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【3日目】
俺は、今までで一番シンプルな設計図を組み立てた。
魔力を受け取る「入口」。
魔力を送り出す「出口」。
そして、その二つを繋ぐ「最短経路」。
それだけ。
「……これが、最後だ」
≪ 魔導回路――成功 ≫
俺はポポそのものを作る技量は存在しない。
だが、医者と同じように延命する事ならできる!
≪ 異物接合――成功 ≫
ガラクタが繋がり、小さな核が完成する。
「……頼む」
俺は震える手で、新しい核をポポの中心部に慎重に取り付けた。
カチリ。
……数秒の沈黙。
俺は息を止めた。
そして――手が震えて、レンチを落とした。
こんなこと、初めてだった。
やっぱりできないんだ。
そもそも、ゼロからエネルギーを供給する機構なんかを作れるはずがない。
「……もう、管理室に行くしかないか。 これ以上は……」
俺は、鍵となるパーツを手に持ち、最後の扉へと向かった。
*管理室・正扉*
電子音が静寂を切り裂き、巨大な隔壁がゆっくりと左右に分かれていく。
「そうだ。『青い基板』を見つけないとな」
歩き回った先にあったのは青みがベースの神々しい基盤だった。
基盤をはめ込むと、ピースが揃ったのか電気が通っているのがわかる。
その瞬間バチッ、と青い火花が基板の表面を走り、神々しいまでの光が管理室全体を満たした。
今まで聞いたこともないような澄んだシステム音が響き渡った。
≪ ワールドクエスト:『創造主を覚醒させよ』――条件達成≫
・報酬:眠るロボたちの覚醒
そして、豪華な音楽が鳴り響く。
「あぁ、ポポ。 ごめん。 笑顔を見せてやれなかった」
≪ワールドクエスト達成につき、第15の島――クリスタル・レイクの解放≫
こんなに虚しいことはあるのだろうか。
「……」
「おい、そこの少年。 どうしたそんな顔をして……」
声が聞こえる先は創造主だった。
「お主が助けてくれたのだな? 一つ願いをくれてやろう」
その言葉に胸がキツくなる。
「願い、ですか……」
「ポポの核となるものを作れたりしますか?」
「そんなものでいいのか? あれは私の試作端末。管理機構としては不完全で感情が混ざりすぎだ。 他にないのか?」
俺は何も答えられなかった。
ただ、首を上下に振った。
「そうか……まぁ、お主の願いでもある。 断る理由はない」
それは、俺の敗北であるが、最後の希望だった。
*
≪ 魔導回路――成功 ≫
俺は震える手で受け取った核をポポに取り付けた。
すると――
「……システム、起動」
ポポのレンズが、ゆっくりと光を取り戻す。
「ポポ、オンライン」
「ポポ……!」
俺は思わず駆け寄る。
「クンペイ? ポポ、ナンデ、寝テタ?」
いつもの、電子的な声。
「お前、覚えてないのか?」
「ウン。 ポポ、最後の記憶、材料集メタ、トコロまで」
「……そっか」
俺は安堵のあまり、力が抜けて床に座り込んだ。
「よかった……本当に、よかった」
「クンペイ、顔色、悪イ。 大丈夫?」
「ああ……大丈夫だ。 ちょっと、寝不足でな」
俺はポポの頭を撫でる。
机の上には、十数個の失敗作が転がっている。
だが、その全部が、ポポを動かすために必要だった。
「……おかえり、相棒」
「タダイマ、クンペイ!」
ポポのレンズが、嬉しそうに明滅する。
「わりぃ、ポポ。 次行かないとだわ。他の仲間と楽しく過ごせよ」
ポポのレンズが、一瞬だけ揺れたように見えた。
「……クンペイ、ポポ、役ニ立タナカッタ?」
「バカ言え。お前がいなきゃ、ここまで来れてねぇよ」
言葉にすると、胸の奥がきゅっと痛んだ。
修理台の上で光るポポのレンズは、いつもより少しだけ弱々しい。
「クンペイ、行クノ?」
「ああ。まだやることがある。……でも、お前はもう十分戦った」
ポポは小さく首を振るように、レンズを左右に明滅させた。
「ポポ、クンペイノ相棒。ズット、ソウ思ッテタ」
「……俺もだよ」
言った瞬間、喉が詰まった。
数十個の失敗作が転がる横で、ポポだけが静かに光っている。
「クンペイ。ポポ、忘レナイ」
「忘れるわけねぇだろ。お前は……俺の初めての相棒だ」
ポポのレンズが、ほんの少しだけ強く光った。
「クンペイ! イッテラッシャイ」
その声は、いつもより柔らかかった。
≪ポポがパーティーから離脱しました≫
通知が表示された瞬間、胸の奥にぽっかりと穴が空いたような感覚が広がる。
ゼロからは作れなかった。でも、繋ぐことはできた。
それで十分だと、自分に言い聞かせながら、俺はポポに背を向け、この地を去った。
○○○ SVO攻略掲示板 ○○○
【速報】新たな島追加される!?
450:名無しのスカイランナー
おい待て、今システムログ見たか!?
第14の島のワールドクエストがクリアされて、第15の島だってよ。
451:名無しのスカイランナー
は? 第15の島?
嘘だろ、今トップ層がようやく第13の島に辿り着こうとしてるのに……
453:名無しのスカイランナー
本当に新たなる新星……。
『名無しのフロンティア・プレイヤー』ですな。
455:名無しのスカイランナー
……誰だよ、マジで。運営のテストキャラじゃないよな?
○○○
この後、通知音が流れた。
≪ワールドクエストクリア後、個体名『ポポ』の生存を確認しました≫
≪ シークレットクエスト『死を乗り越えた後に』――クリア≫
――第一章完――
これで第一章完結となります!
ここまでお付き合いいただいた皆さんのおかげで、気持ちよく執筆できました。
第二章も書く予定(少しだけ書いています)ですが、連載開始時期はまだ未定です(もしかしたら、すぐに再開するかも?)。
またこの世界でお会いできる日を、作者自身も楽しみにしています。
本当にありがとうございました!!




