10.捕食されそうですか?
二人が生存していると思われる場所に行くと……うん、やっぱりバトルが勃発していました!
優隊長! 隊長の思ったとおりです! 見事な推理です! って私でもわかってたよう!
「えー、あー、そのー。お二人さん?」私がそう声をかけると二人同時にキッと睨み返される。なんだよ息合ってるじゃないですか。
二人は声をかけたのが私と認識すると、
「…………」慶、無言で目をそらす。
「唯!」友香、笑顔で駆け寄ってくる。そんな行動に分かれました。
「ああ、友香。走っちゃ駄目だよ」優ちゃんは寄ってきた友香を優しく窘めると、友香の腰に手を回して軽くキスする。
いやーーー、やめてーーー! 私の前でその幸せラブラブバカップルを発揮しないで! そのオーラに当てられると私の頭の中まで融けちゃいそうで嫌ですー。
で、そんな風に思ったのは私だけじゃなかったらしく
「ベタベタいちゃいちゃするなよっ!」心底嫌そうに慶が叫んだ。
「うるさいわねぇ。うらやましいんでしょ~。寂しい独り身には刺激が強かったかしら? 可哀想ね、ごめんなさーい」友香さん、それ私にもかなりの大ダメージを与えましたけど。うぅぅぅ、すいませんね、寂しい独り身で。欲求不満の処女ですけど何か!
って言うか慶……今一人なんだ。珍しいね。いつも絶対に誰かいるのに。
「……別に独り身じゃねぇし」私の視線を気にしながら慶はそう言う。やっぱり一人じゃないじゃん!
「セフレがいっぱいいたってそれは違うでしょ」友香さん、なんか今日は爆弾発言連発ですけど。
セフレ……。セフレですか……セフレ。略さないとセックスフレンド。略してセフレ。
セックスフレンドとは、セックス(性交)を楽しむことを目的に交際している男女(または同性)の関係を指す俗語。セックスを行えるが、恋人ではなく友達(友達関係でありながらセックスを行える異性、または同性のこと)を指す場合もある。うふふ、wikipedia調べちゃった。
こんな事も載ってるのね。と言うかやっぱりきっとこの意味のセフレよね? そっかー、やっぱりいるんだぁ。しかもいっぱい?
「おまっ、……別に関係ないだろ」慶は一瞬あせったけどすぐにいつもの感じに戻る。ふーん、それ否定しないんだ。否定しないんだ。否定しないんだ。ここ大事なので三回言いました!
私のジト目に気づいた慶は目を細めて睨み返してきた。お、なんだ逆ギレですか? やりますか?
「……俺が誰とセックスしようがお前らには関係ないだろ」ぎゃー、慶も問題発言!
「……救いようのない馬鹿ね」
「それはいいすぎだよ友香。慶二はちょっと頭が悪いだけだよ」えっとお二人さん。どうして実弟と未来の弟を二人で落としまくっているのでしょうか?
「はぁっ、俺部屋戻る」雲行きが怪しいので戦線離脱でしょうか。慶は逃げる事にしたようです。
「…………」友香さん無言で止めませんでしたが、
「俺達が移動するよ。友香、あんまり無理しちゃ駄目だよ。怒るのもだめ。ゆっくりと優しい気持ちでいなきゃ」と優ちゃんが言うので、友香素直に頷きます。
本当友香は優ちゃんには素直だねぇ。二人の仲がごたごたあったときは超意地っ張りの負けず嫌いだったのに、その時で反省したとは言え素直になりすぎでしょ。
二人が連れ立っていなくなった部屋に慶と二人っきり。さっきの会話のせいかなんだかとってもきまづいんですけど……。
でもここはちょっと言っておきたい事があるので、視線逸らしまくりの慶に正面衝突ですよ。
「慶さぁ……。本当セフレとかやめたほうがいいと思うよ?」言った! 言ったぞ私。
「あぁ?」いやん、それ確実にヤンキーだから。チンピラのセリフだから! そしてその目の鋭さも絶対に堅気にみえないからぁ。
「だ、だって、やっぱり色々な人と体の関係だけって良くないと思うよ。その、ほら、なんだ? び、病気だってあるかも知れないし」って私何言ってんだ?
「……そんなへまはしないけど」そうですよね。そうですよね。変な事言って本当ごめんなさい。
「ってそれだけ? 心配なのは病気?」いや、別にそう言う訳じゃないけど! 本当はもっと違う事いいたいけど……。
「そんな他の女となんか寝ないで私とだけしてー。みたいな事は言わないの?」はぁぁぁ!? なんですと? 私の心を読んだのか! じゃなくて
「なんてこと言うのよ! 馬鹿じゃないの!」ここは全否定しておかないと!
「そう? 馬鹿な事?」慶はニヤニヤしながら、なぜか……近づいてくるんですけどー。
ちょ! 待っ! 慶。なんかその顔おかしいから! 怖いから! 危険な感じするから!
じりじりと後ろに逃げる私を追い詰めるように慶も歩みを進める。
気がつけば私の後ろには部屋の壁があって、目の前には嬉しそうな慶の顔が迫ってた。
まさに猫の前の鼠? 蛇に見込まれた蛙?
どっちにしろ私、捕食されそうですか?