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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

汚れた手と綺麗な手

作者: 妹明

 「一番隊! 突撃!!」

火柱や煙、血飛沫などが、あちらこちらで見える。

悲惨で、残酷な暗い世界。

今、その世界の地面の上を自分が平然とした状態で立っていることが恐ろしい。

 現在、戦争の真っただ中。でも多分、俺らの国は負ける。

味方だった国は、全部降参していたから。

負け戦だとしても、最後まで戦わなくっちゃいけない。

そして、生きて国に帰らなきゃいけないんだ。

 こんなことをしても、何も生まれないし……。なんで、こんなことやってんだろう? 俺。。。


 敵をまたひとり、殺してしまった時

「わぁーん。うわあー」

「!?」

足元あたりから泣き声がしたと思って下を見たら、

「赤子!? なんでこんなところに!!?」

「うえーん。うわーん」

「と、とりあえず安全な所に……」

俺は走って赤子を抱えて逃げた。

戦争において、敵に背を向けるなど言語道断。

それは、死と同じ意味だからな。

それなのに殺されなかったのは、不幸中の幸いだ。


 その子は、右のほっぺに5つの黒子のある白人の子だった。多分敵側の子供だろう。

逃げてる間にココなら安全だろうと思ったがそここそが戦闘地域になったってところかな?

 俺は、自分たちのキャンプ地の少し奥に行った林の中にその子を置いた。

「ココなら安全だ。またあとでご飯持ってくるから待ってるんだよ?」

それで、俺が元の場所に帰ろうと思ったら

「あー? うう。う……うわぁーー!!」

「うわ!? 泣くなよぉー! わーった、わーったから大人しくしててくれよ!!」


 数時間待って、ようやく昼寝を始めた頃にやっと戦場に戻った。戻りたくはないけどさ。


 「川崎! しばらく見かけなかったがどうした?」

「あぅ……関森、ななんでもねぇよ」

「じゃぁさっきの赤子は?」

「な……なんのことでしょうか? 六道」

「あ゛敵!!!」

『ガッ……ピィン。ドォォォォン!!』

六道が手榴弾を勢いよく敵陣に向かって投げつけた。うまくまいた。


 「一番隊、撤収!!」

隊長の声とともに、仕上げに敵を殺して戦場を後にした。

あの子……キャンプ地で泣いてなきゃいいんだけど。


 キャンプ地は、案外静かであの子は泣いていないようだった。

メシの時間中、関森が話しかけてきた。

「川崎、さっきの話の赤子って?」

「あ、赤子!!? なんのことかなぁ?」

「六道が言ってたやつのことだよ!」

「白人の子供だったな」

「ろ……くどう」

「殺せばよかったのに。なんで、殺んなかったんだ?」

「ば……!! 殺せるわきゃねぇだろ!!!」

「そこ!! 食事中に騒ぐんじゃない!!! 静かに食事しろ!!」

「あ……はい。すみません」

空気が若干重い中食事をつづけた。

乾パン2、3枚を軍服のポケットの中に入れた。


 食事時間が終わり、寝る時間になった頃余らせておいた水の中に乾パンを砕いて入れた。

それを、例の赤子のいる場所に持っていった。あの子はちゃんと起きていて俺が来ると喜んでこっちによってきた。

「はい。ご飯の時間だよ。これ飲んで」

「あうー。んきゅ。んきゅ」

「へー。それが例の赤子かぁ~。可愛いね。右側の頬に5こ黒子がある~面白い!」

「……!!」

騒ごうとしたら、六道が俺の口を押さえてきた。

「騒ぐな。騒いだらそいつごとお前、殺されるぞ」

「……」「うー? ゔ……」

「あら? この子六道が川崎虐めてると思って怒っちゃったみたいだな」

「え? あ、わりぃ。とる気はなかったんだぞ?」

そう言って手を放した。

赤子は乾パン水を飲み干すとゲップを出してすぐ寝ちゃった。

「川崎ぃ」

「なんだ、馬鹿」

「バカってなんだ! じゃなくって……名前! どうすんのって」

笑空(エソラ)は?」「えそら??」

「笑う空って書いて笑空。笑って空の下で生き続けられるようにって意味で」

「笑空……か。いいな。六道! たまにはいいこと言うな」

「な、なんだよ! たまにはって」


 それから月日は流れて。

「お帰り! パパ。和樹(関森)と、六道さんも!」

どうやら、笑空にとって俺はパパになったらしい。名付け親の六道に一番懐いていないのはなんだろう

「おー。いい子にしてたか?」

「うん! いい子にしてた」

そう言って笑空は笑った。

「ねぇ。なんでみんなの手は赤いの? 仲間外れにされたの? 私だけ、手白い」

そう言ってふてくされた。それを聞いて若干ビクッとなった。

「……笑空ちゃん、白いことの方がいいんだよ?」

「白いのっていいの? 赤いほうが普通なのに?」

「いいんだよ」「ホント!」

「ホント。だから、白いままでいなさい。さ、メシ食いに行くぞ」

そう言って、少し躊躇いながら薄汚れた手と純粋な綺麗な手が絡み合わせた。

「ねぇ。パパ達ってみんな同じ服着てさ、なにやってるの?」

「……お仕事してるの」「何のお仕事?」「子供にはまだ難しいお話です!」

「ぶー! 笑空のこと子供扱いしないで!!」

「あはは。行くぞ! 早く着いた方が勝ちね!」「うん! 負けないからね!!」

そう言って、笑空は手を離して走ってった。


 あの子も、そのうち薄汚れた世界(戦争)を知るんだろうか。

俺たちが自分の実の親やその仲間たちを殺してるって知ったら笑空はどう思うんだろう?

嫌いになるのかな? あの子、拾わないであのまま死んでたらあの子にとっても、俺にとっても……、幸せだったのかもしれない。

「川崎、馬鹿なこと考えんじゃねぇぞ」

「なんだよ六道。変なこと考えてなんかないよ」

笑空(赤子)をあの時見捨てればよかったとか、考えんじゃねぇぞって言いたかっただけだ。考えてなかったんならいいんだが……」

「……」

変な勘だけいいな。六道は。いらねぇ特技だが。

 こんなこと(戦争)なんてなかったら、俺と逢うことはなかったんだろうな。笑空は。

でも、それと同時に血の繋がっていない親と一緒に暮らしてるっていう呪縛から解かれるし、本物の親と一緒に……幸せに暮らしてるんだろうな。

 明らかに後者の方が良かっただろう。だけど俺といれて幸せだったと思ってほしい。

後悔なんてさせない。


 「うう……ッ!」『バタン』

「はぁ……。はぁ……? 写真?」

敵の胸ポケットに入っていた写真を取り出した。すると

「!!?」

そこには、彼と彼の妻と……右頬に5つの黒子のある白人の……子供が。

「え……そら?」

「パパぁ!!」

「!? 笑空!!? 何しに来た!!?」

「何しにって、パパに逢いに来たの」

そう言って、にこっと笑う笑空すると、写真に気付いた。

「なに、これみせてー!」

そう言って、ジャンプして無理矢理写真を俺から横取りすると、

「……なにこれ? これ笑空?」

「……笑空、笑空は俺の子じゃ……!!」

下を向いていた俺はその瞬間、笑空のことを見たら武器をふり下ろそうとする敵側の兵士が……。

「!!」「きゃぁぁぁぁぁあぁぁあああぁぁ!!!」

『パァァァァン……。チリンチャリン』

「……パパ?」

「はぁ……はぁ。笑空? 平気か?」

笑空は無言で縦に頷いた。それを聞いて安心した。

「パパ。パパ言ってたよね? 人は殺しちゃいけないって。パパはいいの?」

「……。ごめん」

「パパの手が赤いのは、いけないことやってたから?」

「ごめん……」

「パパは、苦しくないの? 人を殺して平気なの?」

「ごめん」

声がどんどん掠れていく。聞いてて惨めになる。

平気じゃない。もう人を……殺したくない。

血の海ので溺れ、人を躊躇いを持って殺すことをしなくなった自分がこの世の何よりも憎く見えた。

すべてを戦争のせいにするつもりはない。けど、やっぱ戦争はおかしく醜く憎い。

 世界中の常識を無視して結局勝った方の国も負けた方の国も差はあるけど大きく深い傷を負う。

俺の過去にそれがあったように……。

何がしたいんだ? 俺も戦争も。一体……なにが?


 「パパ。泣いちゃ駄目だよ」

笑空に言われて初めて自分が泣いていることに気付いた。

「ごめんね……もうやらないよ」

「……?」

俺は、笑空を優しく抱いた。笑空はきょとんとした顔で俺を見ていたがなにも言わなかった。

「パパ。約束して」

「なぁに?」

俺は、笑空の顔を見た。

「今度、手を握る時は赤い手じゃなくて、白い手で握って欲しいな」

「え?」

「駄目? さっき、やらないって言ったのは嘘なの?」

「……嘘じゃない」

「じゃぁ、約束しよ?」

そう言って、小指を俺の前に出してきた。俺は、若干震えた小指でそれに絡んだ。

「和樹と六道さんも! いるんでしょ? そこに!」

俺は驚いて振り返ると、森の陰から2人が出てきた。

「ばれてたの?」「すごいなぁ~」

「ふふ。分かってたよ!」

「お前ら……」「じゃぁ、改めて約束しよ!」

笑空は勢いよく手を上下させ、指きりの唄を歌いだした。その様子を俺らは微笑みながら見ていた。

「ゆびきーりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます! ゆびき」

た。を言う前に体が赤い色をなして2つに割れた。

「!?」「えそ……」「!!」

犯人は敵方の兵士だった。憎しみに身を任せてそいつを殺してしまった。

気が付いたらそいつが目の前に血まみれになって倒れてたし。多分殺ったのは俺だろう。

 後で聞いた話によると、俺は殺す寸前に何故笑空を殺したかと聞いたらしい。そいつらの言葉で。

すると、敵側の者であれば女、子供だろうが殺せと命令されたんだと泣きそうな声で答えていたらしい。

それを聞くと、呆れたような声を出し殺したそうだ。


 戦争なんていいこと一つもない。笑空が死んだ時俺は思い出した。

自分がまだガキだった頃、俺をかばって死んでいった両親を。

俺の力不足で俺の目の前で殺された妻と子供を。

俺はまた……駄目だった。俺は……。

最低だ。


 俺は、自分の持っていた銃を自分の頭に向けようとした。そしたら、六道がその手を軽く触り

無言で首を振った。関森は少し離れたところで腕を組んで立っていた。辛そうな顔で。

「お前だけの罪じゃない。分かってくれ」

「ぁう……。う……」

俺はその場に崩れた。

そこにいる自分が最低に見えた。平気で人を殺し、大切なモノをなにひとつ守れず……。

最悪だ。俺は、最低だ……。

こんな、惨めな気分になるのが戦争なのか?

誰でも人殺しの汚名を着せられ、地獄という名の泥に足を突っ込ませられるのが……戦争なのか?

 戦争って……なんだ?



 数年後。

「よう。久しぶりだな。川崎」

「……六道。関森も」

戦争は終わった。世界中に大きな傷を残して。大切な人を失い、体も心も傷つけ。そして、絶望を覚えさせられた。

 俺らは今慰霊の石碑の『川崎笑空』の名前の前に立っている。死体は持って帰ることはできなかったから、せめて名前だけでもと、本来外人の笑空も入れてもらった。

「……俺、もうやだ。戦争やりたくない」

「ばーか。誰もやりたくなんかねぇよ」

「そうだよ。あんな惨めなこと、もう二度としたくないっての」

「……うん、そうだよね」



 俺は、後悔していることがひとつある。

それは、汚れていない手で一度もあの子の手を握ってやってないことだ。

 ――――――――今度、手を握る時は赤い手じゃなくて、白い手で握って欲しいな

時々それを何の前触れもなく思い出すと胸が痛くなって泣きそうになる。

俺は、石碑を優しく撫でて言った。

「握ることはできなくても、こうやって撫でることはできた。これで勘弁してね」




                   ――――――――――パパ、ありがとう。

お疲れ様です!

この度『汚れた手と綺麗な手』を書かせていただきました妹明です!

いや~……えっと、カンザス様にアドバイスをもらって書かせていただきましたが、

……うんと、あの~、テーマと全く違うことになりました(--;)

一応、出来る限りテーマに沿うように努力をいたしましたよ?

しかし、駄目だったんですよ!今、凄く泣きそうですよ(つД`)

少し喋り過ぎましたね。

最後に、感想・意見等ございましたら是非書いて頂けると有り難いです。

今回は本作を読んで頂き誠に有難うございました。

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