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君が好き??  作者: 尾花となみ
sideA:唯視点
19/56

19.慶なんて大っ嫌い!

 正直、何が起こったのか分からない。まったく分からない。気がついたら私は慶に腰を支えられながら観覧車を降りていた。

 階段も坂も混んでいるモール内の道も、ずっと慶に支えられながら、本当の恋人の様に寄り添いながら歩いていた。


「……先に車で休んでろ。待ち合わせ場所は俺が行ってくるから」無言で助手席に倒れるように座った私の髪を慶は撫でるとフワッと笑う。

「わりぃ、ちょっと刺激強すぎたか?」謝りながらもすっごく嬉しそうに笑うからなんか悔しい。でも怒れないじゃん。

 ドアを閉めて歩いていく慶をボケッと見ながら……思い出してみちゃう?


 目が合ったなぁって思ったときには奪われてたよね? それで? なんか素人にはとてもじゃないけど表現出来ない刺激があっという間に襲ってきて気がついたら膝がガクガク。

 慶の舌打ちが聞こえたなぁと思ったら観覧車は地上に着いてた。


 って言うかさ! って言うかさ! これこそまさに貞操の危機だったんじゃないの? 観覧車の中じゃなかったら絶対に……その、その最後までイタシテタト思いますわ!

 で、その肝心の危機中だってのに私は何の抵抗も出来ずに為すがまま、為されるがまま。たいした抵抗も出来ずにって言うか逆にすがり付くかの様に服を掴んでいた気がするよ。


 うぎゃーーー。むりーーー。穴があったら入りたいー。

 何やっちゃてるのよ、私。そして慶! って言うかキスだけで腰砕け膝ガクガクってどんだけ? どんだけなのあいつは!

 それともオトナのキスってのはあんなに刺激が強すぎるの?! ありえないよー。本当にありえないよー。


 本当に、慶は何考えてるんだろう。ご無沙汰なもんだからついに身近な私に迄手を出しちゃったのかなぁ。もう最悪。どうしたらいいの?

 覚悟しとけってこう言う事? こう言う意味だったの? まさか処女消失の覚悟? そしてその相手が慶って! なんでこうなっちゃったのよー。


 慶の事は好きだよ。大好きだよ。でもこんな風に流されるようにしちゃっていい事なのかな? だって慶は慣れててきっと大した事じゃない。でもさ、私は何もかも初めてなわけで……。こ、心の準備がね?

 それに……一番大事なこと、何も言われてない気がする。って私の事そんな風に想ってる訳ないだろうから、本当に慶はつまみ食いぐらいにしか思ってないんだろうけど、やっぱり私は気持ちが通じ合わないと駄目だと思うんだよね。


 なんで慶は急に私とシタイって思うようになったのかなぁ……。今まで全然そんなそぶりなかったのに。シタイって思っている事前提だけど、さすがにもう冗談じゃすまないよね? だってあの……観覧車のキスは絶対にマジだったと思うもん。

 前にカプって食べられた時とはまったく比べ物にならなかった! 比べ物にならなすぎて意識飛んだもんね。恐ろしすぎる。


 ……それに……これも。そう思って首元に手を伸ばすと、ダイヤのネックレスが指先に触れる。

 引っ張りあげて見ると、やっぱりあるね。本物……だよね。当たり前か。

 きっとあの時買ったんだろうし。人が色々考えている間にしっかり購入してたなんて……なんで慶は何事もそつがなく早いんだ?


 でもこれ……本当に貰っていいのかな? 慶にアクセサリーのプレゼントなんて貰ったの初めて。

 アウトレットで悪いな、なんて言ってたけどそんなの関係ないよ。貰うって事自体が特別なんだもん。

 あんな……観覧車の中でかけて貰ったりもしちゃって……。すっごく恋人同士じゃなかった? しかも超ラブラブ的な。


 あーうー。恥ずかしいよー。恥ずかしいよー。やっぱり穴があったら入りたいよー。

 なんて助手席で膝抱えて悶えていたら……帰ってきちゃったよ。賑やかな女性三人と鬼畜男が。

 ど、どうしよう。どうしよう。このまま顔を上げるべきか、そのまま無視するべきか。


 って無視できる訳ないか! でも今顔上げたら私……どんな顔? どんな顔してるの? 誰か鏡プリーズ!

「唯ちゃん大丈夫? 調子悪いんですって?」お母さんが後部座席に乗り込みながらそんな事を聞いてきた。


 へ? 調子悪い? あー、あー、あー、なるほど。まぁ確かに調子悪いっちゃぁ調子悪いっす。考えすぎて知恵熱出るかも知れない感じで調子悪いっす。

「座席、もうちょっと倒してもいいわよ? 後ろ全然平気だから」香澄おばさんが気遣わしげに声をかけてきて、内心胸がズキズキと痛みますがここは女優で!


「ありがとう、でも大丈夫。ちょっと寝てもいい?」後ろを見ないでそのまま窓ガラスへ寄りかかる。私は病人、私はびょうにーん。

「シートベルト」慶がそう言って運転席に座ったまま私の方へ。

「っ」私の座席に片手を掛け、反対の手でかぶさる様にシートベルトを締められつい声が漏れそうになる。この男はー! 急に何するねん!


 目の前にいる慶に唇を噛んで睨み付けてやったら……余裕そうにニヤリと笑った。

 うっきー! こいつわざとだ! 絶対にわざとだ! 絶対にわざと私の事びびらせてる!

 本当最悪! 色々悩んで損した! きっと慶は何にも考えてないよ。考えないで私をからかって遊んでるだけだ!

 あのキスだって絶対に意味なんてない! 深い意味なんてなくて、ただしたかっただけに違いない! そうだ! そうに違いない!


 もう! やっぱり慶なんて大っ嫌い! 

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