高校2年生の二人(バレンタインSS)慶二視点
拍手ページに置いてあったバレンタインSSを移動しました。内容は変わりありません。
※慶二視点となっております。
※イメージダウン必須と思われます。
※それでもそんな慶二くんを見たい方はどうぞ~
「富樫先輩! 好きです。付き合ってください」
そう言って目の前に見たことのない女の子がチョコレートを差し出してる。
「……俺、あんたの事知らないけど?」
チャイムを押され出てみれば……家の前で勘弁してくれ。
「淑女学の1年です。通学途中でよくお見かけして……好きになってしまいました」
「………」
淑女学の1年、ね……唯の女子高かよ。
さて、どうするか。俺は差し出したまま上目遣いで俺を見つめる後輩を上から下まで隈なく観察する。
顔は悪くない。と言うか楚々とした美少女だ。清楚な顔の癖にスタイルは完璧だな。制服から伸びた足はスラリと長く、コートに隠されているはずの胸は隠れず主張してる。
そして性格は……緊張している気配もなく堂々と俺の目を見てチョコレートを差し出している所を見ると、なかなか度胸がありそうだ。
お淑やかそうな美人顔してこのスタイル……自分に絶対の自信を抱いてるタイプだな。視線にもそれは籠められていて、私が断られるはずがないって顔してやがる。
ふー。これが俺の高校の後輩なら確実に食らうんだが……唯の女子高かー。勿体無いけど断るかなぁ。
「先輩がたくさんの女性とお付き合いされてるは知っています。……でも……私ならきっと満足させて差し上げます」
おいおい、なんだそのエロイ顔。本当にそれで1年かよ。どっかの誰かとは大違いだな。
そこまで言うなら一回ぐらい試しとくのも悪くないな。……でも唯の高校かよー。この容姿でこの性格なら絶対に有名だろうから、唯も知ってそうだよなー。
知り合いとかだったらまずいか……待てよ? この女と付き合っとけば唯の事を聞き出せるかも知れねーな。
友香は全く俺に教える気がないみたいだからな……。
よし、俺にどこまで尽くせるか図ってから考えるか。
俺は笑顔でチョコを受け取る。そしてそのまま手を引き寄せ耳元でささやいた。
「今すぐそこの公園でやらせてくれるなら考えてもいいよ」
最後まで言うとついでに息も吹きかける。
女を見ると真っ赤でトロンとした顔で俺を見上げてる。こりゃご馳走様。
でもさすがにこんな時間から青姦する気にはなれねーからどっか行くか。
さてどうするか、と視線を上げたら……顔を真っ赤にして俺を睨み付けてる唯がいた。やべぇ、これは絶対に見られてた聞かれてた。自分の顔が引きつるのを感じる。
「ささささ、さいってーーーー!!!」
そう叫ぶと唯は手に持っていた紙袋を俺の顔に投げつけ家へ消えていった。
あぁ、俺本当最低。
「……慶二先輩? 今のって、唯先輩ですか? え? お隣なんですか?」
蕩けた顔から一転してビックした顔をする女の台詞を受けて余計に脱力。
はぁ、やっぱり知ってたのかよ。そう言えば京子さんがこの間友香と生徒会がどうとか言ってたような気がする……。
騒いでる女を無視して唯が投げつけた紙袋を拾って固まる。……これ、もしかしなくてもチョコレートかよ。
は? 唯が? 誰に? 誰にやるつもりだったんだよ! 絶対にこれは義理チョコとか友チョコなんて感じじゃねぇ。本命だ。
唯が本命?! 誰に!?
「せ、先輩?」
俺の機嫌が氷点下まで下がったのに気がついたのか、女が少し怯えた声を出したが関係ねぇ。
「お前帰れ。もう用はねぇ」
「先輩ひどい!!」
泣きながらなんか叫んでる声が聞こえたが無視。とりあえず……葛木家へお邪魔。
リビングにいた唯と目が合うと、心底嫌そうな顔された。ろくでなし、最低、女の敵、色情魔、ケダモノそんな言葉がガンガン視線に飛ばされてくるんですが……。自業自得とは言え、唯さん、さすがに俺でも傷つきます。
「……これは?」
紙袋を見えるように目の前に持ち上げると、さっきまでの忌々しい視線から泣き出しそうな顔になった。ヤベっ!
「…………」
唯は無言で俺から紙袋を奪い取ると、そのままリビングのごみ箱へ投げつけた。そしてそのまますごい勢いで階段を上り……ドアがバタンっ!と激しく閉まる。
また、やっちまったのか俺は……。誰かにやるつもりだったんだよな、きっと。でもつい俺に投げつけちまったせいでその誰かに渡せるはずねぇもんな……。
……誰に? 誰にやるつもりだったんだよ。
ごみ箱から紙袋を拾い上げ中身を出す。綺麗に包装されたそれは有名なブランド店のチョコレートで、少しつぶれて不恰好になってしまった箱がさっきの泣き出しそうな唯と重なった。
家に持ち帰って美味しいはずのそれを食べたけど、まったく味を感じなくて自分の迂闊さに頭が痛くなる。
その後それとなくチョコの相手を唯から聞きだそうと奮闘してみたが……ホワイトデーまでの一ヶ月間、ろくでなし、最低、女の敵、色情魔、ケダモノそんな光線が消えてはくれなかった。
自業自得とは言え……さすがに傷つきます。




