第6話「北のダンジョンへの準備」
悠真と蓮は、グラントの冒険者ギルドの中へと足を踏み入れた。
「うわぁ……思ったより広いな」
悠真は周囲を見回した。
広いホールには多くの冒険者が集まり、酒を飲んで騒いでいる者もいれば、掲示板の依頼を見て真剣に相談している者もいる。
「なんか、ファンタジー感すごいね!」
蓮は興奮気味に笑いながら、カウンターへ向かう。
受付には、知的な雰囲気を持つ銀髪の女性が立っていた。
「いらっしゃいませ。ギルドへのご用件は?」
「冒険者登録をしたいんです!」
「承知しました。では、こちらの用紙にお名前を——」
悠真と蓮は名前を記入し、簡単な説明を受けた。
ギルドでは、登録した冒険者に「冒険者の証」が発行される。
これは身分証の代わりにもなり、各地のギルドや街の施設で提示を求められることがあるという。
「では、こちらがあなた方の冒険者証です」
二人は金属製のプレートを受け取った。
悠真はじっとそれを見つめながら、改めて「冒険者になったんだ」と実感する。
「これで私たちも正式な冒険者か……!」
「まずは何か依頼を受けてみようか!」
蓮は掲示板を指さした。
悠真と蓮は掲示板に貼られた依頼を見ながら、今後の方針を考えた。
「うーん、いきなり難しい依頼は無理だし……」
「でも、ダンジョンの情報は集めたいよね?」
話していると、近くにいた壮年の男性が声をかけてきた。
「お前たち、ダンジョンに行くつもりか?」
「えっと……そうですね。情報を集めておきたくて」
「北のダンジョンのことなら、俺たちも調査してるぜ」
男は微笑みながら名乗った。
彼はギルドのベテラン冒険者、ガルフ。
グラントのギルドではそこそこ名の知れた存在らしい。
「最近、北のダンジョンで妙な現象が起きてるって話があってな」
「妙な現象?」
「魔物の動きが活発になってるらしいんだ。それに、以前まではなかった魔法陣の跡も見つかってる」
悠真と蓮は顔を見合わせた。
「……なんか、いかにもヤバそうじゃない?」
「でも、それだけ重要な情報があるってことだよな」
「ま、行くなら装備とか準備を整えておくんだな。ダンジョンは甘くねぇぞ」
ガルフはそう言い残し、ギルドを後にした。
ダンジョンに向かうにあたり、二人は街で装備を整えることにした。
まず向かったのは武具屋。
「いらっしゃい!」
店主は筋骨隆々の男性で、見るからに戦士といった雰囲気を持っていた。
「新米冒険者か? 何を探してる?」
悠真はしばらく考え、新しい短剣を選ぶことにした。
「今の短剣よりも、もう少し切れ味のいいやつを……」
「なら、こいつはどうだ?」
店主が見せたのは、青みがかった細身の短剣。
「これは……?」
「青鋼の短剣だ。軽くて丈夫、それでいて魔力伝導率もいい」
悠真は手に取ると、しっくりくる感覚を覚えた。
「これにします!」
「へへっ、いい選択だぜ!」
蓮も、新しい両手斧を購入。
以前よりもバランスが良く、扱いやすいものを選んだ。
次に訪れたのは薬屋。
悠真は調合術を持っているため、ダンジョンに備えて薬を作ることにした。
「ポーション系の素材をください!」
店主は微笑みながら、薬草や魔力結晶をいくつか並べた。
「ほぅ、調合術が使えるのか。なら、これも持っていくといい」
店主が手渡してくれたのは、「活力の雫」と呼ばれる特殊な液体。
「これは?」
「回復薬の効果を少し高める添加剤さ。うまく使えば、良い薬が作れるぞ」
悠真は感謝しながら、それも購入した。
準備を整えた悠真と蓮は、ギルドの前で一息つく。
「よし……いよいよ、ダンジョン攻略だな」
「うん! ワクワクしてきた!」
二人は意気込みながら、北のダンジョンへと向かうため、街を出発した——。