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君が好き??  作者: 尾花となみ
sideA:唯視点
30/56

30.自惚れちゃうから。

 まったく、友香のやろー。素直に付いて来て欲しいって言えば付いて行くのにさ。なんでこんな風に面倒臭い事を……。


 どうも、唯でーす。私は今駅前で優ちゃんを待っている所でーす。

 これから友香のお家へお邪魔するんだけど、アパートから来る優ちゃんと合流して、家で待つ友香&おじさまの下へ一緒へ行く予定なのです。

 

 それは全然オッケーなのよ。だってやっぱり付いて行くって言った以上、実家暮らしの友香と待ち合わせするんじゃなくて、優ちゃんと待ち合わせの方がしっくり来るでしょ?


 でもさ、でもさぁなんでそこに慶も一緒なのさ?

 私は横に立つメチャクチャ格好いい男(くそっ! なんかむかつく)を睨み付ける。


「……なんだよ。なんで睨まれるんだよ」だってなんか悔しい。だってメチャクチャ格好良いんだもん。

 慶は優ちゃんの弟だからね、身内でしょ。粗相を起こしたもんの身内として、ご挨拶に一緒にお邪魔する以上……スーツなんて着てるんだよ、こんちくしょう。


 なんだよそのスタイルの良さ。なんだよその足の長さ。

 スーツなんて似たり寄ったり、誰が着ても同じ感じなんじゃなーい。なんて思っている諸君、それは勘違いってものなんだよ。


 いい男が自分に合ったいいスーツを着ててごらん? そりゃぁもう鼻血ものなんだよ。

 その破壊力といったらとんでもないものなんだよ。って何言ってんじゃ私は! どこのスーツマニア? スーツフェチ? 変態かっての!


 そりゃ確か大学の入学式でも着てた気はするし、そしてそんな慶に女共がメチャクチャ群がってたような気はしますけど……。

 あの時はちょっと疎遠気味で……ちゃんと見なかったんだよね。


 それがこの破壊力。うん、あの時慶に群がってて馬鹿じゃないのと思っていた女性の皆さんごめんなさい。

 私が悪かったです。こんな姿見たら花に引き寄せられる蝶が如くふらふらーっと寄ってっちゃいますよね!


 この威力を知らず、無知にあなた方を罵っていた私をお許しください。本当にごめんなさい。

 ……ってさぁ! そんな事どうでもいいのよ。過去よ過去。過去は振り返っちゃいかんのよ。


 それよりも! 現在進行形で迷惑掛けまくっているこの男をどうにかしないといけないと思いますのよ。ってなんか言葉変だよ。

 駅前で私も一緒にいると言うのになぜいつもの様に声をかけられるのでしょうかね? オカシクナイデスカ? おかしいですよね?


 私が置物にでも見えるのでしょうか? 私が透明人間にでもなってしまったのでしょうか? じゃないとしっかりと手を繋がれているのにナンパしてくるお姉さま方の神経が分かりません!


「……さすがによ、公衆の面前では百面相やめとけよ」慶は嫌そうにそう言うと、駅前で注目を浴びている私(なぜ私? 慶じゃなくてなぜ私が注目されてる?!)を繋いだ手で引っ張る。

 

 そして人の視線から逃れ少し移動。人の流れに任せてそのまま少し歩くと、人の視線も気にならなくなり……慶と二人の世界。

 ……いや、まずいだろ。二人の世界は。優ちゃん来てないから駅前でまだ待ってなきゃいけないのに! しかもその後は友香のお家へお邪魔するってのにこんな浮き足立ってたら、決してお詫び来た姿勢じゃないですよね?


「……兄貴と友香の事……マジで納得してんの?」ん? 納得? 意味が分からず慶を見つめたけど、慶は正面を向いたまま目を合わせようとしない。

「なんで素直に友香に付いて行くなんていったの?」……そりゃ心配だったから。


「そんなの慶はどうして? 慶だって友香と優ちゃんが心配だったからじゃないの?」路地裏に移動した慶は立ち止まると、やっと私を見る。

「……俺が心配なのは二人じゃねぇよ」溜息混じりにそう言うと、慶は両手を私の腰に回す。


 ……両手を? 私の腰に回して? え? そしてどうするつもりですか慶さん。

「……俺はお前が心配なの」慶は前屈みになって寄りかかるように私の肩に顎を乗せると、私の首元に唇を寄せる。


 固まったまま動けない私を見てなんか慶がクスっと笑う。クスッと笑ったまま首を吸われた。

「イタっ」チクッとした痛みを感じて肩が跳ねる。


「ななななななな、なにを! なにをしてるのですかけいさん!」だからいつも動揺しすぎだよ私。

「ちょっとした虫よけ」む、む、むしよけ? 虫いた? 虫に食われてた? よくわからなんけど、ありがとう? あれ? え? ここってお礼を言う場面だっけ?


「ふははは」肩を震わせて笑っている慶を見てさすがに気付いた。また私からかわれてる!

「な、なにが! なにが虫よけ!? 意味わかんないんだけど!」まだ目の前にいた慶を私は慌てて両手で突き飛ばす。


「ま、お前は分からないでいいの」よろめいたふりをしながら、まだ笑って私の頭に手を置くもんだから、思いっきりその手を払ってやる。

 そうしたら今度は腰に手を伸ばし私を抱えようとするから、またその手を払う。


 それでも懲りずにまた手を伸ばしてきて、私も懲りずにそれを払おうとしたら手を握りこまれてしまった。

 ちょっと、やめてよその恋人繋ぎ。すっごく幸せ気分になっちゃうから。


 その手の隙間から慶の気持ちが流れて来そうでドキドキしちゃうから。私の事好きなんじゃないかって勘違いしちゃいそうになるから。

 私の事が好きなのかも知れないって……自惚れちゃうから。


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