23.ごめん。
少し無理矢理表現・暴力表現があります。
「こ、児玉くん? 取り合えず……手を離して欲しいな? 痛いんだけど……」すごい力で掴むもんだから結構痛い。
それに無理やり引っ張られ歩かされているから、なんか指が食い込んでる気がするよ。
「唯ちゃん、あいつと付き合ってるの? 迎えに行ったらあいつがあそこにいて……あんな男唯ちゃんには似合わないよ! 女達に話しかけられてへらへらして!」付き合ってないけど……似合わない……かな? やっぱり。
慶は格好いい。何度も言うけど、本当に格好いいんだ。
でも……でも私は? でも私はどこにでもいるような平凡な女の子だと思う。慶の隣に並んだら……やっぱり似合わなくておかしいのかもね。
実際慶の彼女達は本当に綺麗な人達で。みんな隙がなくて綺麗な人たちばっかりで……隙だらけな私とは全然違う。
「唯ちゃんは俺と一緒にいた方が絶対に幸せになれる! 大事に、大切にするから、俺と一緒に、一つになろう」急に立ち止まったそこはなんだかイカガワシイ感じの路地。目の前にはチカチカネオンの妖しいファッションホテル?
え? え? え!? まさか? まさか!?
私は慌てて逃げ出そうともがくけど、掴まれた腕ははずれない所か抱きしめられてしまう。
「い、いや!」手を突っぱねて児玉くんを押すけど全然離れない。余計に力を込められ鳥肌が立つ。
や、やだ。気持ち悪い。ゾワゾワと嫌悪で体中が震えるのに、児玉くんは気にせず私を抱きしめる手に力を入れ、人の体を弄り始めた。
ちょ、ちょっと冗談でしょ?! こんな場所で公開レイプ!? ってアホか!
お尻をつかまれ背中を撫でられより一層鳥肌がひどくなる。
「やめて!」どうにか逃げないと、本当にやばい。このまま目の前に連れ込まれたらどうにもならない!
力では絶対に逆らえない。私は女で、こいつは男。力では適わない。
だからってここで諦めたら終わりだ! 震える体を叱咤し毅然に児玉くんをにらみ付けたが、その瞳を見て凍りつく。暗い、狂気を含んだ瞳。熱に浮かされながら残酷さが見える。
こ、怖い! ついひるんだその隙を狙って児玉くんが唇を押し付けてきた。
もがくけどがっしりと掴まれて身動きできない。
頭を押さえられ、獣の様に唇を襲われる。勝手に動き回る舌が気持ち悪くて吐きそうになる。
涙が溢れ力が抜けそうになった瞬間、児玉くんが急に目の前から消えた。
横で人が倒れる派手な音がして振り向くと、児玉くんが地面に倒れていた。
体に力が入らなくなってその場にしゃがみこむ。なんで急に助かったのかわからないけど、ここで安心しないで逃げないと! って思うのに、膝に力が入らない。
震える体に鞭打ってどうにか立ちあがると、また抱きしめられた。
「いや!」怖くて怖くて振りほどこうと力を込めるけど全然力が入らなくて、それでもどうにか相手を突き放そうと腕に力を込めて気づいた。
……この香り……慶?
Vネックの黒いカットソーが目の前に見えて顔を上げると、泣きそうな顔をした慶が私を抱きしめていた。
「ごめん」慶は一言そう謝ると、私を強く抱きしめる。
なんでここにいるの? あの時気づいて追いかけてくれたの?
なんで慶が謝るの? 慶のせいじゃないじゃん。助けてくれたじゃん。私は大丈夫だよ。ちょっとびっくりしたし、気持ち悪かったけど大丈夫だよ。
色々と口に出したい言葉はあったのに、口から出たのは嗚咽で。
気がついたら慶にしがみついて慶の名前を叫びながら泣きじゃくっていた。
「慶、慶、慶。怖かった、気持ち悪かったよー」すがりつく私を慶は強く抱きしめてくれた。
頭を撫でられ背中を撫でられ感じたのは気持ちよさで、落ち着く安心感で。児玉くんに感じたような嫌悪感はまるで感じず私は慶の腕の中でただ泣き続けた。




