No.67 拝啓、今尚淀み行く貴方へ 其の二十二
『条件を満たしました。技能『HP自動回復』レベルが4へと上昇しました。』
『条件を満たしました。技能『破壊耐性』レベルが6へと上昇しました。』
『条件を満たしました。技能『傷の祝福』レベルが2へと上昇しました。』
「か、は……」
瀕死の重傷。致命傷。多少回復速度があがろうが変わりはしない。一目見ればわかる。死ぬ。確実に死ぬ。終わりだ。もうどうしようもない。でも死にたくない。どうしたらいい?痛くないのに痛い。視界が回る。血、回ってる?あ、冷たい。
体から大事な何かが抜けていく。言うまでもなく私の血。はは、死霊なのに真っ当に出血してら。あぁ、笑いたくても笑えない。もう指一本動かせない。やっぱり欲張るべきじゃなかった?ベフェマの遺体は後でも探せるから逃げるべきだった?
「そ、ぁ、ぉ……!!」
いいえ、いいや。絶対に、確実に。そんなことはありえない……!私、ただ生き残るだけじゃダメなんだって!そう、考えたから、ここにいる!そして、絶対、この考えは間違ってない!!
「ぐ、ぅ」
でも、実際には今追い詰められてるのはマジ!っていうかもう死んでるも同然!2回も死を体験するなんて、絶対嫌だ!『分析』を起動、残ってるHPは……!ちっ、一桁!掠っても死ぬ!もうそこら辺に散らばった私の肉片はもう回収してもHP回復にはつながらない。自動回復も充分に動けるようになるまでには時間がかかる!
どうする……?時間経過と、距離が離れたからあちこちにある肉片はもはや私の一部としてはカウントされていない。つまり、その分体積が減った判定になって、今こうなっているってこと。うん、袋小路なのが理解できただけだね、クソッタレが!
『……終わった、か。短い間だったが、不思議な物だな。あれほど苛立たしかった貴様らを殺すのが、今では少し躊躇うほどだ。だが、必要なことだから。すまないな』
終わったような口してんじゃねぇぞ!もう残ってるのはこれだけしかない!レベルが低いから、うまくいくとは思えない。スキルの説明文からして変更できるのはほんの少しなだけのはず!それでも、もう藁に縋るような手段だとしても!
「やって、がぷっ、やる……!」
『さらばだ』
吐血してるけど時間はない、『己掌転決』発動!変えられるだけ、DEXへ!
もうこれで決着だと思ったのだろう。なんの躊躇いもなく、単純な軌道で振り下ろされた爪は、普段よりも緻密な動きで動かされた私の刀で流されるどころか、その爪を自分の胸に突き刺すことになった。
『!!……、罪悪感すら、生まれるな』
私ができたのはそこまでだった。『己掌転決』は既にある自分のステータス数値をスキルレベルに応じて一時的に変化できる。変化すると言っても、増やすのなら別のステータスの数値を減らして、別の数値に引っ張ってこなければいけない。そこまで使い勝手は良い物でもないのだから。
そう、今のこのスキルはレベル1。変えられるのも、少しだった。だから、結局一撃防ぐことしか叶わなかった。あーあ、なんで、こうなるのかなぁ……。
そして、今度こそその爪が、私の体に突き立てられる。そんな寸前で、何かが、カチリと、嵌ったような気がして。
「……ぁぁぁあああああああああああああ!!!」
『!悪足掻きを--!?』
終わらせない、終わりたくない。知らない何かが入ってくる。一部だけがすっぽりと抜けた、離されていた私の一部が繋がってくる。知っているけど、知らない技術が理解できる。どこで、どうなって、この結果に繋がったのかわからない、でも今はいい。全部置き去りにして。目の前の敵を。
--自分の命を脅かすモノを。
殺すだけ。
それが万を超える軍であろうと。
--それが自分を遥かに上回る龍であろうとも。
私の力に、
--自分の技術に、
「『叶う道理があるはずなし』」
『っ、何を言って、ッ!?』
動く。体が残り少ない命をこぼしながらも。
--動かす。叶う限りの最適解で。
故に、故に。これが一つの到達点。
「--、一切」
それは自分よりも遥かに強き生物を殺す手段。青龍の首を仮想空間とはいえ一度落としたその攻撃は、されど今は青龍の腕と胸元に中規模の傷を負わせるにとどまる。だが、しかし今私がやろうとしていることは別だ。
「--合切」
それは、押し寄せる大軍を滅す舞踏。一切とは別の対極として作られた技。それは相手からの攻撃をエネルギーに転用しつつ、様々な角度から終わらない連撃を叩き込む風水刀然のもう一つの到達点。私の目的は、一切を使った後にまた別の技として合切を使用する……なんて、そんな温いものじゃない。
一切、合切。合わせれば一つの四字熟語。一切という強大な一撃を相手からのエネルギーを用いて延々と続ける。そう、相手が死に絶えるまで、延々と。だから、だから、それだけでは表せない。私がかつて見せてもらった到達点と到達点の合わせ技。絶対に負けないで、相手が死ぬまで終わらせない。それが、
『っ、待っ--』
「--死滅劇」




