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君が好き??  作者: 尾花となみ
sideA:唯視点
29/56

29.もしかして謀りました?

「で、進展したの?」進展……進展ってなんですか?


 皆さんこんにちは。唯です。

 今日は土曜日。大学の講義もないので友香と二人でデートしております。


 妊婦さんだからね、健全にランチデートですよ。なんか友香は私を飲ませて色々聞き出そう! みたいな雰囲気でしたが……。

 お酒大好きでザルな友香が飲んでいる私を目の前にして飲みたくならない訳はなく……却下です。


 飲めない私の前で飲みやがってーみたいな理不尽な攻撃を受けそうなので、行って見たかったお店があるんだぁなんてランチに誘いました。はい。


「進展って言ったら親展でしょ? 男女の」

「ぶほっ!」と、友香さん? トロピカルティむせましたけど。変な事いわないでくれません?


「え? 何? 付き合いだしたんじゃないの?」……なんで友香までそんな勘違い?

「……付き合ってないけど。そんなこと一言も言われてないし、そんなことありえないし。友香だってわかってるでしょ?」ちょっとジト目。


「え、えーーーーー! ……あのヘタレ……肝心な事言わないで包囲かよっ」心底呆れたように友香はそんな事を言うと、私を見る。

 え? 何その視線。なんかすっごく生暖かい感じなんですけど。


「あんたさ、考えないの?」な、何を?

「慶二がなんでこんなことしてんのか」そりゃ考えてますよ。考えまくりですよ! グダグダ同じような事考えて、そのせいで睡眠時間減りまくりですよ! ってそんな事ないか。睡眠大好き私はどんな時も寝れるのさ。これ自慢。


「はぁーーー。もう本当あんた達いい加減にしてくれない? 見てるこっちとしては本当に苛々するのよね」なぜ怒られているのかまったくわかりませんが、ここは素直に謝っておかないと後々大変な事になりそうですね?


「す、すいません……」訳わからんけど。とにかくごめんなさい?

「……理由の分ってない謝罪を受けても許せません」はい、ごもっとも。じゃあ友香さん。お馬鹿な私にもわかるように説明をお願いします。


「……私から全部話してもいいけどさ……多分唯は信じないよ? だったら本人とちゃんと話しなよ。私は慶二嫌いだけど……もういい加減仕方ないと思うから」

「…………」

「やっぱりさ、ずっと好きだった相手と幸せになってよ、唯」友香はそう言ってふわりと笑う。


 なんか、やっぱり変わったね友香。これが子供が出来るって事かな?

「友香は、さ……今幸せ?」

「勿論よ。でもこの子と優一さんと私で……もっと幸せになる」まだまったく膨らむ気配のないお腹をそれでも大事そうに両手でなでる友香を見て、なんかちょっと涙出た。

 なんか最近本当に涙腺弱すぎ。


「明日おじさんにちゃんと報告するんでしょ?」浮かんだ涙をごまかしたくて話を変える。

「ええ。……優一さんじゃなくて私が殴られるわね」……さすがに大丈夫じゃないの?

 でも、まさかぁそれはないない! なんて全否定できません。……あのおじさんじゃぁね……。


 明日友香と優ちゃんは友香の家に挨拶に行く事になってる。

 結局富樫家の家族会議の次の日は優ちゃん仕事で女性陣で買い物行ったでしょ。だからまだ挨拶に行ってなかったの。


 なので明日日曜日に改めて行くんだけど……。

 友香のお家は老舗の酒屋さん。地元では知らない人はいない商店街の何代も続く有名な酒屋さんでね、老舗って事もそうだけど有名の一番の理由が友香のお父さんなのよ。


 とにかく職人気質? 男の中の男? 商店街のなんか役員で会長さんで、お祭りではとにかく色々仕切るし頼りにされてる。

 とりあえず何か困ったことがあれば木城酒店のご主人に相談しろ、そんな風に言われているお父さんなんですよ。


 友香のお母さんは早くに亡くなっていてお婆ちゃんと弟とそのお父さんとの四人家族。

 とにかく厳しくて、うちの甘々な両親とはとても同じ親と分類してはいけない感じなんですよ。


 何か悪い事をすればもちろんあっという間に手が飛んでくる。口答えしようもんならまた手が飛んでくる。そんな感じ。

 小学生低学年の頃一緒に悪さして土間(友香の家は由緒正しい古いお家なのでね、土間があるのよ)に裸足で立たされお説教を受けた記憶は決して忘れません。


 そんなお父様。……大学生が出来ちゃった結婚……うふふ、許すわけないですよね。

 だから優ちゃんのお母さん(香澄おばさん)が優ちゃんに殴られて来いって言ってた訳。

 同じ地域に住むんですもの。小学校・中学校と同じ学区ですもの。友香のお父さんを知らない訳ないのさ。


「私がついて行った所で何の役にも立たないだろうけど……ついて行きたいよ」青い顔をして沈みまくっている友香の頭をナデナデしながらそんな風に慰めてみる。

「本当に付いて来て欲しいぐらいよ。私も殴られるけど……やっぱりどうしても優一さんも殴られちゃうと思うのよね」そうねー、そうだねー。大事な一人娘傷物にされちゃったんだもんねー。


 厳しくて怖くて……そんなお父さんだけど、優しい時はすごく優しいし。ちゃんとしっかり友香と弟(正宗くん)に愛情持って接してくれてる。

 きっと何事も一本気で格好いいお父さんなんだと思うんだよね。

 思うんだけど……いや、だからかたまに行き過ぎな時もあるような気がします。 


 ……土間にノックアウトされ倒れている優ちゃんを無視して、逆上したお父様が友香の手を引っ張って今すぐ堕ろして来い! なんてやっている修羅場が想像できてしまって……恐ろしい!

 それはまずいって、絶対にダメだって! でもおじさんならありえそうで本当にまずいって!


「友香! 首突っ込むのおかしいけど! おかしいけどやっぱり私も行こうか?」

「本当に!? 本当に来てくれるの!?」うぉ、なんですかその食いつき。

「絶対にすごい感じになると思うけど来てくれるのね!? 良かった! これで介抱してくれる人が出来て少し安心だわ! 正宗じゃ頼りにならないから!」あまりのまくし立てに私かなり引きましたけど……。


 ウキウキニコニコしている友香を見て……あれ? なんかおかしいな。

 なんか明日行くのは決定事項で。なんか介抱するのも決定事項で? あれ? なんかおかしいな…………友香さん?

 もしかして謀りました? 二人で行くの嫌で。私がいると多少はおじさんの怒りが緩和されるかと思って……。


 私がついて行くように謀りましたよね! 友香さん!


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