続・高校2年生の二人(ホワイトデーSS)唯視点
拍手に置いてありましたSSを移動させました。
前回バレンタインデーの続きです。
今回は唯視点でお送りします。
「…………何? これ」
ダイニングテーブルに座っていた私の目の前に差し出された紙袋を見て、差し出してきた最低男をにらみ付ける。
「……やる」
別にいりませんけど! 許可なく正面に座って来る、ろくでなし、最低、女の敵、色情魔、ケダモノ男から何か頂く言われはございませんが!
「今日、何の日?」
今日? ……そんなの言われなくたってわかってますけどね! わかってますからこそあなたからは頂きません!
「食べたから、あれ」
……なんですと? ってかまぁ、そんな気はしてたけど。
だってリビングに捨てたはずなのになかったし。捨てたままにしといたらお母さんに何か言われるかもって思って、あの日慶がいなくなってからすぐに確認したけど、ごみ箱にはなかった。
としたらやっぱり慶が持って帰ったんだろうなぁとは思ってたけど……拾っただけじゃなく食べたんだ。なんか悔しくなって唇を噛む。
あのチョコは……慶に買ってきたものだから、結果として慶が食べてくれて本懐を遂げた事になるんだけど……ムカつく。
「……悪かった」
俯いた私に本当に悪いと思っていそうな慶の謝罪が届く。でも、謝られると余計にムカつく。全然私の気持ちわかってないくせに!
「……別に謝って貰う必要ないけど。だって、自分で投げたんだから」
そう強気で可愛くない言葉が口から飛び出る。本当は、本気で告白をしようかと思って買ってきたのに。
高校に入って慶の周りが騒がしくなって、なんかすごく悔しくて悲しくて、でも好きで。だからいっその事告白しちゃえって勢いで後輩に誘われたついでに買っちゃったんだけど……。
でもそれがまさかダブルブッキングとは……ありえないでしょ。
はぁ、最悪。ゆり子の話もっとしっかり聞いとけば相手が慶だって気付いたかなぁ? でも超格好いいしか言ってなかった気がするから気付く訳ないじゃん。
生徒会の後輩で妙に懐いて来たゆり子は、通学でいつも見かける他校の先輩が好きになったって言ってて。まったく接点がないからバレンタインデーで思い切って告白するから先輩買いに行くの付き合って下さいって言われて一緒に買い物したのは1ヶ月前。
そしてその当日ゆり子が慶にチョコを渡して告白しているのを目撃し……挙句の果てにあの慶の発言ですよ。もうサイテー。
「……ゆり子には?」
私がそう言って睨み付けると眉間に皺を寄せながらキョトンとした顔(どんな顔だよ)
「……ゆ・り・子! まさか名前も聞いてないとか言わないよね? ゆり子からもチョコ貰ったんでしょ? ちゃんと返したの?」
「あーあーあぁー」
今思い出したって顔するもんだから余計にムカつく!
「何よそれ! あんな台詞言ってたくせに知らん振り?! ……次の日ゆり子に慶の事聞かれて、幼馴染って答えてからゆり子何も言って来ないから……」
かなり気になってた。でもこっちから聞けないじゃん? 慶にも聞けないじゃん?
だってその後……発展したなんて聞いたら私死んじゃう。
「あれから会ってない。あの、台詞は! ああ言えば断るかなぁと思って」
言い訳すんな! 嘘付け! 絶対に本気の顔してたもん。いやらしい顔してたもん! 涙目になって睨み付けると慌てて目を逸らされた。
「……知り合い……だった?」
「生徒会の後輩。チョコ見たんならわかるでしょ! 一緒に買いに行ったの!」
「あぁ、やっぱり……」
しょぼんと項垂れる慶を見て、なんかおかしいぞ。なんだこの生き物。本当に慶二さん? なんか垂れた頭から耳とか見えそうですけど。
さすがにちょっと可哀想になってくる。ってか本当なら私がここまで怒るのも変なんだもんね。別に付き合ってる訳じゃないし。ただの幼馴染でお隣さん。その相手にちょっと恥ずかしい所目撃されたからってここまで卑屈になる必要ないのに……珍しいね?
ちょっといじめたら申し訳ない気がするけど、それでもなんか悔しいから、
「他にもいっぱい貰ってるでしょ?! その人達はどうしたの?!」
と詰問風に聞いてみる。本当は聞きたくないけど! 聞きたくないけど聞いちゃうよ。
「これしか用意してない」
……なんですと?
「だって面倒臭いし」
びっくり顔の私を見て慌てて言い訳した慶をまた睨み付ける。うぅ、女の敵!
「だったら貰わなきゃいいじゃん! お返ししないなんてサイテー! ってか付き合ってる人いるんでしょ?! その人にも何もしないの? ってかそんな人がいるのにチョコレートいっぱいもらうの!?」
「別に! ……別に付き合ってねーけど」
は? ゆり子が言ってた台詞もしっかり覚えてますけど?! 盗み見・盗み聞きなんて悪いって思いながらしっかりばっちり聞いてたんですけど!
「…………」
無言の慶を睨みつけるけど、慶はそれ以上は黙秘する事に決めたようで何も言わない。
そんな無言の空間が続けば次に気になってくるのは……まだ目の前にある紙袋。だってこれ、慶が私にだけ用意したお返しなんでしょ?
私はあげたつもりはないけどさ! あげたつもりはないけど……貰った事にして私には律儀に返してくれたんだよね? まぁ、自分用だなんて思ってる訳ないだろうから、チョコをダメにしちゃったお詫び、ぐらいの感じでお返しなんだろうけど。
でも、でもでもちょっと嬉しくない? だって他の人にはないのに……私にだけはあるんだもん。ヤバ、そう思ったら顔にやけてきちゃったよ。なんて現金なの私。
「まぁ、貰ってあげてもいいけど」
その内心をごまかそうとしてそんな言葉が出る。ってなに私何様? 女王様?!
でもそんな偉そうな私の態度でも気を良くしたのか、慶の顔がパッと明るくなり笑う。うぅ、なんだその輝かしい笑顔は。キラキラ花背負って効果音でも聞こえてきそうだよ。
「良かった。じゃ、これ」
そう言って手渡された紙袋に中身をマジマジと見て誤魔化せないほど顔がにやけて来た。何これホワイトデー限定っぽい感じ。
期待を籠めた顔で慶を見返すと、
「開けてみろよ」
と超笑顔。ヤダ、なんか嬉しいじゃない。
そーっとラッピングを解き取り出すと……チョコレート? でもこれ、すごい!
「これすげーよな」
箱型に細工されたチョコレートの中にホワイトチョコが入ってる。
「すごい! これ……外側も蓋も食べれるんだよね?」
頷く慶を見てからまたチョコを見る。えー、無理食べれないよ! 飾っておきたい!
「とりあえずホワイトチョコ食ってみろよ」
うんうん。食べます食べます。
チョコレートの箱からそっとホワイトチョコを取り出し……パクリ。うぅぅぅぅ、おいしーーーー!
「うまい?」
笑顔の慶に同じく笑顔でうんうん頷く。慶も食べる?
「一つだけなら食べてもいいよ」
って貰ったくせにまたちょっと偉そうに言うと、それでも慶は嬉しそうにホワイトチョコを一つつまんで食べた。
「ふーん、甘酸っぱいんだな。これはうまいかも」
なんだよその感想。感動しないならもうあげないぞ! そんな気持ちを籠めて睨み付けると笑われた。
「どうぞ全部お食べ下さい」
そう言って肘をつき私の慶を見る瞳は超格好良くて……恥ずかしいからやめて。あまりこっち見ないで。食べ辛いじゃない。
なんか色々誤魔化されてうやむやにされちゃった気がするけど! するけどまぁ、こんな素敵な物頂いたのでよしとするか!
こんなお返しくれるなら来年も考えてみようかなぁ~。なんてその時は思ったのです……。
……が! 後日。綺麗に全部食べて美味しかったので、また欲しいなぁーなんて思ってネットであのチョコレートを調べたら……あまりにびっくりな金額になぜかまたすっごく慶がムカついたのは仕方ない、よね?
以上、バレンタインSSからの続きホワイトデーSSでした~。なんかオチなしすいません。
捕捉で、なぜ唯がムカついたかと言うと、美味しかったのでまた食べたいのに自分では買えず、それなのにホイッと自分に簡単に高額チョコをプレゼントしたのが悔しかったようです。分かりづら!
たぶんねぇ、慶二的にはどうにか機嫌を直そうと頑張ったんだと思うのですが……それがまったく伝わらず可哀想な慶くんでした。
(慶二はバイトしてます。唯はバイト禁止高校なのでお小遣いだけ。なんて裏設定もあったり)
お付き合いくださりありがとうございます。
お返し→ 【ホワイトデー限定】ショコラの宝箱♪苺入りホワイト生チョコ「コフル・オ・フレーズ」




