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メタボマン  作者: malta
7/10

第七話 「語られた真実」

 翌朝碧は自室のベッドで目が覚めた。

だがどうやって帰ってきたのか、まったく憶えていない。

しかも飲み会のとき、とんでもないことをしたような気がする。

しかしいくら考えても思い出せなかった。

とりあえず碧は着替えて会社に向かおうとしたが、今日から自宅待機であることを思い出した。


 しばらくして紅葉から電話がかかってきた。

「もしもしー」

「碧おはよー。大丈夫?」

「うん大丈夫。でもところどころ記憶が飛んでる」

「あんた昨日、飲み会のとき自分が何をしたか憶えてる?」

「ううん。何かしたような憶えはあるんだけど、思い出せない」

「あんた、酔っぱらってイデブーにキスしたのよ」

「……え?」

「そこにいた人たち、みんな大騒ぎになっちゃって、あたしとイデブーであんたを連れ出すのに苦労したんだから」

「何で? 何で私があんなのにキスするの?」

「そんなのこっちが聞きたいわよ。やっぱりあんた、イデブーのこと好きなんじゃない? 自分が気がついていないだけで」

「そんな、そんなわけないじゃない」

「とにかく、寝ちゃったあんたをイデブーが送り届けてくれたんだから、今度会ったらお礼くらいは言っときなさいよ」

「う、うん……」


 電話を切った碧は落ち込んだ。

酔っていたとはいえ、あの出部にキスしてしまうとは。

どんな顔をして出部に会えばいいのか。

自宅待機中なのが救いであった。

そして電話での紅葉の言葉を思い出す。

(私がイデブーを好き?)

(そんなはずないじゃない)

(私の厚意を無にしたあんな奴を)


 一方、出部いずえは気分のいい朝を迎えていた。

会社は自宅待機で、昨夜は碧にキスされ、これで怪獣さえ出てこなければ、幸せな一日である。

しかしその期待は、テレビのニュースによって破られた。

また怪獣が現れたらしい。

出部はメタボマンに変身して、現場に飛んでいった。


「来たかメタボマン、今日はこの怪獣の相手をしてもらおう。クレストール! メタボマンを叩きつぶせ!」

ビルを破壊していたクレストールは、メタボマンの方を向いた。

全身に甲冑をまとったようなサイのような格好である。

そのままクレストールはメタボマンに突進していく。

メタボマンが避けると、クレストールはビルに突っ込んでいき破壊した。

その隙にメタボマンはメタボナイフを撃った。

だがナイフは甲冑に吸収される。

次にクロスショットを放つが、これも吸収される。

クレストールの甲冑はエネルギーを吸い取ることができるようである。


「これならどうだ!」

クレストールの頭部めがけて、水引ブーメランを投げるが、クレストールは体の向きを変え、甲冑でブーメランを弾き返した。

やはりクレストールの甲冑を壊すしか手がない。


 メタボマンは水引ファイアーを照射した。

すると甲冑は熱線を吸い取り、その部分が高熱を帯びてくる。

続けてメタボマンは手の先からハイパー水流を放射した。

急激な温度変化により、クレストールの甲冑にヒビが入る。

メタボマンはそこを狙い、再度ブーメランを投げると、クレストールの甲冑は砕けた。


 だが甲冑の下から出てきたのは、体中から生えている無数の砲筒であった。

クレストールは全身から砲撃し、弾幕を張った。

メタボマンはメタボバリアで防ぐが、周りの建物が次々と破壊されていく。

「くっ、こんなことになるとは」

メタボマンはメタボスピアを使ったが、光の槍はすべて弾幕に打ち抜かれた。

このままでは防戦一方である。


 しかし突然クレストールは砲撃をやめた。

見ると甲冑が再生されていく。

「こいつも再生するのか!」

メタボマンは頭部を攻撃しようと、ブーメランを手に持ち、クレストールに向かっていったが、クレストールは頭部の角からビームを発射しメタボマンを攻撃する。

メタボマンは打つ手がなくなった。

そのときスクリーンに”Alart”の文字が点滅し、武器欄にメタボリウム光線が追加されている。

もうこの武器に頼るしかなかった。


 メタボマンが頭上で両腕を交差させると、両手が光りだす。

そして両手をそのまま突き出して叫ぶ。

「メタボリウム光線!」

するとメタボマンの両腕から、らせん状の光が発射されクレストールに命中した。

クレストールは甲冑でエネルギーを吸収しようとする。

しかしメタボリウム光線のエネルギーは、クレストールの許容吸収量を遥かに超えていた。

クレストールは吸収し切れず爆発した。


「メタボマン。まさかそんな必殺技を持っていたとはな。だが私は美多民市の征服をあきらめない。貴様を倒し必ずやこの土地を手に入れてみせる」

「待てスカル星人! おまえはなぜこの美多民市を狙うのだ!」

「教えてやろう。昔我々はエネルギー鉱石・スカルナイトを載せた輸送船を、この星の近辺でロストしたのだ。昔と言っても地球の歴史では、人類がやっと火を使いだしたころだがな。その時のデータから見て、輸送船はこの土地に墜落したと見られる」

「おまえたちの先祖が、大昔地球の近くに来ていたのか!?」

「こんな辺境の星に用はない。おそらく輸送船が恒星間航法ハイパードライブの出現座標を再計算した際、何らかのエラーが起こり目的地とはかけ離れたこの場所へ出てしまったのだろう。それに、我々の先祖ではない。”我々”だ」

「おまえたちの寿命は一体……」


「我々スカル星系独立連盟は、現在星間戦争を行っている。そのためエネルギーの確保が最優先事項なのだ。そしてその輸送船をこの付近でロストした記録が、たまたま最近見つかったのでな。残っていたデータを分析し回収しに来てみれば、地球人どもが居座ってしかもビルを建てている始末だ」

「じゃあ、今まで怪獣たちがビルを壊していたのは……」

「そうだ。地中をスキャンし地面を掘り返すのにじゃまだからだ。地下にあるスカルナイトが手に入れば、我々は後十年は戦える」

「そんなことのために…… もう一つ聞く。星間戦争の相手は誰だ」

「カメロパルダリス星系連合だ」

そう言うとスカル星人は消えていった。


「俺はカメロパルダリス星人に利用されていたのか?」

「メタボマン、それは違う」

カメロパルダリス星人の声が聞こえてくる。

「確かにスカルナイトが掘り出されると我々は不利になる。だが我々が君に力を与えていなければ、美多民市は既に廃墟と化していただろう。これは利害が一致した者同士の共闘なのだ」

「じゃあ何で始めに説明してくれなかったんだ!」

「あの時点で話しても、君が宇宙人同士の抗争に巻き込まれるのを恐れると考えたからだ。だが今まで説明しなかったのは謝ろう。申し訳ない」

メタボマンは理解はしたが、釈然としない思いも残った。


 数日後、オフィスが見つかったので引っ越しをするという連絡が入った。

指定された日に旧オフィスに行くと、みんな集まっている。

早速荷作りを始めると、紅葉に連れられて碧がやってきた。

「ほら」

紅葉が碧をつつく。

「出部さん、先日は家まで送ってくれてありがとうございました」

「いや、何てことないから」

「そ、それに、私酔っぱらって、出部さんにとんでもないことしちゃったみたいで…… ご、ごめんなさい!」

碧は頭を下げるが、もう耳まで赤くなっている。

「俺は気にしてないから。というか誰かと間違えたとはいえ、君みたいな美人だったらかえってうれしいよ」


 碧と紅葉は自分たちの席に戻ってきた。

「イデブーいい人なんだけどねー」

「……うん」

「あんた誰かと間違えたの?」

しかし碧は答えなかった。


 かくして梱包は無事終わった。

来週月曜日の午前九時集合で、午前中は開梱及び整理と決まり、一同は解散した。


 次の月曜日、出部は外回りから新しいオフィスに帰ってきた。

そして午前中できなかった開梱をしていると突然ビルが揺れだす。

「うわっ、まただ」

「今日は地震多いですね」

「大地震の前触れとか」

「嫌なこと言わないでくださいよー」

出部は隣の女子社員に聞いてみた。

「そんなに地震あったの?」

「多いときは、これぐらいの地震が十分おきにありましたよ。今まで感じなかったんですか?」

「うん、外を歩いてるときは気がつかなかった」

ある社員が気象庁の震源リストを見てみた。

しかしリストには美多民市近辺が載っていない。

「変だな。普通マグニチュードとか載ってるんだけど」

だがそれ以降地震は収まってしまった。


 その翌日、出部は朝からオフィスに出社した。

椅子に座るとまた地震が起こる。

しかも普通の地震と違い、非常に長く揺れ続ける。

ふと見ると碧が真っ青な顔をしている。

「碧、大丈夫? もう帰った方がいいんじゃない?」

「だって帰っても地震はなくならないし。みんながいるここにいた方がいい」

「槇場さんどうしたの?」

出部は紅葉に聞いてみた。

「この娘、地震が苦手なんです。昨日から調子悪いみたいで」

「じゃあ無理しないで、仮眠室に行った方がいいよ」

「うん、そうします」


 碧が立ち上がったとき、また地震が起こった。

碧は悲鳴を上げ、思わず出部に抱きつき、揺れが収まってもしがみついている。

「碧、碧」

碧はやっと状況を把握し、出部から離れた。

「ご、ごめんなさい」

「碧。あんた出部さんに付き添ってもらって、仮眠室で手を握ってもらってなさい」

「え? 何で俺? 照山さんが付き添えばいいんじゃない?」

「私は忙しいんです。デスクワークの少ない出部さんが行ってあげてください。それともいやなんですか?」

「別にいやじゃないけど……」

碧は躊躇したが背に腹はかえられない。

「出部さん、お願い……」

二人は仮眠室に向かったが、また地震が起き、碧が廊下で悲鳴を上げた。


 他の女子社員が紅葉に聞いてくる。

「碧ってイデブーのこと好きなの?」

「さあ?」

「だってこないだキスするし、今日も仮眠室に付き添ってもらうし。私なら絶対できないもん」

「そうねえ。他に男性がいなかったからかもしれないけど、少し素直になってきたかもね」


 そのころ出部は碧を仮眠室に連れてきた。

「出部さん、ちょっと後ろ向いててください」

「ああ、ごめんごめん」

碧は下着姿になり、ベッドの上で毛布をかぶった。

「もういいですよ」

出部がこちらを向く。

「でも本当に地震が苦手なんだね」

「子供のころからダメなんです。学校でも誰かにしがみついていました。あ、女の子にですよ」

「それじゃ、昨日とかよく眠れなかったんじゃない」

「ええ、実はもう眠くて。出部さん、手を握っててくださいね」

出部が碧の手を握り話し掛けようとすると、碧はもう眠っていた。

出部は碧の頬にかかった髪を直してやる。

「かわいい寝顔で。もうちょっとやさしく接してくれるといいんだがなあ」

そしていつの間にか出部も寝てしまっていた。

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