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君が好き??  作者: 尾花となみ
sideC:番外編
53/56

Period ―ピリオド―(スピンオフ)川嶋 早紀視点

 早紀視点とは驚きですが、書きたかったのです。

 スピンオフとなっておりますので、唯と慶二とがラブイチャしてる訳ではございませんのであしからず。


 早紀って誰だよ、とお思いの方は人物紹介をご参照ください。ってのは冗談で、唯の大学の友人です。友達その1・慶が好き女子。お色気たっぷりの女の子です。

 いい加減さっさとくっついちゃえばいいのに、って思う。煮え切らない二人が想い合っているのは傍から見たらバレバレで、なんでくっつかないか逆に不思議でしょうがない。

 産まれた時からずっと一緒にいる二人には、きっと私達には知りようのない歴史があって……それが障害となって今の二人の状態なんだろうな、ってのは分かるけど……いい加減うざったい。


 さっさとくっついて欲しい。そうしたら私のこの行き所のない想いもいい加減ピリオドが打てるのに……。



 ◆ ◆ ◆


 Period ―ピリオド―


 ◆ ◆ ◆



 先に友人になったのは唯だった。こんな私にもなんの裏もなく素直に接してくれる彼女をすぐ好きになった。

 自分はどちらかと言えば派手な外見をしていて、それに引き寄せられてくる男はどうし様もない男ばっかりだった。きっと性にも奔放な方だった私は基本同姓には嫌われた。


 別に誑かすような事をしてるつもりはない。別に気を持たせるような事をしてるつもりはない。でも気付くと友達の彼氏は皆私と浮気したがってて、誘われると嫌とは言えない自分は身体を重ねてしまうことが多かった。


 別に波風を立てたい訳じゃない。でも友達の彼氏に誘われて簡単に寝てしまう自分は、言い訳した所で争いを好む性質なのかもしれない。


 だからって訳じゃないけど、富樫君にもすぐ興味が沸いた。

 富樫君と話す唯を見てすぐに気付いた。唯が彼を好きだって事に。そして同じように富樫君も唯の事が好きなんだって事にもすぐ気付いた。

 二人の掛け合いを見ていれば見ている程、なぜか私は富樫君に興味を持った。



 ◆ ◆ ◆



「富樫君って……どうして唯と付き合わないの? あんな女達と付き合ってるのに」

 純粋な疑問だった。

 でもその疑問に対して富樫君は一瞬苦い顔をしたけどすぐに余所行きの笑顔を貼り付けた。唯に対して見せるのとは全然違う顔。


「俺達は幼馴染で兄弟みたいなものだからな」

 笑顔でそう律儀に答えてくれた富樫君は、本心では絶対にそんな風に思ってない事はバレバレだった。

 いつもそう。唯が関わらない事では平気な顔で知らん振り出来るのに、唯の事となると途端にぼろが出る。


「じゃぁ、私となら付き合える?」

 自慢の胸を寄せてちょっとした好奇心で聞いてみた。

「付き合えない」

 笑顔のくせに、にべもなく断られて一番最初の攻撃ではプライドが刺激された。



 二番目の攻撃は、唯の目の前でした。自分でも結構性格が悪いなって思ったけど、二人に揺さぶりをかける事で二人の関係が変わるかもしれないって言う親切心半分と、唯の前でも平然と出来るのか富樫君を試す気持ちが半々だった。


 結果は鼻で笑われて終わった。唯は固まってたけど、その後何もなかったように知らん振りする二人が妙に憎たらしく感じた。

 どうしても二人は男女の関係になるつもりはなさそうだった。


 お互い想いあっているのに幼馴染と言う関係に胡坐をかいて、ぶつかり合うのを避けている。そうとしか思えなくて……むかついた。


 何度目か分からない攻撃の後、唯に「慶の事が好きなの?」と聞かれた。

 すっごく真剣な顔して真面目に聞いてくるから、ちょっと反省した。

 私の攻撃は思っていた以上に唯の負担になってたみたいだった。


 それからは唯の見えない所で攻撃することにした。答えはいつも決まっているし、二人の関係が揺らがない以上、意味がないのは分かってたけど……自分でも止められなくなっていた。


 別に、揉めたい訳じゃないの。本当だよ? 唯の事は好き。

 富樫君に言い寄ってる私を本当なら絶対に疎ましく思うはずなのに、友情とはまったく別物に捕らえている唯が……嬉しい。


 これで富樫君が私に答えていたらまた違って唯との友情は変わっていたかも知れない、でも富樫君は私に答えてくれる事はなかった。


 親衛隊の女達の事は平気でとっかえひっかえ寝るのに、私は抱かない。

 親衛隊の女達に劣ってるなんて思わない。それ所が余裕で勝ってると思ってる。


 でも……富樫君は答えてくれなかった。


 その理由は分かってる。唯の友達だから。唯が私を友達だと思ってくれてるから。

 富樫君の優先順位は圧倒的な首位に唯がいて、その他は同じ。唯の為ならどんな苦労も厭わないのに、それ以外の事には指一本動かすのも疎ましそう。


 唯が傷つきそうな事から率先して守り、唯が大切に思っている相手には富樫君自身も優しく接する。富樫君の世界は唯を中心に回り……その他は唯が幸せにすごす為の装飾品に過ぎない。

 そんな富樫君の内面は側にいる人達ならみんな分かってたと思う。


 唯の友達だから、親衛隊では見ることの出来ない富樫君が見えて。

 唯の友達だから、しつこく言い寄る私を無碍には出来なくて。

 唯の友達だから……絶対に関係を持つことはなかった。



 ◆ ◆ ◆



「川嶋さん、もう本気でやめてくれる?」

 体を寄せる私に、はっきりきっぱりとそう断られる。言われてちょっと顔が強張るけど、本当はそんな風に言われなくてもわかってた。


 朝からずっと唯と一緒にいる富樫君を見てわかってたよ。本気になったんだなって事は。だから、そんな風に申し訳ない顔しなくてもいいの。あなたの中には唯しかいないって分かってたから。

 誰だってわかってるから。


「ごめん」

 謝られて少しイラっと来る。

「別に……謝られる必要ないけど」

 イラつきを抑えるためにぶっきらぼうな答えが出る。小声しか出なくて誤魔化すようにお弁当を広げる。

 謝らないで、分かってたんだから。そんな顔しないで。富樫君らしくない。


「……私、唯の事好きなのよ?」

 そう言って笑ってあげると、富樫君は少しホッとした顔をした。


 いつも断ってたじゃない。だから今更謝られる様な事じゃない。いつも唯の友達だから私にも優しくしてくれてたんでしょ? それなのに、今になってそんな気遣いを見せないで。


 謝られる自分が惨めで、気を使われる自分が哀れで、すっごく悔しくて。

 あなたのそんな態度に動揺してるなんて気付かれたくなくてワザと明るい声でおどけてみせる。

「もうヤッタの?」


 富樫君が隣でご飯を吹き出して大慌てしてるから気持ちがすっと軽くなる。

 さんざん女をとっかえひっかえしてるくせにそんな質問に動揺するなんて笑っちゃう。本当に、富樫君は唯の事となると別人みたい。


「ヤッテないし付き合ってもない」

 むせながら律儀に返事してくれた富樫君を見て可笑しくなる。すっごく可笑しくて馬鹿らしくて、声を出して笑った。


 なんでこんなに自分の全てを捧げて相手を思えるんだろう?

 なんでたった一人の為にここまで一生懸命になれるんだろう?

 何がそんなにいいの?

 何があなたをそこまで駆り立てるの?


 私と唯は何がそんなに違うの?

 気の合う友達。価値観だって似てる。もちろん他人なんだからちょっと似ているだけで本質は全然違うのかも知れないけど。


 でも、それでも何がそんなに違うの?


 産まれた時からずぅっと富樫君に想われて守られて来た唯。どうして?

 なにが違って唯にはそんな相手がいるの?

 私にはそんな相手一度も現れたことなんてないのに……。


 すっごく悔しくなって唯を睨み付ける。


 富樫君とまだ付き合ってないってどう言う事よ?

 富樫君が本気になったのに、なんで唯はまだ正面から向き合わないの?


 どうしてそんな風に逃げてるの?

 どうしてこんなに唯の事を想ってる富樫君の気持ちを見ないフリしてるの?

 私なら絶対にその想いを受け止めるのに。


 悔しくて……その日の夜は涙が出た。

 初めて真剣に断られて、初めて自分の本当の気持ちが分かって、涙が溢れて止まらなかった。



 富樫君の中心には唯がいて。誰かが入る隙間なんてない。だから、最初から戦える訳ないの。最初から負ける事は決まってるの。

 そんなの側にいれば誰だってわかる。分かってる事だよ? 分かってた事だよ…………。


 でも、自分の気持ちはその分かってた事を飛び越えてどんどん走り出しちゃって。気付いたら私自身も置き去りにして遠くにいた。

 負ける事が分かってる勝負を挑むなんてどうかしてる。だから、勝負なんて始めてなかった。最初から諦めていたのに……気持ちだけは膨らんでたんだね。


 正面から戦う事もしないで、でも諦めることも出来ずに膨らんでしまったこの想いは、どこへ行けばいいんだろう?

 自分自身見ない振りして気付かない振りして、いつの間にか簡単に捨てられない程に大きくなってしまったこの想いは……どこへ置いて来ればいいんだろう?


 二人がくっつけば終止符を打てると思っていたこの気持ちは、そんな簡単なものではなくて、余計に行き場をなくしてしまった。

 いい加減さっさとくっついちゃえばいいのに、って思う。唯がちゃんと富樫君と向き合って、二人が幸せになれたなら、本当の意味でこの行き所のない想いもいい加減ピリオドが打てるかも知れなかった。


意外に真剣に恋をしていたのでしたー。


私こう言う女の子大好きですw

恋愛ストーリーにおいて王道でヒーローに片思いする女の子。結果はもちろん玉砕するんですけど、どうしても応援したくなっちゃうw


そしてその女の子の救済ストーリーも大好き!

と言う事で次回は、(一応)救済の芽が?

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