表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/18

15

「機体を直すぞ!」


 ポポはくるりと周り、片腕を掲げた。


 まずはポポにも手伝ってもらい、そこら辺のガラクタを集める。


 ポポからもらったパーツや、イヴの残骸から剥ぎ取った高純度の魔導金属――「最高のガラクタ」は揃った。

 

 俺はひん曲がった参型のフレームに手を当て、意識を集中させる。

 

 ≪構造解析ディープ・スキャン――成功≫

 

 グリッド線が参型の内部を透過し、焼き付いた回路と断裂した神経系を浮き彫りにする。

「なるほど、ここが魔力のボトルネックか。なら、今度はもっと太いバイパスを通してやる……!」

 

魔導回路リベリオン・リンク――成功≫

 

 指先から漏れる魔力が、参型の心臓部へと滑り込む。断たれた回路が再び鼓動を始め、血管のような光が機体を巡った。仕上げだ。

 

異物接合ジャンク・バインド――成功≫

 

 パキィィィン!!!

 

 激しい火花と共に、イヴの遺産である魔導金属が参型の外装と融解・結合していく。現実世界で学んだ「応力分散(力を逃がす構造)」を強引に流し込み、ただの修理を超えた「再構築」が完了した。

 

 ○○○

 

【|嵐を喰らう者・参型(ヴォルテックス・イーター・MK-III)(改)】

• 種別: 特殊外装魔道具(唯一品・現場改修型)

• 効果1: 前方からの風圧を「魔力」と「推進力」へ変換する(変換効率150%)。

• 効果2: パッシブ『最速飛行の持ち主』を検知し、最大速度の開放率を13%まで上昇。

• 備考: 見た目は以前にも増してパッチワークだが、クンペイの知恵により耐久性が飛躍的に向上。ピーキーさは影を潜め、堅実な「翼」へと進化した。

 

 ○○○

 

「いい……。いい手応えだぞ、これならいける」

 

 参型のレンズに力強い光が灯る。だが、俺の傍らにはまだ、戦い抜いた「肆型しがた」の残骸が転がっていた。

 

「……そういや、『肆型』が余っちまうな。こいつを単なる『予備』にするのは勿体ねぇ……」

 

 ふと、エンジニアとしての閃きが脳内を駆け巡る。

 参型が「風」を「魔力」に変えるなら、その余った魔力を肆型の機構を使って「攻撃」に転換できないか?

 

「防御を捨てて突っ込むだけが俺の戦い方じゃない。……よし、全進あるのみだ!」

 

 俺は再びレンチを握り直し、新たな「合体機構」の設計図を脳内に描き始めた。


「よし、『肆型』を『参型』の魔力回路に……」


 ≪魔導回路リベリオン・リンク――警告≫

 

 俺は両者のコアをバイパスで繋ごうとした。だが、接続した瞬間に凄まじいハウリング音が鳴り響き、参型のレンズが真っ赤に点滅する。

 

≪警告:魔力波形が一致しません。出力の干渉コンフリクトが発生しています≫

 

「くっ、そうか……! どっちも『風』をソースにしてるから、お互いの魔力吸引が干渉し合ってんのか!」

 

 例えるなら、一台の掃除機で吸い込もうとしているゴミを、横からもう一台の掃除機で奪い合っているような状態だ。


 同じ風を食べていても、その「咀嚼の仕方」が致命的に違う。

 

 無理に繋げば、参型の繊細な飛行回路が、肆型の荒っぽい吸引に巻き込まれて焼き切れてしまうのだ。

 

「参型で飛びながら肆型を撃てば、空中でガス欠(魔力切れ)を起こして墜落……か。今の俺の制御能力じゃ、この二つの『食い癖』を調整しきれねぇ」


「とりあえず、『肆型』は保留だな……」


 俺は『肆型』をインベントリに入れた。


「次の敵はどこにいるんだ?」


「アッチの観測塔――」

 

「もう一個の方か……」

 

「……クンペイ、行クノ? 相手ハ、イヴ兄サンヨリずっとコワイ……」

 

「ああ、行くさ。ポポを直して、参型もここまで仕上げたんだ。……それに、あいつのハンマーが『島のエネルギー』だってなら、俺の『参型(改)』には最高のエサだろ?」

 

 俺は参型の機首を撫でた。

 

「……ラジャー! クンペイ、信ジテル!」

 

 俺は配管の影から飛び出した。


 *

 

 そこにつくと、巨大な鉄の扉を握りつぶし、退屈そうにこちらを見据える巨大な少女――アダムの姿があった。

 

「……あ、また来た。逃げればよかったのに」

 

 アダムが巨大な魔導ハンマーをゆっくりと持ち上げる。

 

 その動作だけで、周囲の空間が歪み、地面がミシミシと沈み込んだ。

 

「お兄ちゃんは君を『整理』しようとしたけど、私は違うよ。……私はただ、君を綺麗な『球』にして、そのゴミの山に捨ててあげる」

 

「悪いな、丸められるのは御免だ。……俺はどこまでも真っ直ぐ、突き抜ける主義なんでな!」

 

 俺はスロットルを全開にした。


 参型(改)のエンジンが咆哮を上げ、廃棄プラントの重苦しい空気を切り裂いて加速する。


「――無意味だよ。私の前では、どんな速度も等しく止まっているのと同じ」

 

 アダムがハンマーを軽く地面に突く。それだけで、俺の視界がぐにゃりと歪んだ。

 

 参型(改)の高度計が狂ったように回転し、機体が目に見えない「重圧」に押し潰されそうになる。

 

「ぐっ……、これがアダムの力か!?」

 

「『重力』を操作してんのか……! なら、力ずくで引き剥がしてやる!」

 

 俺はスロットルを限界以上に押し込んだ。

 

 参型(改)の真骨頂、イヴから奪った魔導金属のバイパスが赤熱し、ハンマーから生じる風の波を「推進力」へと変換し始める。

 

「へぇ……。私の重力を『食べて』加速してるの? 面白い、でも――」


(アダムの攻撃から生まれる風を食べているんだが、知られていないなら、アドバンテージだ)

 

 アダムがハンマーを横に一閃させる。

 

「『圧縮スクラップ』」

 

 直後、俺の進行方向にあった巨大な鉄柱やガラクタが、一瞬でリンゴほどの大きさにまで圧縮され、超高速の弾丸となって俺を襲う。

 

「ポポ、しっかり掴まれ! 隙間を縫うぞ!」

 

「ラジャー!」

 

 火花を散らしながら、俺は圧縮弾の嵐を紙一重で回避する。

 

 頬を掠めた衝撃波だけでHPが削れるが、参型(改)の翼は折れない。むしろ、敵の攻撃が激しくなればなるほど、推進力は増していく。

 

「捉えた……! お前の懐だ!」

 

「……遅い」

 

 アダムが虚空を掴む。

 刹那、俺の背後の空間が「重く」なり、慣性を無視して機体が真後ろへ引き戻された。

 

 そして、目の前で、アダムのハンマーが振り下ろされる軌道に入った。


「しまっ――!?」


 背骨が軋む。空気が潰れる。逃げ場がない。


 それなら――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ