明日、天気になりますように
「明日は傘がいるな」
最近はしばらく晴れが続いており、各地で水不足だ。テレビ、スマホの通知、ラジオでさえ「明日は雨を」と、政府からの要請を流している。楽しみにしていたドラマも、テレビ画面の下に朝から延々と流れている
〈政府からのお願い〜明日以降は雨を祈ってください〜〉
の真っ赤なテロップのせいでなんだか集中できない。
「勝手に降ったりやんだりすればいいのに」と呟くと「ひいじいちゃんのときはランダムだったらしいよ」リビングの床で片膝を立て爪を切っている姉が言った。なんでも80年近く前までは、天気は国民一人ひとりの願いに左右されず、天気予報士なんて職業もあったらしい。いまで言うところの願い予想士 みたいなものだろうか。願い予想士は一応国家資格らしいが、どこで取得できるのかなんて考えたことも無い。
「ま、なんでもいいけど。結局明日は雨派が多数だろな」
「濡れるのやだね」
「従わないと農家とかが困るらしいよ」
「ふーん」
他愛もない会話のあと、少し冷静になった私はスマホのカレンダーを確認する。
「え、ちょっと待って。3日後はさすがに晴れだよね?」
「いーや。1週間くらいやるみたい」
「おわった。デートなんだけど」
「かわいそうね」
最悪だ。3日後は絶賛遠距離恋愛中のケンタがはるばるこちらに来てくれて、一緒に遊ぶ予定がある。それも遊園地で。私は急いでスマホを開き、ケンタに電話をしようとするも、向こうは仕事中であることを思い出した。モヤモヤしながらスマホを伏せる。どうしよう。せっかくの企画が台無しだ。ただでさえ会えるのは1ヶ月に1回あるかないかで、その日をずうっと楽しみにしていたのに。頭を掻きむしりながら天を仰ぐ私を横目に姉は自室へと戻っていった。
いったん心を落ち着けようと再びスマホを手に取ると条件反射のようにSNSを開く。そこには当然明日からの天気について様々な議論が繰り広げられ、トレンド入りしている。そんな中で気になった投稿がひとつあった。
〇〇テレビ公式アカウントの天気願い予想に関する投稿だ。
☆明日の皆さんの願いは、晴れ10%、雨54%、無関心36%で、天気は雨でしょう。
明後日以降に関しては、徐々に割合は均一となるも、今後1週間は皆さん雨を願うと予想されます。政府からのお願いに従い、皆さん雨と祈るよう協力をお願いします☆
この状況でも晴れを願う人っているのか。自分の置かれた立場も相まってか、なんだかその10%の人たちがとても心強い味方のような気がして不思議な感覚がする。今も日本のどこかで、明日が晴れるように強く願ってる人がいて、自分と同じような気持ちでいるなんて。
「繋がりたい」
ついそう口にした私はとてつもなくくだらない作戦を思いついた。無関心な人たち全員を晴れ派にして、残りの雨派の人たちの何%かも晴れ派にしてやろう!そうすれば大逆転で私の勝ちだ!
私は昔から思いついた瞬間に行動してしまうタイプで、あまり後先考えないことが多い。でもそれで大きな失敗をしたことなんてないし、むしろそのおかげで得たものの方が多かったりもする。今だって特に本気な訳ではないけど、なんにもできないこの状況が気に食わないし、楽しそう。とりあえずSNSで晴れ10%の仲間探しだ。
ーーーいま思えば、軽い気持ちで思いついたこの作戦が、3日後には自分も周りも大混乱に巻き込むことになるなんて、夢にも思っていなかった。
おわり
あとがき
この度は、私の拙くて面白みに欠ける短編をご一読頂きましてありがとうございます。恥ずかしながら社会人になってから小説に触れる機会が多くなり、毎週ブックオフに通うようになってからというものの、文章で読み手にものを伝えるということの魅力を強く感じるようになりました。小説家になろうというサイトで、自身も文章を世の中に向けて発信できるのだと分かり、是非周りの人に自分の作った作品(そう呼んでいいのか分からないけれど)を観てもらいたい。おもしろい、つまらない、くだらない、なんでもいいから人の心を動かしてみたいと思い、執筆するに至りました。1ミリでも良いので、皆さんの心を動かすことが出来たのなら、嬉しいあまりです。




