第三者
「ほい、これでも飲んで」
渡されたのは温かい蜂蜜レモンだった。冷えた体にはとても染みる。
「甘い」
「だろ?」
嬉しそうに目元を和ませる。
家に着くなり秀太は、ブランケットや温かい食事に新しい服をみなに渡した。その度に秀太は言った。
「そんな申し訳なさそうな顔するな。オレが好きでやってるの」
「うん。ありがと」
「どういたしまして」
お世話になるんだし片付けくらいはしよう。そう思って辺りを見回すと雑誌や服が散らかっていた。みなは意を決して立ち上がり手短な雑誌をまとめていった。するとどの雑誌にもある特集があることに気づいた。
「秀太さんって・・・」
「ああ、うん。一応モデル」
みなの手元にある雑誌見ると、照れくさそうに言った。
「すごーい!びっくり!尊敬」
みなが眼を丸くして素直な感想を告げると秀太は気恥ずかしそうに笑った。
「そんなことないよ。まだまだこれから」
「明日、みなが学校に行けるよう手続きしてくるから留守番頼むな」
「オレ一人?」
少し寂しい。
「いや、オレの友達に気が利く奴がいるからそいつにみなの事を頼もうと思ってる」
翌日目覚めると、リビングには女性が一人座っていた。
「あ、おはよう!今日はよろしくね」
「おはよう、ございます・・・」
「みな君でしょ?私は柊です」
はい、と言って柊は自分の右手を差し出した。
柊は気さくな性格でみなはすぐ打ち解けた。
「あ、そうそう。みな君が来週から行く学校、うちの妹いるからよろしくね」
「妹さん?」
「うん。生意気な」
「仲が悪いんですか?」
「うーん、でも大事な家族かな」
「そうですか」
みなは家族が欲しかった。他の誰が自分を認めてくれなくても唯一認めてくれる存在が。それでも思うのだ。家族がいるものは家族を疎ましくいうものもいる。もし本当に家族が疎ましい存在なら、いなくてもいいのかなと。
「みな君。秀太から聞いたよ」
柊は自分が苦しんだような顔で言った。
「同情はいりませんから」
みなは、秀太に言った言葉と同じ台詞をいった。
すると柊は少し驚いたあと優しく笑った。
「私ね、この言葉は秀太にも言ったんだけど」
「秀太さんに?」
「別に同情じゃないの。ただ私がしたいだけなの」
「したいだけ?」
「そう。これくらいのわがままは許す男になりなさい」
「そんなの、オレだけが得してる」
「そうねぇ・・・なら、その分誰かに優しくしてあげて。そしたら、うんと貴方を自慢させて。それを私の特権にさせて」
みなの方が恥ずかしいくらいなのに柊は照れたように笑って言った。
「・・・うん。ありがと」
みなはこの温かさを大事にしたかった。