表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/27

No.7絶望とは






あのーすみません、ここって今どの辺りなんですかね……?あいや、森林の中で、って意味です。いや、なにぶん家が森林内にある者で……ははは。



私は今木々の皆なさんに道案内をしてもらおうとしてもらっていた。この森に一番多くすんでるであろう樹木さんならきっと知ってるはず。



しかし、樹木さんAは情弱なのを知られたくないようだ。無言である。仕方ないので愛想笑いを浮かべながら隣の樹木さんに聞いた。樹木さんBはりんごを食べて欲しいらしい。青リンゴどころか紫色のりんごを投げてきた。



なんかすごい紫の煙が出ているので私は首だけ動かしてりんごを回避する。後ろでベチャって音とシューって音が出た。紫りんごはきっと刺激的な味を与えてくれるに違いない。刺激的すぎて触れたものを溶かしてしまっている。



私はもう少し体に優しいりんごが欲しかったので紫りんごだけ撃ち抜いておいた。毒樹木もとい樹木さんBは私のマナーの悪さに腹を立てたようだ。青と赤色以外のりんごをガトリングしてきた。新鮮なのかりんごたちは輝いている。輝きすぎて燃え始めていた。流石に動かずは避けられなかったので避ける。



……うん、おかしいのはわかってた。なんかこの辺りの木、動いてね?って。この時点でトレントとかそういう類のを考えた。だから挑発まがいの行動をさっきからしてたんだけど……困った。



迷った発言してたら本当に迷ってしまった。おのれ情弱トレントめ。




流石にもう気づかれたとわかったのだろう。木々に顔が浮かび上がってくる。




『( ^ω^ )』




顔文字だった。すかさず|( ̄3 ̄)|の顔したトレントが紫レモンをかっ飛ばしてくる。針葉樹のくせになんでレモン実ってんの?とか思ったらΣ('◉⌓◉’)の顔をした情弱トレントが崩れ落ちた。垂直の幹をこう、グインと。彼はレモンが針葉樹には実らないと知らなかったようだ。なぜか実体化したガーン!の擬音語を飛ばしてきた。



「……」



直撃した。何も起こらなかった。肉体変形を無駄に洗練された技術を使い( ・∇・)の顔になった私はそのまま情弱トレントを撃ち抜く。情弱トレントは虚弱だったのでワンパンされた。同時に周りの顔文字が一斉にorzになる。もはや顔文字でですらない。



トレントたちは情弱トレントを土葬し始めた。ほっぽり出された私は紫りんごと毒レモンの樹木だけ撃ち抜いて帰ることにした。いや、なんというか哀れだった。ワンパンでやられたトレントもだし、それに群がって(T ^ T)になるトレント達も。倒さないと強くはなれないが、手負いの獣は恐ろしいときく。



たとえそれが精神的にだとしても、私は安全策を取る。だって怖いんだもーん。面倒なわけじゃアリマセーン。




ーーー

種族:豊情樹   Lv12/40


称号: STC:


状態:通常  ランク:D


HP:56 MP:10


STR:10 VIT:81 AGI:1 INT:28 MND:79  DEX:35


技能『硬化Lv3』『果実散弾Lv4』『物理耐性Lv2』『風耐性Lv1』『風魔法Lv1』

ーーー



表情豊かな木ってか……なんというか、殺意が消えちゃうなぁ……うん、こいつらは放っといていいか。



ついに声が漏れ始めたトレント達をおいて私は元来た方へ帰り始めた。










ーーだから失敗したのだろう。



きっと、今日はトレント戦で失敗しなかったから油断していたのかもしれない。



最初に、強烈な気配がした。



気配というよりそれはもう覇気だった。



私は瞬時に見えないように近くの木に隠れる。幸い隠れる時に使った木はトレントじゃなかったようで無事隠れることができた。



だが、これで終わりではなかった。それはこちらへ向かってきたのだ。ゆっくりと、着実に。圧力が少しづつ強まっていくような、そんな感覚。前世は愚か、この箱庭に転生してきた時だって感じなかった、明確な感情が鐘を鳴らす。




『条件を満たしました。技能『気配感知』を獲得しました。』



何かスキルを得たようだ。だが、それどころじゃない。そんな暇など私に与えられていない。



肉体変形を駆使してできるだけ小さく、眼球を作成する。それを少しだけ浮かせて音を立てないようにしながら木の向こう側を確認する。



そこにいたのは、やはり、王だった。間違いなくこの森林に君臨する覇王。正真正銘の食物連鎖の頂点。




堂々とした足取り。黒い縞が入った白の体毛には汚れひとつない。猫科特有の無音の足取りは獲物の後ろに降り立っても気づかれないように気配を消しているのだろう。



だが、それでも消えない気配。漫画ものでしかないと思っていた圧倒的なオーラ。



身に纏った覇気は周囲を圧倒している。いや、あれすらもあれからすればハンデ、というものだろう。



瞬時に理解した。あれは間違いなく、ターゲットの1つ。私が地球へ、人間へと戻るための条件の一つ。



虎が吠える。巨大な声。重圧が数倍には膨れ上がっただろう。お陰で森が揺れたじゃないか。比喩ではない。揺れたんだよ、森という個体ではない、領域が。



後ろでメソメソしていたトレントたちがビクッとしてただの木に戻った。が、そんなものに虎は気を引かれない。悠然と歩み、虎は私のいる木の元までやってきた。



「………!?!」



動かなくてもわかる!なぜか虎はこちらへ向かってくる……!何で、だよっっ!なんでよりに、よって、ここなのさぁッ!



「………!……」



あぁくそっ。不味い、非常にまずい!だが、そんなことを思考する暇すらない。現実は、まさに非道だ。思考が空回りしかける。まだ、ここで諦観に覆われるわけにはいかないのに!



回せ、対処法を編み出せ。どうせリミッターなんてないんだ。限界以上なんて当たり前に回せるでしょう、私の脳は!?



私がもはや隠れられるだけのスペースは残っていない。今の私は完全に獲物。見つかれば……即死。



恐怖を覚える。こちらでも、あちらでも知ることのなかった感情。



この死んだはずの死霊の素体だったのであろう人間の微かな本能が一瞬で完全に呼び起こされ、危険を知らせる。鳴り響く鐘の如く、何度も、何度も。



あぁ、うるっさいなぁ!そんなことわかってるよ!今が死にかけの状態ってことくらいさぁ!?



死ぬかもしれない。否、八割方見つかるだろう。生命としての機能などとうに失ったはずの体に汗が流れる。冷たく背筋を伝い、這い寄る死を明確に知らせる。



死んでいるはずの鼓動が聞こえる。カウントダウンの如く胸を打ち鳴らす。ああ、私の顔は今どうしようもないほどに固く、強張っているだろう。全力で、限界を超えて思考する。



沸き立つ逃走本能を死ぬ気で抑える。持ち味を殺すわけにはいかない。私が持つ人間の思考でもって打開してやるよっ……。



だが、別に私は天才なわけではない。こうしている間にも覇気が近づいてくる。終わりが見える。




『条件を満たしました。技能『気配隠蔽』を獲得しました。』


『条件を満たしました。技能『気配感知』を獲得しました。』




ふと、頭をよぎった一つの技能。解釈を広げ、それを実行したのならば……もはや走馬灯に近い思考速度の中で、糸の如く、細く、それでいてきらりと光る希望の案。迷う暇などなかった。死神がいるのならば鎌を振り下ろしている最中だろう瞬間に、私は技能を行使した。



果たしてそれは運命の強靭な糸か、それとも脆く脆弱なただの糸だったのか。



虎がついに私が隠れていた木の裏側を見る。そして何もないそこに少しだけ違和感を覚えたのか、首を傾げ、……再び歩き出した。私は虎が消えるまで息を潜めていた。






Tips:白虎

白い虎。日本神話でも有名なあの白い虎。そんな地球でしか存在を認知されていない虎がなぜ最近発見されたばかりの世界である地球の神話生物がここにいるのだろうか?

(裏):……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ