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対策対策対策

⭐︎⭐︎⭐︎ 【延戦刀士】 オール・フォルタム






「これで……よし、と」



一仕事終えた私は少し息をついて、休憩しようと思いつく。見れば少しはあった森はほぼなくなり、代わりに人工の足場や障壁が並んでいる。立体機動や逃げ場などの戦闘に有利になるようなものをおいている。それに加えて罠なども設置したが……まぁ今はいいだろう。それのせいで私の体積も減っているが、まぁ必要経費だ。



前から少し気になっていたが、こも肉体変成の判定は、ちょっとわかりづらい。HPの判定は肉体を変成して一定時間切り離すと判定が消える。でも、変成した後の状態は保存されているから、罠として使用することはできるのである。おかげですごく戦術に幅が広がった。



「でもなぁ………これは後の2人に伝えるべきか」



そう、今私が用意している罠は、ぶっちゃけ白虎が予想通りの能力を持っているなら通じない。それを見越して用意してある方はもちろん伝えるつもりだけど、わざわざ使う意味がないものを伝える意味はあるのかなぁ、と。



「まぁでも情報はちゃんと共有しとかないとだよね」



……さて、それじゃぁあっちに連絡をするかな。あちらはそろそろだいぶレベルも上がってることでしょう。もしかしたら称号くらいは上がってるんじゃないかな?あぁ、それはそうと私の称号もレベルマックスなんだよなぁ。なのに進化しないっていうね。条件あるんだろうなぁ。



「えーと念話念話……」



ここまで結構時間かかったからかな。そんなすぐには繋がらないわね。あぁでも繋がるまでは自動だからすることないんだよねー。まぁ電話みたいなもんだし。



「……ん?え、ちょっとまってあれは……」



ーードォォオオン。



遠くの方から何か大きな音がした。振り返ってみたらそこには太陽から降り注ぐかのような白い光の柱が立っていた。



八つも。



「おいおいおいおい……!?あれって、もしかして……!!」



見たことがある。それの答えに辿り着く前に、繋がった念話から回答が齎される。



『オールさん!オールさん!緊急事態なーの!』



『あ、あいつ……白虎、動き出したっ!!』



「……やっぱりか、なに?白虎がなんかと戦ってんの?そんなら漁夫の利で腕の一本でも……」



『違うーの!!あいつ、()()()()()()()()()()()()ーの!!』



「……は?」



一瞬疑問符で安宅が埋め尽くされる。それは、ベフェマたちがまた白虎に見つかったということ?いやでも、あんだけ隠密能力に特化していて、しかも今度は白虎を見つけるっていう目的もない以上気配を見つけたら速攻で隠れるはず。じゃぁなんで?



『あいつ、あいつっ……こっちに気付いてないのに、明らかにこちらへ向かってきてる!!』



『あれ、ほぼ、確実、に、スキル、使っ、てる。ロックオン、されて、る、ぞ?』



「……は?」



それはそれは……まさかそれってさぁ……。



『これは、もう安全なレベル上げをする期間じゃないーの。これは、()()()()の時間なーの……』



「……っはぁぁぁあああ」



本当に、本当に。



「うまくいかないなぁ」



どうして、大事なことをやろうってしてる時に限ってこんな妨害が入ってくるのかなぁ。おかしいよね?これもう確実に何かしらの意図あるだろ。やっぱガチャの女神の意思入ってるな。邪神だ邪神。塩撒かないと。



『それで……オールさん、どうするーの?』



「決まってるさ。確実に相手の方が有利。見つかれば即死。ふぅー……。それでも、まだ準備は整ってない。このエリアから逃げればいいってわけでもない以上、やることは変わらない」



一つ息を挟んで、行動方針を決定する。



「続けるよ、レベル上げ。隠れながらも、確実に。恐れながらも、怯まずに。私たちは、逃げるわけにはいかないんだよ」



『……まぁ、オールさんならそういうと思ったーの』



『俺は、変わら、ず、従う』



なんだ、わかってるじゃん。そう思ったけど、口には出さない。それは、きっと信頼してくれてる証だから。だから、私はそれに見合う行動で示すのみ。



「よし!それじゃぁ行動開始!私の方は戦場構築完成したよ。その影響でちょっと弱体化してるけど、問題ないからレベル上げに私も参加する。ただ、固まると見つかった時がやばいから当初とは異なる単独行動で各自レベルをあげてほしい。いいかな?」



『ラージャなーの!』



『……り』



元気な声と最低限の了解の意。わかりやすい個性が表れていて笑ってしまう。



そう、結局いつも通りだ。危ない状況なんていつものこと。それを当然のことと受け入れはしないけど、やるしかないのだから進みはする。



「……じゃぁ、作戦開始!」







⭐︎ 【◼︎◼︎ ラプラス】 ラプラス総統領域 深度7 静謐の教会






「……えー。なんか思ったよりやばくね?」



暗い教会の中で、レヴィティはつぶやいた。彼女が見る仮装画面(ホログラム)には現在の「箱庭計画」、いや「蟲壺計画」の進行状況、環境情報などの情報が羅列されている。その一部を見て冷や汗を流しているレヴィティだが、少し思うことがあった。



「これぇ……あの時どっちにも転ぶようにしたのがまずったかなぁ?」



レヴィティは現在、思ったよりも計画の進行が早く、また生存者の視界や会話などから雲耀虎光……白虎の攻略が始まっていることを察していた。



「はぁー……なんでこんなうまくいかないことばっか……」



先日のとある似非少年にいいようにされたレヴィティ。未だそのことを引きづり、機嫌が斜めのまま彼女にとっては、これはそれと同じく想定外の問題であり、どうしたものかと頭を悩ませる要因であった。



彼女の主人の為にも、あの似非少年をぶちのめす為にもこの計画の成功は必須である。故に自分はどうするべきかと考えていたわけだが……。



「やぁ!今日もバカみたいに暗い雰囲気を纏ってるじゃないかこのバカ!ただでさえ君管轄のこの領域は薄暗いってのにこれ以上暗くしてどうする!このバカ⭐︎」



突如として教会の扉が開き、暗いドアの向こうから誰かが罵倒と共に現れた。



「……( ̄ー ̄)」



だがしかし、レヴィティはその声の主を知っている。何せいつもこの調子でありとあらゆる相手を罵倒し、相手を煽るこの存在は、レヴィティとは同僚に値する立場なのだから。それこそ、一瞬にして顔が歪むくらいには付き合いが長い。




「……ここ、勝手に入ってこないで欲しいんだけど?私の管轄だって知ってんじゃん」



「はっはっは!ダメと書かれてないなら入って生まれる問題などなし!暗黙の了解なんて従う方がバカだろうこのドアホさん!そもそも君が空気を読むなんてお利口な真似をするとは思えんなぁ?!」



「……ペッ」



思わず唾を吐いたレヴィティ。そこにどれほど相手を嫌悪しているかが窺える。しかし、彼女からすれば憎たらしいことにこの存在は有能なのである。それこそ色々なことを主人から任せられるレヴィティと同等か、あるいは、と考えられるほどに。



「……それで、天下の()()()()さんがなんのようですか?まさか遊びにきただけとか言わないですよねェ?」



「ふぅははは!!こまケェことはいいじゃないか!ちょっと話したいことがあるだけなのさぁ!」



暗い扉の向こうから現れたのは、つばの広い黒い帽子を被った紳士……に見える何か。陽気な言動をしているが、人型で、紳士服を着た彼の顔はそこだけがまるで別の何かかのように動かない。少々の口髭を生やした彼の口すらも、動いていない。



「……細かいことを気にしないのはあんただけだよ」



「それでさぁ!計画の方は順調なのかい!?もうこちらの準備は整った!あとは機を見て原彩に攻め入るだけなのだがぁ、君の計画が終わらないとこちらも準備を完全に終わらせたとは報告できないものでねぇ!」



ズカズカと話を聞かずに入ってきて、数ある席のうちの一つに座った強欲罪公にレヴィティは「人の話を聞け」、と言おうとする己の口を精一杯引き結び、文句を殺してからレヴィティは回答する。とても腹立つ存在だが、実際問題必要なことだから言い返せないのだ。



「……まぁ、ぼちぼちだよ。色々あるからすぐには終わらなさそう。でもこのままだと想定よりだいぶ早く終わるね。もうすぐ配置したボス(彼ら)も2人目が攻略されるから」



「はぁ!?早すぎるじゃぁないか!!何をやっているんだ、調整は本当にしているのかぁい?!」



「早く終わらせろと言ったのはお前だろ!!」という言葉を渾身の気力でねじ塞いだレヴィティ。意外と忍耐力がある。



「さっきと矛盾した回答はやめてよね。それに、今からその調整をするとこだよ。君がこなかったらもう終わってたかもね」



言外に「お前がきたから遅れてるんだよあんぽんたん」という意味を滲ませて皮肉を言ったレヴィティ。しかし、強欲罪公と呼ばれた彼は彼女の想像を超えていく。



「そうかそうか!!ならばミーが調整をしてあげよう!!!」



「……は??」



もはや「何言ってんだこいつ?」という顔を隠しもしないレヴィティの目の前で、当たり前のように仮装画面を開き、そのまま計画詳細へとアクセスする彼に、レヴィティは戦慄する。



「……えっちょっちょちょ、待ってよ!!なんであんたがあたしの計画にアクセスできるわけ!?部外者が関われるはずないじゃん!!」



「え?あなたそんなことも知らないんですか?ミーはこれでも多方面に関わっているので、ラプラス様からオムニ権限もらってるんですよ。あ、進行状況ってこれですねー、ほうほう、青龍とかいうラスボス除いた最高戦力がぶち殺されてるんですねー、んで次が白虎と。いやーコードネーム雑ですネ?あ、それじゃぁここをこうしてと」




空気を読まない発言を連発する強欲罪公をそっちのけに、レヴィティは驚愕する。なぜ、彼がオムニ権限(最高クラスのパス)を持っているのかと。それは、ラプラス総統領域、いや【◼︎◼︎ ラプラス】において最高権威の名前である。



それさえあれば、ラプラス内ではなんであろうとできる。今彼が行なっているように極秘情報にアクセスすることも、権限を得ていない計画の編集(エディット)もできてしまう。言うなればマスターキーである。そう、本来ならラプラス本人しか持っていないはずの権限である。なぜ、目の前の同僚が保持しているのか。



「……はぁー。これがこうなんですねぇ。うわっ、行動ロックだけで言ったらもう全員解放されてるじゃないですか、めっちゃ進むのはやいですねぇ。んまぁそんだけ優秀な奴いるんならこちらも確かにありがたいですけどぉ、全員分の可能性は保っておきたいんですよねぇ。一強とかダメでしょ、切磋琢磨しないとなのに。



「……な、なんで?なんであたしが持ってなくて、あんたが持ってんのさ」



「ん?あぁ、これ(オムニ権限)のこと?いやだから言ったじゃないですか。担当の違いですよ違い。……あぁ、あなた優劣とか考えるタチですか、めんどいですねぇ」



「……っ!」



空気を読まず心境をそのまま口にする彼に思わず言い返そうとした時、レヴィティには目もくれず作業を続ける強欲罪公は言い放つ。



「特化型と万能型。集中と分散。あなたとミーの違いはそんなもんです。出力の違いはさほどないでしょう。それなのに形の見えるもの(権限の有無)で優劣を決めようだなんて、はぁあああ、頭が足りてませんね。海藻類食べた方がいいですよ?あ、そう言えば魚を頭から食べると頭良くなるらしいですヨ?どっかで聞きました」



「……」



立て続けに言われた言葉に、言い返そうとしていた言葉を言えず、されど口を閉じることもできずにただパクパクと口を動かすだけのレヴィティ。それはただ無神経な言動しか行っていない彼から出た言葉が、彼の人物像とあまりにもかけ離れていたせいか。いずれにせよ、レヴィティは硬直し、その間に強欲罪公は作業を完遂させてしまった。



「はい出来ましたよ。白虎の行動ルーチンは変化させときました。これで行動ロック解除してる相手により苛烈に攻撃するようになるでしょう。というか彼の応用技使えば大体の位置バレるから、しばらくは行動妨害になりそうですねぇ。その間に他のプレイヤーたちが強くなってくれるといいんですガ。……なんつー顔してんです?」



「……なん、なのさ。あんたは」



理解できないと言った顔のレヴィティが無意識なのかポロリと零した言葉に、いつも通りのヘラヘラした雰囲気で強欲罪公は返答する。



「おやぁ?もしやミーの存在が記憶から消えましたかぁ?悲しいですねぇー、ミーはただの()()()なのに」



やれやれと首を振る強欲罪公が仕事人。彼女からすれば常の行動とは全く一致しない彼だが、今の言動、処理の速さを見せられた後では、否定することができなかった。



そう、仕事人。彼はそう彼自身を自認しているし、実際に彼を深く知るものはそういうだろう。表面上の彼は、一見強欲の名にふさわしいように見えて、その実本質はもっと別の形での強欲なのだから。



「さぁて、あなた(同僚)のメンタルケアはミーの管轄外でース。そういうのは色欲にでも任せときなさーい。あれ?色欲は死んだんだっけ?まぁいっかぁー。心配だった計画の問題調整は案の定でしたし、ひとまずの対策もできてハッピーですねー。んじゃぁ、あなたはあなたの得意なものをやってくださいねー。それではー」



急に入ってきて、急に自分の計画を横から調整して、そのまま帰って行った。そんなふうにメチャクチャにされたレヴィティはもうどうすればいいかわからなかった。しかし、それでも思うところはある。



「……しっかり対策立てられてるの腹立つなぁ」



ふと画面を見てみれば、現在存在する計画における乱数。とある三つの存在についてマークしてそうラベルされているそれに対して、対策としてボスである白虎をどう動かすか、それによって起こり得る更なる変数をどうねじ伏せるかがご丁寧に記されている。しかも、しっかりと書かれたことが計画に追加されている。



「……はぁ」



今のレヴィティはご機嫌斜めが更に加速してご機嫌直角である。一周回って笑いそうである。しかし、苛立ちにも似た気持ちは、しかし攻撃的な気分へと移らない。それは、なんだかんだでフォローをしてくれたからか。



「……いやでも今度会った時は殴ろう。勝手に計画変更するなら許可取るべきでしょ」



腹立たしげに、どかっと仮にも女子にあるまじき座り方をしたレヴィティが椅子の硬さに悶絶するまで後二秒。














「ふぃー。なんとかフォローできましたかねー。いやー、みんなのバランス役は辛いですよー、まぁラプラス様に適任と言われるだけあって、なんだかんだでできてしまうのが恐ろしいことですネ」



「さて……これで計画の方はよし、と。ベルフェア(怠惰罪公)がいるから万が一の特記戦力の対応は可能。いや、交渉成立してよかったー。あの人いなかったら大分非常時の動きが厳しくなってたところですヨ。そしてゼブネア(暴食罪公)がいるから軍としての戦力もOK。こちらも一般兵はもういないも同然ですからねー」



「そして計画が成功すればある程度の大戦力を作ることはできるはズ。戦闘経験は今の時代は持ってる人少ないですからね、きっと役に立つでしょう。あぁでも騙せなくて強制的に飼い慣らしたらそれも意味ないかな?んー……魂系統の術はサンプルが少ないですからネ。過去の記録だと大丈夫そうですが……まぁ、信じるしかないですね」



「……相手は原彩。向こうにはラスト・リゾートが二体もいる。一対一では勝てない以上、各個撃破が好ましいですが……難しいでしょうね。しかしこれを乗り切れば敵対勢力は完全に潰えたも同然でしょう。そうすれば、ラプラス様が……」



「最後の敵に相応しい難敵ですネ、対策を考えるのも一苦労でス。ですが……イラ(憤怒罪公)アデウス(色欲罪公)を殺したんだ。それなりの記録は残ってます。ふぅはははは、なんとかして見せますよ、ラプラス様。ですので……おっと、これは誰もいないところで言うべきですネ、まぁここもほぼ確実に人がいない場所なんですけど!ふぅははははは!」






誰もいない空間で怪人が笑う。だがそれを咎めるものはいない。なぜならここはオムニ権限を持つ存在しか入れない場所。



ーーラプラス総統領域深度10 魔星機関なのだから。



ここには誰も来れない。今現在最大勢力となっているこの多次元世界(マルチバース)での覇者、ラプラス。その最高位に位置するラプラス本人と、唯一最高クラスの権限を与えられた強欲を冠する罪の公をのぞいて。



もう一度言おう。ここは魔星機関。あらゆる魔の根源である。

( ):はい

(裏):はいじゃないが。

( ):比較的平和回と見せかけて重要回です。

(裏):平和回がそもそもないんだよ。

( ):え?毎日平和じゃないですか。

(裏):……(ダメだこりゃ)

Tips:罪公

( ):と言うわけで少々強引でしたが、罪公全員揃いましたね。ルシエルとレヴィティの担当罪公もわかっているとは思いますが、今は一応秘密で。

◼︎◼︎罪公ルシエル:ボロ騎士。とある似非少年と腐れ縁。嫌いではあるが、殺すほどでもない。作中最高クラスの防御能力を誇る。

◼︎◼︎罪公レヴィティ:ラプラス陣営で他の奴らのせいでよく不遇な扱いを受ける。しかし戦闘力はお墨付き。誰のって?彼女の主人のです。ジャイアントキリングを体現している。

強欲罪公◼︎◼︎◼︎:7罪公の中でも一番ラプラスに近い。この場合の近いというのは戦闘力という意味ではなく……。色々知ってる人。後何やかんやで苦労人。

色欲罪公アデウス:ヒーラー。過去に既に死亡。南無。

憤怒罪公イラ:アタッカー。過去に既に死亡。南無。

暴食罪公ゼブネア:個人としての戦力は7罪公最下位。しかし、対多数、いや、指揮と雑兵補充は最高クラス。

怠惰罪公ベルフェア:自分でまともに動くことがない。全て能力頼り。後人頼り。でも万が一には心強い。だって個人戦闘力最高だから。

Tips:魔星機関

この歪んだ世界の根源。

( )……。本人に悪気はないのにね。

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