7.これからね~
「しょれで、りじゅママはこれからどうしゅるのよ?」
リーゼロッテが嫁いで来てから、早1ヶ月。
うちのダメおやじには、相変わらず放置されている。二人して。
「う~ん?どう、とは?家の仕事も覚えたし、あとはリーゼを愛でられていれば充分だけど?」
「う……」
今日も今日とて、楽しいいつものおやつタイム。私の口にビスケットを入れながら当然のように言われる。嬉しい。
「じゃ、にゃくて。りじゅまま、まだ16さいじゃん。あのダメおやじにはもったいにゃいれしょ!おちごともしゅぐおぼえて、しゅごいし!しつじしゃんもびっくりじゃん」
「仕事はね~、前に経理の仕事してたからね、帳簿つけなんかは得意なのよ。前世持ちの特権よぉ。まあ正直ここまで旦那様と会わないとはさすがに思っていなかったけど、むしろ好都合というか……」
「こうちゅごう?」
「あ、や、ね。私はいいのよ、私は。あれだけやらかせば、拒否られるのはわかりみが深いというか……今でも夜中に思い出すと羞恥でのたうち回るもの……」
「しょ、しょうなんだ」
どこまでやらかしたのかものすごく気になるが、とても遠い目をしたリーゼロッテには聞けない。3歳でも黒歴史の痛みは認識している。
「ただな~、リーゼに対してがな~!納得できない!前の奥様にそっくりなんだよね?」
リーゼロッテがマリアンに確認するように聞く。
「はい、それはもう。……見た目は」
「ちょっとまりあん」
「奥様は中身も儚げ美女だったの?」
「それはもう」
「ちょっと~?!」
そんな私たちのやり取りを、エリーが微笑ましく見守りつつ、ジュースのおかわりを注いでくれている。できる侍女だ。
「では、中身が違うと旦那様にご理解していただければよろしいのでは?」
「えりー、おまえもか……!」
まあね。分かってる。分かっているけどね。怒ってもいないけどプンスコしてみると、三人して「ごめんね~」ってほっぺをつんつんしてくる。「ふ~んだ!」と、すぐに絆される私。
「ともきゃく。わたちもだいじょぶだよ、パパいらにゃい。あんなぶっちょーづらみてたくにゃいもん」
「仏頂面って。お嬢様、旦那様は元々表情があまり変わらない方で」
「しょれでも、やだ」
そんなことは、原作を読んでたから知っている。当時はクールなイケオジのように思っていたけれど、娘になって実際に見てみると、ただの万年不機嫌オヤジだ。子どもの精神衛生上よくないと思う。……それに、あの不機嫌は、前世の記憶を刺激されてしまうのだ。
「そっかあ、それもそうかあ。確かに怖い顔の人が一緒にいるのは嫌だよねぇ。私も嫌だわ」
少し空気が重くなったところで、リーゼロッテがそう言いながら私をひょいっと抱き上げる。
「……りじゅままも?」
「うん。嫌」
「パパ、ない、いい?」
「いい、いい!四人で楽しく過ごそうね!毎日女子会、最高じゃない」
私がリーゼロッテにぎゅっと抱きつくと、しっかり抱きしめ返してくれる。ほっとする。きっと人の繋がりは、血縁だけでは図れないのだ。
「確かに、お嬢様と奥様が心穏やかに過ごされることが一番大切ですわね」
「はい!わたくしも思います。亡くなられた奥様にも不肖マリアン、お嬢様を託されましたので。お嬢様の思う通りに」
そして、何かを察してくれた、この二人も。
……そういえば、前を思い出してすぐは、神様ひどいと思ったけれど。うん、今は感謝、かな。
我ながら単純だけど、いいよね。




