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君が好き??  作者: 尾花となみ
sideA:唯視点
32/56

32.来た意味なかったみたい?

 皆さんこんにちは。唯です。うん、そんな事は皆知ってると思うけどね、ちょっと気持ちを落ち着かせる為には皆さんに挨拶しておかないと気が済まない訳さ。

 その私の複雑な気持ちを分かって下さるかしら? 博識な皆様ならもちろんわかって下さるわよね。って事で意味不明な唯です。


 だってだってさー。もう意味わかんない。いや、実際には意味わかるけど。こうなる事はわかってたけど、想像通りになってしまって意味わかんない。

 私の目の前では修羅場が繰り広げられていま~す。


「お父さん話を聞いて!」叫ぶ友香。

「……僕はいくら殴られてもかまいません」頬を赤く染め土下座したまま厳かに優ちゃん。

「…………」終始無言の慶。

「父さんもっとやれ~」煽る正宗くん。


 ……で、私にどうしろと?

 んもーーー。もうさ、この中で一番の部外者は私なの。私ってば実は一番関係ない人間なのよ!


 それなのに私がこれを止めて収拾しなきゃいけないっておかしくない? おかしいよね? 絶対におかしいよね?

 それでもどうにかしないと死人がでそうだーーーー!(主に優ちゃん)


「お、おじさん! 落ち着いて下さい! 友香! 危ないから下がって! 正宗くん! 煽ってないで止めて!  慶も一緒に土下座!」取り合えず叫んでみる。

 叫んで言う事聞いてくれたのは姉弟で、友香はおじさんを止めるのを諦め少し離れる。正宗くんはしぶしぶおじさんを抑えてくれた。


 まったく慶ったらしらんぷりで「お手洗い借ります」ってどっかいっちゃったし!

 あら優ちゃん、幸治おじさんの時とは違って一発では伸びなかったのね。しっかりと土下座してるわ。


 なんて冷静に観察してる場合じゃないよ! 取り合えず落ち着いた話し合いをさせないと! なんて私がわたわたしていたら……

「いい加減におし! みっともない!」と渇が飛んだ。


 一喝で皆静かになり渇を飛ばした相手の方を見る。

「お福さーん」つい私の声が震えて涙目になってしまったのは仕方ない。だってマジ救世主~!!


「まったくみっともない。よそ様の手前だってのになんだいその醜態は」そう言って部屋に入ってくる小さいおばあちゃんはそれでも背筋をピンと伸ばし皆を睨み付けた。


「唯ちゃん御免ねぇ。見っとも無い所を見せてしまって。菊太郎、お前はその喧嘩っ早い性格を何とかおし! 優一さんと言ったかい? いいからお立ち。それから正宗、お前はもっとしっかりおし!」お福さん――友香達のお祖母さんは一息でシャキッと言い放つと友香を見た。


「朝からずっと様子がおかしいと思ったらこう言うことかい。まったく私に一言でも相談すればいいものを。まったく、薄情な孫だよ。誰がここまで育ててやったと思ってんだい」言葉厳しくそれでも温かい眼差しで見つめると、友香を抱きしめた。


「御免よ。不甲斐無い婆だね。お前の悩みを見抜けんかった。……さくらさんとは違うけんの……」

「お福さん! ごめんなさい、ごめんなさい。違うの、違うの! 相談したかった! でも……」

「私の体調を思ったのだろう? 馬鹿な子だよ、もっと頼ってくれていいんだよ。お前のたった一人の婆だ」そう言って全然大きな友香を抱きしめ撫でるお福さんはとても大きくて…………。


 あぁぁぁぁ、ダメだぁ。友香じゃないけど涙腺崩壊だぁ。

 格好良すぎるよお福さーん! なんて二人の抱擁を見て感動に打ち震える私の頭を物理的な衝動が襲った。


 ……痛い。なにすんじゃこらー! と人の頭を叩いた相手を振り返ると、溜息つかれた。えー。


「なんでお前が泣いてんだよ」いや、まぁそれは祖母と孫の感動シーンを目の前にしてこれが泣かずにいられるでしょうか?

 いやいられないはず。そんな事もわからないのですかい? 慶さんは! そう恨みを籠め下からおもいっきり睨み付ける……と、相手はなぜか変な顔。


「おまっ! ……そう言う顔あんま見せんな」ちょっと慌てた慶はそう言いながら私の目じりに溜まる涙を指ですくう。

「けけけけけけけい?」そ、そんな風に頬に手を伸ばされ、親指の腹で涙を拭われ優しく撫でられると……絶対に私顔赤いですよねぇーーーー!


「本当に可愛いよな。このまま食っちまいたい」い、意味がわかりません!

「意味がわかりませんよ、慶二さん。唯さん困ってるじゃないですか」そう言って石像のごとく固まっていた私の肩に手を乗せ、石化を正宗くんが解いてくれる。

 はぁ、ビビッタ。このまま一生石化したまま暮らさなきゃいけないかと思いましたよ。


「……唯さん……慶二さんに変な事されてません?」私の首筋を見ながら正宗くんはそんな事を聞いてきた。

「へ、変な事?」なんだろう? よくわからんけど助けてくれてありがとう。


「別に変な事なんてしてないぜ。至って当然の・・・をしてるだけだ」そう言ってクスッと笑った慶の顔は……超悪代官なんですけどぉ!

 その言葉を受けて正宗くんはなんか……苦虫を噛み潰した顔って言うの? そんな顔。

 

 何? なに? 何~? なんで二人してそんな戦闘モードになっちゃってるんですかぁ?

 二人に挟まれなんかよく分かんない雰囲気に結構ビビル。えっと、私どうしたらいいんでしょうか?


「友香、優一さんに冷やす物を持って来て差し上げなさい。菊次郎、暴力で解決する問題ではないけん落ち着け。正宗、じゃれとらんでしっかりせんか」

「はい」

「…………」

「すいません」三者三様説教をまた受け、なんか居心地悪いんですけど……。


 考えたらさ、やっぱり私達って部外者なわけで……、そしてその部外者がなんか違う事で変な雰囲気になっちゃってて、本当ごめんなさい。

 私が悪いのか?!ってなんか納得いかないけど、やっぱりごめんなさい。


「お、お福さん……私にも何かお手伝い……」させて下さい、と言う前に首を振られた。

「唯ちゃん、すまんの。これからは五人で話すけん、今日は帰ってくれんかね。迷惑をかけたね」そう笑顔で言うお福さんに私が何かを言える訳はなく、もちろん慶だって言える訳なく、私達は友香の家を後にした。


 来た意味……なかったみたい?

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