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心の奥  作者: 遠藤 敦子
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 伊藤さんと退勤時間が被ったので、先ほどの出来事について話してみた。

「子どもがパン落としちゃったって言われて、謝りもしないでダッシュで逃げられたんですけどやばくないですか?」

 私が言うと、伊藤さんも

「あーあの30過ぎくらいの男の人でしょ? 私も見てたけど、まじでありえないよね。常識なさすぎ」

 と男性客に呆れ返っている。

「わざわざあんな貼り紙するってことは何かあったんですかね?」

 私はわざわざ貼り紙が掲示されている理由を伊藤さんに尋ねた。

「恵ちゃんが入ってくる前にも何人かいたんだよね、『子どもが落としちゃったんですけど』って商品持ってくる人。そういう人たちのせいで何度も商品が廃棄になったから、本部からあの貼り紙を掲示しろって言われたみたいで」

 伊藤さんは過去の出来事を振り返りながら話す。あの男性客のような人が他にもいて、それも頻繁に起きていたのだと知り、私は驚いてしまった。そりゃ貼り紙しないといけないわけだと。


     *


「ねえねえ、お姉ちゃんはどれが好き?」

 焼き立てのパンを店頭に並べていた時、4歳くらいの女の子が私に聞いてくる。

「うーん……。お姉ちゃんはこれが好きだな!」

 と私はメロンパンを指差した。すると女の子は満面の笑みで

「じゃあこれにする!」

 とお母さんにメロンパンを指しながら言っている。

「ちょっと……。みーちゃんの好きなやつで良いのに」

 お母さんはそう言っていたけれど、女の子は

「どれが良いかわかんないからお姉ちゃんに聞いてみたの!」

 とのことだった。親子の微笑ましいやりとりを見て私も思わず笑顔になる。


 その日の帰り道、高校2年生の時から付き合っている恋人の成瀬(なるせ)健一郎(けんいちろう)からLINEが来ていることに気づいた。話がしたいとのことで、後で電話するとのことだ。電話がかかってきたので出ると、

「もう好きじゃなくなった」

 と言われて別れを告げられる。突然のことに私は頭が真っ白になった。私との恋人関係に飽きてきた頃に、同じ大学に通う同級生の女の子(私と健一郎は違う大学に通っている)のことが気になり始めたという。高校2年生から大学2年生の今まで一緒にいた時間は何だったのかーー。私はそのように考えてしまった。

「わかった。今までありがとう」

 私は電話を切る。しばらくの間は高校の同窓会には行かない方が良いかなと考えた。それから同じ大学の友達数人と伊藤さんと矢沢さんにLINEや電話で話を聞いてもらう。伊藤さんと矢沢さんから、それなら飲みに行こうと誘われ3人で居酒屋に行った。

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