学校
「ただいまー」
「あ、お帰り!」
「ほい、おみやげ」
秀太はみなに紙袋を差し出した。
その中身を確認するとみなは目を輝かせた。
「え!?これオレの?」
「何々?わぁ、制服だ!」
「明日から学校行って来い」
「・・・ありがとう」
「泣くのか笑うのかどっちかにしろよ」
秀太は照れくさそうにしながらみなの頭を撫でた。
「あと、柊にはこっち」
「何?」
「今日は鍋にするから手伝ってくれ」
「鍋!?やったぁ、楓も呼ぼうっ!」
「とゆぅーわけで・・・」
『いっただきまーす』
皆は思い思いの具へと箸を進めた。
秀太と柊が鍋の具について言い争っていたが、結局水炊きの具が入ったキムチ鍋になった。
「ねえ、柊の隣の子ってだれ?」
先ほどから柊の隣には赤い髪を肩でそろえた少女が座っていた。
ずっと気になっていたみなは思い切って秀太に聞いた。
「ああ、楓だよ。柊の妹な」
「へぇ」
じっと見ていると楓と目が合ってしまった。
楓は気にした風も無く柊の皿をよそっていた。
みなも楓と話すことなく一日を終えた。
楓が学校へ行くと、クラス中転入生の話で持ちきりだった。
クラスの中で一番目立つ男子が職員室で何故そのような話を聞いたのか、
何故職員室にいたのかが不思議だが、誰も好奇心の前では誰もそんなことは気にしない。
「なぁ、女?!」
「いや、男らしい。残念だったな、男ども」
男子の悲痛な叫びとともに女子の歓声が上がる。
「イケメンかな?ワイルド系?草食系?どっちも良いー!!」
「私は草食かな。楓はどっちが良い?」
「私?別にどっちでも良いわよ、興味無いし」
どうせ昨日見た男の子が来るんだろうし、特にわくわく感も無い。
まあ、香織の草食系の方かな。どっちかというと。
でも意外とああいう顔した奴の方が危ないかも。もやしには変わりないけど。
「HR始めるぞー、転入生も紹介するからな」
担任の一言で教室が沸き立った。男子はモテない奴をと望み、女子はイケメンを望んだ。
「影氏、入りなさい」
「はい」
楓は目を瞠った。昨日は話すことも無く気付かなかったが、みなの声はとても心地よい音だった。
楓だけでなくクラス中の女子が声だけで陶酔していた。
「影氏みなです。よろしくお願いします」
「みんな仲良くしろよー!!」
『はーい!!!!』
「えっと、席ってどこに座ればいいんですか?」
「ああ、すまんすまん。木本の隣な」
「せんせぇ、しっかりー」
「うるせぇ。お前らは勉強でもしてろ!」
みなは香織の隣の席らしい。みなが女子の間を通るたびに女子の歓声と男子の嫉妬が響いた。
私の姿を見ると、少し戸惑った顔した。
「よろしく。分からない事があったら任せて」
「ありがとう。思ったより話しやすいね、楓」
みなが笑った瞬間、楓は思わず見惚れてしまった。
「私も、思ったより・・・」
「?」
「な、何でもないわ」
(思ったより、みなはイケメンだったわ)
不覚にもときめいてしまった自分を楓はいさめた。