん死亡中ですよ?(変な日本語だな、おい) このまま無視はいかんでしょう。
睨んでる私の視線を受けて、溜息をつきながらそれでも家族会議に参加することにしたよう。って家族会議始まってもないけどね!
「……で、話し合いは終わったの? 終わった上で、兄貴は伸びてるわけ?」いえ、だから始まってもません。
優ちゃんと友香が来て、二人でリビングの真ん中に正座したなぁと思ったら、優ちゃんが
「彼女のお腹の中に俺の子供がいる。だから結婚させて欲……」しいまで言う前におじさんがぶっ飛ばしたわけです。
「……おやじ? お嫁さんに来て貰う人びびらせてどうすんだよ。友香も知ってると思うけど家こんなんだから。何度も聞いたけど、本当にいい訳?」私の親友の友香。もちろん慶も知ってます。だって同級生だし。
実は家も近くて小学校からの付き合いだったりする。慶は共学行ったけど、私たちは高校も一緒で女子高さ。
もちろん私の家族も慶・優ちゃん家族も友香の事は知ってて、付き合いだした時はこのままゴールインしてくれないかねぇなんてお母さんとおばさんと話した記憶もある。
が、こんな形でゴールインでびっくりだけどね。
相談された時、私は優ちゃんも即行で呼び出し二人に説教した。
社会人一年生とまだ大学生。それで子供出来ましたってそんな立場じゃどうしたって親の助けは必要でしょ。
その辺の事はさ、よくわかってる二人だと思ってたんだけど……恋の力って本当盲目になるわけ?
盛り上がって~流されて~その結果って……いかーん、また想像しかけた! なまじ友香を抱きしめたままだからいけないのよね。
大分落ち着いて、慶に話しかけられた友香からさりげなく離れる。
「もちろん、私だって悩んだよ。でも、でもね、やっぱり産みたいと思ったんだ」友香はそう言うと、おじさんとおばさんの方へ向き直る。
「おとうさま、おかあさま。本当にご迷惑をお掛けして申し訳ありません。ですが、優一さんと結婚させてください。赤ちゃんを……この子を産ませてください。宜しくお願いします」そう言って手をついて頭を下げる友香を見て、じーんと来てしまった。
うぅー。友香綺麗。可愛い。格好良い。素敵。惚れ直すわ! それに比べて……
「あらあら素敵。優ちゃんの立ち居地が見えた気がするわねぇ」ええ、お母様。私もそう思いますわ。尻敷かれ決定!
「……友香さん。こちらこそ宜しくお願いしますわ。こんな馬鹿息子ですけど、宜しくお願いします」あー、おばさんの中で優ちゃん馬鹿息子決定。
「……友香さん。こんなこと聞くのは酷だが、本当にいいのかい? 君はまだ二十歳で若い。大学だってまだまだだ。それなのに……これからの人生を決めてしまって、本当にいいのか? ……まだ……間に合」あー! おじさんその先は言っちゃ駄目よ! 総スカンよ。ちょっと復活した権威がまた一気に剥奪されるわよ!
「幸治さん」静かなおばさんの声でおじさんの声も止まる。
「あなたには私から後でゆっくりとお話しがありますから、覚えておいて下さいね?」にっこりと素敵な笑顔でおばさまはそう言うと、再び友香に向き直る。
ブリザードが! ダイアモンドダストが! 猛吹雪が!(ブリザードと同じ意味だったわ!?) 吹き荒れているー。
「友香さん。色々と大変だと思うから、今はあまり無理をしないでゆっくりと決めていきましょう。ご両親にはまだお話しされてないのでしょう?」おばさんがそう言うと友香は涙を浮かべ頷いた。
そんな友香をおばさんは優しく抱きしめると、まだ伸びてる優ちゃんの方を見て、
「あの子にはまた殴られに行って貰いましょう」と断言した。