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君が好き??  作者: 尾花となみ
sideA:唯視点
25/56

25.慶……大好きだよ?

 なんか分けわからんまま逃げるようにお風呂に入って、メチャクチャごしごしあっちこっち洗って脱衣所に出てから急に脱力しちゃった。

 そこには綺麗に畳まれた私がいつも着ているピンクドットのフリースふわふわパジャマがある。そしてもちろん……下着も。


 ぎゃーーー! なんで下着が一番上に鎮座してるの? ねぇなんで? なんでよりによって一番上? なぜ一番上にちょこんと乗っているのでしょうかー?!

 そしてこれを運んできたのは絶対に慶だよね? 入っている途中に着替え置いておくって声かけられたもん。声かけられちゃったもん。って事は? その時慶のその手にはこの一式があったわけで……なんでーーー!


 お母様? お母様がこれを用意して下さったんですよね? 私を羞恥悶えで殺す気でしょうか?

 うぅぅ。これに着替えてどんな顔して慶に会えばいいのでしょう? 今更になって色々思い出して恥ずかしくなって来たー。

 どうしよ、どうしよー。どんな顔して会えばいいのぉー!


 着替えられずにバスマットの上に座り込んだまま床をバンバン叩いていた私は、

「唯、出た? パスタ出来るけど」と脱衣所のドアの向こうから急に声をかけられ慌てて巻いたままだったバスタオルを掴みなおす。

「で、出たけどまだ着替えてないっ!」答えないと! すぐに返事しておかないともしドア開けられたら困るっす!


「そう? でももう出るんだろ? 用意しておくから」はい。はい、了解です! そしてすばらしく出来る男ですね。お風呂出る時間を見計らって用意って……そんなスキル私にはありません!

 って言うか、こんな短時間で料理なんて出来ないし。冷蔵庫にあるもの使って料理なんて出来ないし。


 準備万端、オッケー。さぁ決まった料理作りましょー! 的な感じで始めないと料理として成立しない物体になると思いますよ? いや、マジで。


 慌てて着替えて慶の待つリビングへ。

 ……来てから気づく。いやさ、慶ってすごいなぁなんて考えながらいつものパジャマだから、いつもの様に着替えてね……気づいたよ、ブラしてないじゃん。


 ……してないね? してないよね? なかったよね? 用意されてなかったですよね?

 ……お母様ーーー! そこは是非用意して欲しかった! 寝るときはブラジャー着けない派だけどね? 着けない派だけども今日だけは是が非とも用意してホシカッタデス。

 そこは何が何でも空気を読んで用意して欲しかったですよ、お母様?


 慶の正面に座りながらつい前屈みになる。うん、世の中の女性の皆様ならわかってくれますよね? この気持ち。

 いくらごつめのフリースのパジャマとはいえ、意識しまくりな相手の前でノーブラパジャマ姿という現状。……乙女として死亡だと思いますよ?


 まぁそして結果から言おう。慶の料理は死ぬほどうまかった! 褒めていい自信もっていい腕前だと思いますよ。本当に。

 あの短時間でベーコン入りカルボナーラに具沢山コンソメスープにほうれん草のサラダ。ついでにトマトとモッツァレラとアボガドのカルパッチョ風サラダ。そしてワイン。


 ……すばらしい!! 今すぐお嫁に行けると思います!

 なんか女としてかなり悔しい気がしますけど、いいお嫁さんになると思いますよ?


「じゃぁ貰ってくれる?」くすくす笑いながら慶が言う。あれ? もしかして脳内のセリフ漏れてますか?

 駄々漏れですか?


「そうだねぇ、いつも分かり易いけど、飲むと口にも出ちゃうんだな?」赤ワインが注られたグラスを弄びながら慶が楽しそうに話してるけど、なんか私はふわふわしてきちゃったよ?

 この赤ワインおいしいね。なんかすっごく飲みやすいね。緊張してたせいかなんかたくさん飲んだ気がするよぉ。


 って言うか、いつの間にテーブルの上片付けられてるの? いつの間にソファーに移動したっけ?

 よくわかんないけどなんか幸せだし、なんか気持ちいいし、なんか楽しいからいっか?


「……唯ー? ここで寝るなよ?」うん? もちろん寝ないよぉ。寝るわけないさー。でもなんかふわふわ気持ちいいからね? ソファーでちょっと横に……なってもいいよね?

「唯ー、襲っちゃうぜぇ?」何ー? もうなんか目を開けていられないんですけどぉ。


 チュッと音がして唇に何か触れる。ん? 何? どうにか目を開けるとそこには慶がいた。

 ソファーに横になった私の上に慶がいて、なんか近いね? 顔綺麗だね? 本当にいい男だね?


 なんて事考えながら慶を見てたら、なんかすっごく幸せで。なんかすっごく嬉しくて私はニコッと笑うと慶の首に手を回す。

「慶?」名前を呼ぶと嬉しくなる。慶はここにいる。私の前に。声をかければすぐそこに。手を伸ばせば触れる距離にいて、すっごく幸せ。


「ちょ、唯?」掠れた焦った慶の声が耳元で聞こえる。でも関係ないもん。私は手に力を入れるともっと慶と近づきたくて引っ張る。

 私に覆いかぶさるように慶が倒れてきて……でもしっかり支えたのか体重はかからなくて重くなかった。


 首元に顔をよせると慶の匂いがする。ちょっと男臭い気もするけど、私にとってはいい匂い。幸せを感じるいい匂い。

 大好きな慶の匂い。安心する匂い……。


 慶を捕まえたまま慶の首元に顔をうずめ、慶を満喫すると目を閉じる。

「慶? 大好きだよ?」気がついたら言うつもりのなかった言葉が口から溢れてた。


 本当はね、大好き。好きで好きで止まらない。大好きで大好きでいつもすぐ傍にいたい。慶は私のものって言いたい。でもさ、慶は私のものじゃないから。これからもきっと私のものにはならないから、絶対に言うつもりなかったのに……。


 ふわふわ気持ちよくて、嬉しくて幸せで……また同じ言葉が口から勝手に紡ぎ出されていた。

「慶……大好きだよ?」

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