8.続、これからね~
と、ダメおやじの処遇が密かに四人の中で定まった所で。
「そうだ、旦那様はそれでいいとして、他にも気になることがあったんだった!リーゼがかわいくて忘れてた!」
原作にあったようなダメおやじに対しての執着が面白いほどないリーゼロッテが、思い出したようにそう言ってきた。
リーゼロッテは私を膝に座らせ直して、正面で向き合う形になる。
「にゃに?」
「『アンネリーゼ戦記』って、リーゼが聖女になって国を救う話だったわよね?リーゼはすでに聖女なの?」
「……ちぁう」
「じゃあ、やっぱり何かのトリガーがあるのかあ!王道だね!……ん?王道で考えたら、やっぱり私か……?」
わ~!リーゼロッテの勘がいい!でもきっとショックを受けるよね。何とか、誤魔化さないと。
「ち、ちぁうよ」
「……リーゼ?目が泳ぎまくっているわよ?」
「にゃいにゃい、にゃいよ!」
そうは言っても所詮は3歳児。じーっと疑いの目を向けられて、汗がダラダラだ。
「……リーゼは、私を信じてくれてないのね……」
「う……」
そして大好きなママに悲しい顔をされたら、あっさり降伏してしまうのであった。
「……キレた私が大暴れして魔力暴走を起こして、リーゼを庇ったマリアンが大火傷……」
「奥様の火魔法……以前は大変でしたもんねぇ」
リーゼロッテとエリーが、遠い目をしている。
その姿を見たマリアンは、ちょっと後ずさった。
「昔!昔よ、マリアン。ワガママ黒歴史の頃!感情でコントロールができなくて」
「できるようになられたのは前の記憶を思い出してからでございます。昔というほど昔では……」
「いいでしょ!昔で!ともかく!今はコントロールできるから、ね?」
「もちろん、疑ってなぞおりません」と返したマリアンは、まだ少し引きつっているものの、「でも、お嬢様と国の為に必要ならば……」とか口走っている。
「「そんなのは認めないわよ!」にゃいわよ!」
プンスコと二人で同時に叱れば、困りながらも嬉しそうに微笑んだけど。まったく!忠義者にも困ったもんだよ。
「でもそうかあ。どうしようかなあ。確かに年々、魔の森の瘴気が強くなってるのよね?帰ってこないのはどうかとも思うけど、旦那様たち騎士団が忙しいのもそのせいだし」
リーゼロッテの言葉に、マリアンとエリーが頷く。
「しょうなんだ?もうなんだね」
「うーん、悪役令嬢に戻るのはごめんだし……ちなみに、聖女になるのは何歳頃?」
「13しゃい」
「はやっ!その歳で国を背負うとか……不憫な気もしちゃうけど……物語あるあるだよねぇ。いや、今は現実だけど。読んでれば良かったなー、『アンネリーゼ戦記』!」
「じどうぶんがくだったし、よくあるはなしだったし、きっとしょんなに目にとまらにゃいよ。わたちはだいすきだったけど……いつか」
あんな風に、かっこよく颯爽と、不遇な状況から抜け出せたらと。何度も、何度も学校の図書館で読んだ。
「……そっか」
途中で口を噤んだ私を、リーゼロッテがまた優しく抱きしめる。
「その頃じゃ、さすがのヲタの私でも読めてない頃だなあ。仕方ないか」
そして笑顔で私を見る。
「考えようによっては、あと10年あるしね!私にもうちょい転生チートでもあれば解決かもだけど……」
「ちーと?」
「あ、リーゼは知らない?私が向こうにいた頃、転生ものの小説やら漫画やらが流行って、私、大好きだったの!片っ端から読んだな~。でね、転生特典みたいな感じでね、すごい力とか知識とか貰えたりしてね、転生先で無双する!みたいなのも多くて、楽しかったあ」
「へ~」
「ここで言えば、リーゼがヒロインで私が悪役令嬢で、ざまあされる感じでね~。旦那様は顔はヒーロー顔だけど、ヒロイン父か。てことはリーゼの相手は王子あたり?」
「……しょう」
「く、わ~!公爵令嬢から離れられたけど、王家の外戚かあ。マナーとか忘れないようにしなきゃ」
「え、わたちおうじもいらないよ。りじゅママとじゅっといたいよ」
……5秒の沈黙後。
「ふわあああ!だよね!ポンコツ(仮)王子もいらないよね!天使は私のそばにぃぃ!」
結局何の解決策も見つからないまま、ヲタクのスイッチを押してしまっただけだった。




