表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/79

岩砕き

(疲労):……難産、だった……(瀕死)

(裏):おうキリキリ働け。

(瀕死):そんなぁ……ガクっ

⭐︎⭐︎⭐︎ 【延戦刀士】 オール・フォルタム



心に湧き上がる少しの楽しさは抑え込む。闘争とは遊びなどではない。生存競争を見くびったものは即座に淘汰される。間近で死を見て、目の前の敵に死を押し付けてきたからこそ私は感情に身を任せない。



分析をすることで私はもっと強くなれる。生き残りやすくなる。それは喜ばしいことであり、続けるべきことである。だとしても、喜んで動きが鈍るのならば、平静を保つ方が今はいいはずだ。



……ふぅ。さて、状況を整理しよう。目の前にはまだ万全な敵が一体、倒れて少しの行動不能状態になっている猿が二体。完全とはいかなくても足の関節に打撃を与えてしばらく行動に影響があるだろう敵が一体。そう、私は相手に致命打をこのままでは与えられない。わかっていたことだ。そして対策も希望が見えてきている。



では、その対策はどこまで進んでいるか。結論としては後一歩といったところだね。『己掌転決』は思った以上に、かつ劇的に私にアイデアをくれた。



……今までの私は魂を表面的にしか変化させられなくて、その全体像とでもいうべきものを理解できていなかった。わかりづらい例かもしれないが、今までの私は大福の表面だけを捏ねていて、中身がどういった成分でできているのかをわかっていなかった。え?わかりづらい?だからそういってんじゃん……。



とにかくだ、こうしてスキルを使ったことで私は魂の具体的な成分を、少しづつだけど理解し始めることができるようになった。例えば、私が『己掌転決』を使って二つの数値を入れ替えた時、魂の根本的な成分、とでもいうべきものが変わっているのがわかる。それこそ、あんこの大福がクリームの大福に変わるように。



え?大福を例に出すな?なんでよいいじゃん大福。食べたら大きな福がやってくるんだよ?知らんけど。まぁ、それは置いといて、だ。そんなんだから、今の私には見えている。岩猿たちの、魂のどこを崩せばいいのか。これは、物理的にいっているわけじゃない。ここで、私が今攻めあぐねている理由であるあいつらのVITは関係ない。



まぁ、簡単に言えば、魂関連の攻撃技能があれば、耐久力関係なく相手をお陀仏できる。だって、私にはあいつらの魂の核が見えているのだから。さながら苺大福の苺といったところだな、あれほど比率として大きくはないけど。



あぁ、そう言えばいってなかったね。勘のいいガキ諸君であらせられる皆様にはもうお分かりだと思うが、なんか私相手の魂が見えるようになっている。さっき獲得した『観魂』ってスキルが影響してるらしい。やっぱりあれでよかったみたいだね、おかげさまであとは残ってる技能を使って魂を直接攻撃するスキルを会得すればいい。まぁ、正直いうほど簡単じゃないだろうし、さっきのもまぐれみたいなものだろうけど。運も力の内だからね。



「ほぉぅい!!」



むっ、万全な状態の変態が飛びかかってきた。またさっきと同じ普通の振り下ろし攻撃かと思ったけど、どうやら違ったみたい。私の右腕を狙うと見せて、そのまま私の前の地面をちょっとしたクレーターができるくらいの力で粉砕した。



「ほぉー」


「ほ、ぐ、が」


「ふぅは」



残ってる三馬鹿も似たような感じで地面に手を……まさか!



「「「「ほおおおおおお!!!」」」」




こっこいつ!流石に副称号の【指揮官】は伊達ではないか!!ちっ、地面を砕いたってことは四体全部の力を使った全力攻撃ってこと!!そしてそれは地面から出る可能性のものが非常に高……い?




「は、はぁ!?まじかよ、一丁前に洗練されたフェイク出してるんとちゃうぞ!?」



やばいやばいやばい!!これは、詰む可能性がある!!た、退避ーー!



私が下……ではなく、()を見上げた先、あるのはこちらへ向かって一直線に落ちてくる巨大な土のドーム。あれが降ってきて、私がもしあれの中に閉じ込められたなら。あいつらが身に纏っている岩の硬さと同等の硬度をあのドームという名の檻が有しているのならば。



「私は、打開ができない……!」



っ!間に合え……!



次の瞬間、轟音と共に岩の天蓋が着地した。






⭐︎






『岩蓋』。技能レベルに応じた長さの直径を持つ岩のドームを指定した場所に降らせる。硬度は使用者のVITに依存する。この特性を有し、高い初見殺しの性能を持ったこの技能は、岩を身に纏い、たった今また1人を()()()()()猿にとっては、高いシナジーを誇る必殺の技能であった。



彼らは、最近にしては久しく苦戦させられたと息をつく。彼らは、この箱庭において五つに分けられるエリア……海と諸島の浅食千島、溶岩と火山の溶怪山脈、虹と森林の極彩虹林、異次元と迷宮の青の龍宮、石と平面の死間回畳の内、溶怪山脈から()()()()()()



彼らは、今でも思い出す。暑く自然にある液体など溶岩しか無いような土地で、あまりにも異質な()()()()()()のことを。彼らは、あの虎に対し無力であった。『だいだらぼっち』を使い己の自慢の耐久力を底上げしても、そんなのお構いなしに関節から彼らを侵蝕され、初見殺しの『岩蓋』ですら、当然のように捕らえた先から抜け出してきてしまった。



彼らは、その時彼らのうちの1人を殿……つまりは人柱にして逃げ出してきた。彼らは仲間を後ろに逃すことでVITMND共に増大させる『ガーディアン・ハート』という技能を持っていた。



だが、彼らは知っている。おそらく、殿になった猿とはもう2度と会うことはないだろうと。だって、彼らと相対したその虎は、いまだ余裕を持ったまま、残った猿が纏っていた関節、その隙間から残った猿に攻撃を仕掛けるところを逃げた猿たちは見ていたから。



とにかく、こうして猿たちは一つの犠牲を持って逃げ延び、火山のエリアから森林のエリアへと到達した。



そこでは彼らは、最強だった。皮肉なことだ。仲間を見捨ててまで逃げ延びた敗者の彼らは、森の生物からすればこの上なく強い存在だったのだ。



それでも、猿たちにとって、そこは居心地が良かった。命の危険を感じない場所は、彼らがつい先日まで敗者だったという事実から目を背けさせ、自由に振る舞うことを誰に許可されたわけでもないのに許されていた。そう、彼らは無意識に感じていた。



そんな彼らは、今日、この時を持ってそのツケを払うことになる。敗北を直視せず、そこから何もかわろとしなかった時点で、彼らは結局敗北者のままで、誰かに潰されることが確定していたのだ。






⭐︎






岩猿たちが作り出した岩の蓋。その中では。オールが、右手だけを外に残して暗い蓋の中に取り残されていた。だが、不思議なことにオールはぴくりとも動こうとしない。まるで()()()()()かのように、動かない。



だが。代わりというべきかなんというか、蓋の外。そこでは、右手が、本体とのつながりをたたれているにも関わらず、ぴくぴくと動き……変成を始めた。







⭐︎






最初に異変に気づいたのは、関節がオールによって、鈍くしか動かなくなっていた猿であった。彼はなんだか、自分の意識と肉体の感覚とのつながりがだんだん切り取られ、更には意識までもが薄くなっていくような気がして……。



「ほ、ぁ?」



そのままドサリと倒れ伏した。それまでふらりふらりとし出したその猿を相変わらずの間抜け顔で見ていたから他の猿たちは、急に倒れた猿に慌てて駆け寄る。べしべしと倒れた猿を叩いていた他の猿たちは、次の瞬間倒れた猿が身に纏っていた岩が消え去ったことで驚愕する。



だって、自ら解除するでもない限り、猿が岩を剥がすのは、死んだ時しかあり得ないから。思わず、他の猿たちは一歩後退り……次の瞬間、何かを思い出したかのように蓋を振り返った。当然そこには岩の塊しかありはしない。強いて言えば、岩蓋が降ってきた時に絶たれたオールの片手が消えていたが……この時の猿には、気づけなかった。



そして、次の瞬間には、別の猿が目眩がしたかのようにふらりとする。それを見た残りの猿は、もう迷わない。



「ほ、ほぁっ!」



「ほ、ほっ!」



二匹が目線を交わし、同時に『岩蓋』を解除する。しかし、彼ら二匹が解除しようと、この技能は四匹全員が解除しなければ消えはしない。今、一匹はすでに死に、今またもう一匹が死のうとしている。きっと、今瀕死の彼には他の猿の言葉は聞こえないだろう。だから、彼らは迷わない。



「ほ、ほぁあああああああああ!!?!!」



岩を纏った貫手が二つ、倒れかけている猿に突き刺さる。絶叫をあげた猿は。そのまま息絶えた。そして、同時に全員が『岩蓋』の技能を解除したが故に、岩の天蓋は消え去り……中が露わになる。



「「ほぉっふわああああああ!!!」」



岩で顔を覆っていてもわかる。それほどまでに露骨に恐怖していた二匹は恐怖にもつれながらも必死になって中にいたオールの元に向かい……愕然とする。なぜなら、オールはぴくりとも動いておらず……その様はまさに死んでいるようだったから。



「ほっ、ほ、ぁ……?」



一匹が言葉にならない疑問と焦燥の鳴き声を発する。元凶だと思っていた存在が、なぜ死んでいるのかわからない。いやそもそも、なぜ閉じ込めただけなのに死んでいるのかわからない。わからなくて、一歩後ずさった一匹は後ろに転がっている猿の一匹に躓き、転んで……そのままもう起き上がれなくなった。



「ほっほぁあああああああああ!!!??」



最後に残った猿は最早何が何だかわからなかった。心霊現象のように、勝手にどんどん死んでいくのだ。もう、猿は冷静になどなれない。急で揺らぐ視界の中、視界の端をコソコソ動く小さな何かに気づけない。



「とにかく逃げよう」、そのような意味を言葉にすればなるだろう思考で、猿はとにかく遠くに走り去ろうとする。しかし、十秒ほど走ったところで……自分の根本から破壊されるような不快感と、五感の情報、全身の神経の情報をうまく処理できなくなり、倒れた。そしてそのまま、もう動くことは無くなった。








⭐︎⭐︎⭐︎ 【延戦刀士】 オール・フォルタム







『条件を満たしました。レベル67へと上昇しました。』



「ふっふっふっふ……」



いやぁ、これはこれは……。



「ふふふ、ふははははは……!」



こんなにうまくいっちゃったならさぁ……!!



「ふぅっはははははああ!!」



笑うしかないよねぇ!?あーっはっはっはー!!



私は今有頂天だ。あんだけ腹たった猿共を恐怖体験させた上で冥土に送り込んでやれたんだから。そう、あのお猿さん変死事件の犯人はまさに私なのである!いや他に誰がいるんだよって話だけどさぁ……いや、ベフェマがいるけど、彼女は『強制同調』あいつらになぜか使えなかったっぽいしねぇ……。援護は結局なかったし。まぁ十中八九そうなるとは思ってたけど。



まぁ、とにかくだ。私は()()()()()()()()()考える。これ、強くね?と。いや、もちろんこれが使い勝手の悪い技能とはわかっている。あぁ、今言っているのは私の状態のことじゃない。これはだって単純な肉体変成だしね。まぁ、これも普通のとは違うけど。



私がさっきやったことは簡単。肉体変成で外にあった手に視界を追加。手の形を整えて、自律歩行を可能とした上で……私の魂を一時的に譲渡した。え?どういうことだって?まぁ説明するからちょっと待ってよ。




まず、この魂の譲渡ってのはさっきできるようになったばっかりだ。当然だけどね。これができるようになったのは、『招魂』を使った。少し回想を入れたほうが早いかなー。






⬜︎






……暗い視界の中で、私は失敗を悟った。岩の蓋……試しに殴ってみるも案の定硬すぎてヒビすら入らない。つまり私にはもう打つ手がないってことだ。この暗い半円の中でしか動けないのなら、どうしようもないでしょう。



だから、ひとまず今できることをやろうと思った。あいつらだって体勢を整えたらこの蓋を解除するはずだからね、今は魂を観測だけできる状態だからそこに干渉できるようにしないといけないのだ。



そこで目につけたのはこちら『招魂』。実を言うとこのスキルの効果自体は青龍を倒した時に感じてるのだ。倒した時に感覚でなんだけど、どう言うスキルか把握できた。まぁ青龍倒した時には気失ってたんだけどね。



そうだねぇ、このスキルは生物を倒した時に通常得られる魂の一部を経験値として得るはずが、その全部を得るって形の結構ヤババイスキル。感覚でレベルアップが二倍早くなった気がするありがたいスキルなんだけど……ここで大事なのは魂を全部接収するって言う方。



あの時は特に気にしてなかったけど、今ならもしかしたら。魂の動き方とか、得られるものがあるかはわからないけどやっておいて損はない。まぁ、問題はそうじゃなくて。



「どうやって発動すればいいんだろう……」



そう、どうやればいいのかわからないのだ。いや、十中八九生物を倒さないといけないのはわかるけど、こんな状況でここに倒せる生物がいるとでも?



「ヂュアッ」



スパンッ!



……いたよ、なんでこんなタイムリーに出てくるかなぁ。まぁ、逃す道理もないわけで、天国行きロケットに強制参加させておいたが。いや地獄か?知らんけど。



まぁ、一瞬で葬られたネズミさんのご冥福はともかく、今気にするべきは別のこと。



『条件を満たしました。技能『招魂』レベルが6へ上昇しました。』

『条件を満たしました。技能『招魂』に追加機能が実装されました。』




……できちゃうんだよなぁ。あれ?これ私って才能あるくない?もしかして私ってすごかった?……まぁ、どうせそんなことないし無駄なこと考えるのはよそう。悲しくなる。



とにかく、だ。一回だったし、あんまりよくはわからないけど、少なくともスキルレベルが上がるくらいには進捗があったってことだ。そんな機能が増えた『招魂』は、どうやら『己掌転決』がゲットした魂の内訳を見る機能を使った時に見えた魂の核?みたいなものがあって、その場所に触れることで相手の核を吸収する……みたいなものらしい。



正直、今できたことがそんな感じのものだったから、今獲得できたスキルも似たような内容なのは道理なんだけど……。なんか本当に説明しづらいな。やっぱり魂関連って地球じゃ縁ないしなぁ……。



「……さて」



まぁ、できたことに関しては今は深くは考えまい。それより重要なことがあるんだからね。





⬜︎







……と、言うわけであっさりとあんだけ上がらなかった『招魂』レベル上げれたわけなんだけど……ここまで都合よくできると何か作為的なものを感じるよね。いや、もしかしたらあの金髪女性も私がもうできる段階になったから言ってきたってことなのかな?まぁわかんないや、情報が足りないね。



あぁ、そうそう。それでちょうどいい機能が増えたわけで……ギリギリ外に出ていた私の右手に魂を移動させたわけだ。一見『招魂』で今増えた機能って相手の魂を吸うだけの機能にも見えるんだけど、実を言うとこれが違う使い方もできるんだ。



それが今言ったような切り離した自分の部位への魂の移動。どうやら自分の魂を一箇所にまとめて動かすのも抽出判定になるっぽくてね。使えると言うわけでやらせてもらったわけだ。え?それでなんの利点があるのかって?それはね……ステータスだよ。



今までの肉体変成だけじゃ、中身が伴わないガワだけのステータスだったのが、今は遠隔でも本来のステータス全部を発揮して操作できると言うわけなのだ。地味なようですごい。



それで、手を動かせるようになった後は簡単。油断しまくってるお猿さんたちに忍び寄り、魂の核に触れて『抽魂』を順に発動させていったと言うわけだね。



「……うーん、日差しが眩しいねー」



まぁそんな長くはないとは言え暗いところから一気に明るいところに出たんだしね、そりゃそうなる。



「あ、本体を再稼働させないとね」



と言うわけでさっきの要領と同じく魂は肉体の大部分である胴体の方に帰還。肉体変成でおててもくっつけたからこれで五体満足というわけだ。手を切り離されたりしてるからその分のHPは減っているけど、そこは『自動回復』がなんとかしてくれるでしょう。



『……何やったかはわからないけどお疲れ様なーの。役に立てなくてごめんなさいなーの』



「いやいやー、隠れてろ言ったのは私だしねー」



うん、さすがは隠密に適性があるベフェマだね。私も声かけられるまでわからんかった。表情は取り繕ってるけど結構ビビったのはご愛嬌。



「いやー、苛立つ奴らもぶっ飛ばして成長もできたので気分がいいね!あっはっは」



『……わたしは猿にいい思い出ないけど、なーの』



あ、そっか。ベフェマは猩々の方から逃げてきて私と合流したんだもんね。まぁもう気にすることはないでしょう。



「なんせ私がいるからね」



『脈絡が不明すぎるーの』



ってことで、今度こそ帰還!ただいま、私のアパ⚪︎テル!

( ):えー、ここまででオールは魂関連の技能をガンガン成長させているわけですが。

( ):実を言うとこれにはちゃんと理由があるのです。

(裏):理由?才能じゃなくてか?

( ):才能とは違いますね。オールは今まで肉体変成で魂を上辺だけとは言え長く操ってきました。

( ):ですから、もう魂の技術を発展させるための素養は十分あったんですね。魂なんて形だけでも最初から把握してるんだし。それをしっかり察知してちょうどいい頃合いに連絡してくる謎の金髪女性。

(裏):……誰なんだろうね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ