No.9 自己分析って大事って話
⬜︎
……スッ
無言で身を起こす。
スゥーーーっ。
「私!!生き残ったー、偉いーーー!!ふうううううぅうううう!!!」
あ゛ぁー、生きててよかったー。気分が清々しいぜ。そんで持って洞窟の空気はこもってて澱んでるぜ。まぁそれはいい。昨日までの私はおさらばだ。グッバイ⭐︎してやるぜ。
今日からの私は、とにかく同格狩りする。え?そこは格下狩りじゃないのかって?それじゃあ経験が積めないじゃん。というわけで、今日からは、湖を探しつつ同格を借りまくります。それじゃー気分を変えて朝の運動。いくぜっっ。
⭐︎ 極彩虹林 某所
それは、森林の中にひっそりと隠れるように佇む小さな洞窟。日差しがそこそこさし、洞窟前の半径五メートルくらいの円状になった空き地には、1人の死霊の姿がある。周りにはよくわからない耳が埋まっていて、はっきりいうと気色悪い。が、死霊にはどうやら愛らしく見えるらしい。うんうんと頷いていた。
死霊はどうやら準備体操をしているようだが。バク転からのブレイクダンス。そして、胴を90度ほど捻りながら空中で回転スピンする。最後に見事に右手だけで地面に着地、は流石に難しかったようだ。
右手の骨が丸ごと逝った。
死霊は少し恥ずかしかったようで、左手に銃を作りながら、あたりを見回した。誰もいないのを確認すると、少し肩を落とし、よろよろと森の北西へ向かっていった。
⭐︎
いたいわー……。
私は今森を歩いている。今日も森林は絶不調。もう2度と見たくないような色で森を彩っている。しかし、私はそんな気持ち悪い色に心を痛めたわけではない。実は、私が朝軽い準備運動をしていたらいきなり右手の骨が折れたのだ。
いや、ほんとに酷い。私はラジオ体操の先生もニッコリな素晴らしい体操をしただけなのに。そもそもなんで準備運動で骨折るの?怪我しないようにするんでしょ?意味ないじゃん……
そう、私は朝、骨を折ってしまったので肉体変形を使ってから今森を散策している。どうやら肉体変形は魔力を使わない代わりに体力を使うようで、HPは減らないが、疲労が溜まる。
ヒロ⚪︎カの個性みたいなものだろうか?ほら、エンデヴァ⚪︎のヘルフレイムとかさ。うぅん、あの世界だと私の個性はゴミ個性に分類されるかな……?いやでもある意味巨大化とかそういうもん……?うん、それならいける。やった、ヒーローなれるわ私。
さて、そんな保身第一の外道が何いいってんだと言われそうな話題は放っといて。え?お前ヴィランだろって?ははは、何をいうんだ。こんなに健全な心を持っているというのに、ははははは。ちょっと表でろ。
ともかく、私は現在森の北西を探索している。昨日の南東では痛い目見たからね。素直に逆の方向行くことにしたのだよ。そんな北西はどうやらお猿さんが多いようなのだ。先程からキャッキャっとこちらを指さして物珍しさを全面に出している。興奮しすぎて石を投げてきた。一体なんなんだよ、この森。
「………」
ここの生物たちは好意を表しながら攻撃しないといけないのか?いや、あの白虎は例外か。いや、でもあの私が消えた時に見せた首をかしげる仕草はなんとも……っと。
お猿さんはどうやら同胞を呼んできたようだ。どんどんお猿さんが増えていく。この中にお猿のジョージいたりしない……?
まぁ、いないか。仕方ないので右腕を銃に変換してどんどん打っていく。ガトリング砲とか作れればよかったんだけど、なんかそんな複雑なの作れないみたいでさ。いやピストルも十分複雑だろって。
「もしかしたら別の理由で作れないのかもしれないけどね。能力値とか、疲労度とか」
お猿さんがどんどん木の枝から落ちていく。うーん、大体一発で倒せるかな?なんか私の技術はすごく高いようでね。いやー、私どこでこんなん覚えたんだか。はっはっは。鼻が高いね。つい昨日へし折られたばっかだけど。
そんなことを考えるうちにみるみる猿の数が減って、骸が増えていく。流石に猿も分が悪いと感じたのだろう。変な奇声を上げながら帰宅して行った。ふむふむ、どうやらレベルも少し上がったね。
けど、今はそんなことを気にする場合じゃない。
「……なぁにこれ」
体が、縮んでいる。
そう、今の私の体は地面との近さを見る限り100センチ余りくらいしかない。なんてことだ、小学生の身長になってしまった。これは、なんでだ……?
「あ、いや待って……?」
銃弾ってどこからきてるんだ、そういえば。そこら辺に散らばった薬莢を見る。もしかして……
薬莢の一つに近づいて触ってみる。すると、薬莢はそのまま体に溶け込み、きえてった。そして私の体は若干大きくなった気がする。やはりか!
つまり、銃弾も肉体を変形して作っていたのだ。肉体を切り離していったら当然元の体積は小さくなる。だから、切り離した肉体を取り込んでいけばいい。私は嬉々として薬莢集めをした。
気づけば昼だった。




