出会い
クリスマスの楽しそうな雰囲気の中
彼女もいないオレは、ただ店を見て回っていた。
最初は愛想よく振舞う店員も、オレに買う意思がないと分かると在庫の整理をし始めた。
「もうそろそろ帰るか」
オレがそういうと店員がちらりとオレを見た。
そして、嫌味ったらしく閉店を報せる看板を店の前に置いた。
「お客さん、サービスです」
店員は、オレの顔を見ずに商品を手に乗せると、店じまいを始めた。
さっきから幾度となく繰り返されている光景だ。
すでにポケットにはたくさんの試供品やらサービスで貰ったものが入っている。
ふと、視線を感じて辺りを見回すと、少年が一人、ビルの隙間で座っていた。
行き倒れと言う表現の方が合うのかもしれない。
「大丈夫か?」
「・・・」
この状態で“大丈夫か”というのも変だと思ったが、それ以外に言葉が見つからなかった。
少年はただオレを見ている。怯えもすがりもない意思のある瞳で。
「…オレのとこに来るか?家、無いだろ」
「おっさん何?人攫い?それともヘンタイ?若い男の子が好きな」
思ったよりよく喋る子だなあ。でも、おっさんは無いだろ。まだ二〇代前半だぞ。
しゃがみ込んで視線を合わせると、少年は少し肩を震わせた。
・・・・警戒された。そうだな、いきなりすぎた。まず事情を聞こう。
「何でこんな寒い日に裸足でここにいるの?」
オレが出来る精一杯の優しい声で尋ねた。
すると、少年はたどたどしく、でも丁寧にオレに説明をしてくれた。
「・・・そうなのか。親戚も分からないんじゃ、頼るところも無いよな」
少年が話すには、母が自分を産んですぐに亡くなり、父は仕事に失敗して自殺したらしい。
聞いているうちに目の前が霞んだ。
「な、泣くなよ!恥ずかしいよ!こんなの珍しくもないし」
「でぼぉ、やっばり辛いだろ?」
「だから、同情はいらないから。バイバイ」
少年はぶっきら棒に手を振った。
「オレも捨て子なんだ」
唐突に告げられた告白にみなは戸惑った。
「・・・え?」
「今は頑張って生きています。・・・・だから変な気を遣うな。俺が困るくらい迷惑かける権利がお前にはある」
「権利?」
「ああ。だから、うちに来い。俺は秀太。お前は?」
「・・・みな。思ったより強引なんだね」
でも嫌いじゃない。それを言うのが恥ずかしくて、俯いて顔を隠した。