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君が好き??  作者: 尾花となみ
sideA:唯視点
15/56

15.頑張ろうって思ったんだ。

 本当に最悪。あの日の事を思い出すなんて……。

 まだ消化できない想いが心の奥底でくすぶってる。もう三ヶ月も経つのにな……。


 結局あの後私は家に帰ったけど、両親は高校の同窓会で少し遠いから泊まりで出かけていたので一人だった。

 なんとなく電気もつけたくなくて、暗い部屋で色々考えていたら、なぜか私は児玉くんに電話してた。そして……付き合うことにしたんだ。


 冷静になればはっきり言って最低な選択をしたと思うけど、あの時はそれにすがるしかなくて……それだけちょっと参ってた。

 付き合っていくうちに児玉くんにすごく悪いなって思ってたんだけど、その……キス事件(と命名です)があって、やっぱり私は慶の事が好きで忘れられないんだってわかってしまったよ。


 そして最近の慶の行動。私の頭はパニックですよ。本当処理が間に合いません! 冷静に考えて分析するなんて事出来ません! とにかく翻弄されまくりだよ……。


「唯ちゃん、まだ起きてる? 優ちゃんがアイス買ってきたからおすそ分けだって。食べる?」階下から

お母さんの呼ぶ声が聞こえた。

「はーーーい! 食べる~」私は浮かんでいた涙を拭うと鏡の前に立つ。うん、大丈夫。これぐらいなら酔っ払いって事で誤魔化せる。

 鏡の前で笑ってみる。うん、笑えてる。大丈夫! 何とかなるよね。


「唯ちゃん、遅かったわね。アイス溶けちゃうわよ」お母さんは笑顔でそう言いながら私にストロベリーのカップアイスをくれる。

「友香……優ちゃんパシリした?」

「そうみたいね。今日は最初からお泊りの予定だったみたいだから」そっか。


「今頃やっと本当の家族会議してるんじゃないかしら?」お母さんはそう言って首をかしげる。

 そんな姿は本当に実の母だが可愛いと思う。で、そう思ったのは私だけじゃなかったようで、

「明日仕事になった」そう言いながらお父さんがお母さんの後ろから腰に手を回し抱きしめた。


 ……いつもの事とは言え、子供の前ではやめて欲しいんですけど……。母の首筋に唇を寄せる父を見ないようにアイスに集中した。

 私の中ではこれが当たり前と思ってたんだけど、友達の話を聞いてびっくりした。こんな両親はありえないらしい。

 だって隣の富樫家もこれが当たり前なので、本当に親ってのはこんなもんだと思ってたんだよねぇ。でも違うらしいね?


 うちの親と慶達の親は高校の同級生。仲良し四人組で親友同士がそれぞれカップルになってゴールイン。かなり珍しいと思うけど、だからか家族仲が半端じゃなく良い。

 大事な家族会議とかも普通に参加だから、これも私は普通なんだと思ってた。でも大きくなると周りから不思議がられた。

 特に……慶の彼女達には。


 なんでかなぁ、優ちゃんの彼女にはあんまり悪質な嫌がらせをされた覚えはないけど、慶の彼女達にはかなりの嫌がらせを受けた。

 まぁ玲子さんでわかる様に、慶の彼女は……なんて言うか攻撃的なタイプが多いのかなぁ。女の趣味悪!


「明日仕事って皆?」お母さんはそう言うと露骨にお父さんを避ける。うん、絶対に恥ずかしいよね。

「ああ、幸治は当たり前だし、優一も」

「そうなのー。すみちゃんと友ちゃんどうするのかしら~?」お母さんはそう言うとまた可愛く首をかしげる。あぁーー。明日仕事だって言うし……今日はお父さん……賑やかな事しそうだね?


「女だけで遊びに行けば? 慶二足で」お父さんは絶世の笑顔でお母さんを捕捉。本当に嬉しそうですね? お父さん……。

「だってぇ。唯ちゃんどうする?」……どうしよう? 女同士での集まりは参加したいけど……慶いるのはちょっと……。


 その、奪われちゃったのはまぁ考えても仕方ないとしても(本当はよくないけど!)、玲子さんの事を考えると今はちょっと会いたくない。詳細に思い出しちゃったせいか、なんか気持ちを引きずってしまってて、今会ったらまずい気がする。

 絶対に衝突しちゃいそう。って言うか想いぶつけて泣いちゃいそう。


「そう言えば唯ちゃんバイトどうしたの? 最近出てないわよね?」お母さんの声で我に返る。ああ、バイトね。そっちの問題もあったんだった。

 メールはとりあえずシカトしたけど、なんとなくこれで終わるわけないよなぁって思います。うん。誰でもそう思うよね。


 実は月曜日を最後にバイトには行ってない。無断欠勤なんかじゃないよ! もちろんちゃんと許可を取ってますよ。って言うか元々シフト入ってない。

 どうしてかって言うと、実は辞める気だったから。


 児玉くんとね、別れてから一緒のシフトになるとかなり気まずくて。だって会う度に別れたくないって話が始まるから、もうちょっと顔を見るのも嫌になってたの。

 児玉くんに詰め寄られているのを一回店長に目撃されて、注意されてからバイト中はしつこくなくなったんだけど、私悩んでしまって。それこそちょっと着信拒否とかにしてしまう程追い詰められていて……。


 店長に相談したら分かってくれた。やっぱりバイト仲間でもずいぶん目撃されて噂になってたらしくて、心配してくれてた。

 他人から見てもやっぱり児玉くん結構ヤバめだったらしくて……。


 なので辞めるって話も店長がうまくしてくれて、月曜日に行った後在籍中のまま休んで、今月末日(三十日)の明後日月曜日に最後のバイトをして退職、となる予定。

 だから今は月末になるまでの時間稼ぎ中。なのに水曜日に家に押しかけてくるなんて……なんて堪え性のない男かしら。

 ってもしかして誰かから聞いたのかもね、私が月曜日を最後にやめるって事を。


「……バイト辞めるんだ」内緒にしてても仕方ないし、素直に話す。あ、お父さんなんか顔怖いですけど。

「唯。お前どうしてもバイトしたいっつって母さんにお願いして始めたよな? それが一年経たないでやめるってどう言うことだよ」気持ち言葉がきついお父さん。そんなお父さんをお母さんは振りほどくと私の傍に来る。


「唯ちゃん? どうしたの? バイト楽しいって言ってたわよね?」そう言って私を覗き込むお母さんの顔がすっごく優しくて……涙が出そう。やばい、最近こんなのばっかり。

 なんか涙腺すっごく弱くなっちゃったよ。

「ご、ごめんなさい……」それしか言えなくて……瞳から涙がポロリと零れた。


 後ろでお父さんがぎょって顔して目をそらす。そうだよねぇ、私おかしいよねぇ。こんな事で泣くなんてありえないっすよ~。

「ちょ、ちょっとタバコ買ってくる」お父さんごめんねー。


「唯ちゃん。何かつらい事があったらちゃんと相談して? 何でも言ってよ」お母さんはそう言うと私をいい子いい子する。

 うぅぅぅー。だめだぁ。もう涙腺崩壊! 駄々漏れですー。

 しゃくりあげて泣きまくる私をお母さんは何も言わず抱きしめてくれた。


 最近弱かった涙腺をどうにか我慢して押さえてた反動か、もうどうしても涙が止まらなくって。ひっくひっく泣きまくった。

 そしたら何かすっごくすっきりして、明日からまた頑張ろうって思った。

 自分がどうしたいのかも、慶がどうしたいのかも全然分からなかったけど、頑張ろうって思ったんだ。 


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