後編
-1-
「なにするの?」ボタボタと岸貴子の鼻から血が滴る。
「お前が全部悪いみたいだな」
「な、なに?」
鼻を抑えている掌ごと、左拳で撃ち抜く。
「ぶぐ……」
「お前が悪いんだろ? 」
右拳を振り上げる。
「も……もうやめて……話す…………話すから」
肩に右拳をぶち当てる。
「いたぁ……もうやだ」
ぐすぐすと鼻をすする。
「私たち友達だったでしょ。裏切ったじゃない!私の事!」
「だから、あなたの恥ずかしい写真を柳田に渡したの。それだけよ」
「私だって、柳田に……」
「……」
号泣する少女。鼻血がしたたっている。黒幕って程じゃなかったな。やりすぎたか……まあいいや。
「今後俺に近づくな」
左腕を叩いて見せる。
「次は絞め殺すぞ!」
ひぃっと言う悲鳴が聞こえた。
-2-
俺は柳田の待つ公園に向かう。
五六……6人か。
たむろしてやがる。
「あの人達です……」
おまわりはすっと、うなづく。
俺はニヤつきながらおまわりが近づいて行く様子を眺めた。
あの制服に気づいて、蜘蛛の子を散らすように……
逃げろ逃げろ。取り敢えず柳田の名前と住所は伝えてある。
余罪が出てくるといいな。クック。
-3-
そんなこんなで、
俺をいじめる奴はおろか、近づいてくる奴はいなくなった。
俺の意識が遠のく。
そして、『入れ物』から離れた。
元の体はと言うと、路上で刺されたのが幸いして誰か救急車を呼んでくれたとの事。目を冷ました時にナースが教えてくれた。1週間寝てたそうだ。
頭がスッキリしている。
俺が入っていた『あかり』はどうしたって?
さあ? って言いたい所だけれど、実は俺をお見舞いに来た。
俺があかりに入っている間、幽霊みたいな状態になっていて、私に入っている人は、この人だってわかったらしいぜ。
理屈や辻褄は合わせなくていいだろ、
結果、真実がこうだったってだけさ。
-4-
相変わらず俺は下っぱだ。
集金やつまらない仕事に借り出される。
今日は集金、近場だから歩いている。
ん。あかりか。
すれ違いざま。俺は腰のあたりに右掌を出す。
パァン。
ハイタッチならぬミドルタッチ、会うたび俺らはそんなコミュニケーションをとる。
俺は他人に興味はない。
『あかり』は他人じゃない。俺が収まる入れ物だ。
【完】
19:00=7:00
短針7 長針12
7き 12し
あいうえおか【き】
1 2 3 4 5 6 【7】
あいうえおかきくけこさ【し】
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 【12】
きし
読んで頂きありがとうございました。