No.65 拝啓、今尚淀み行く貴方へ 其の二十
( ):まさか二十まで行くなんて……予想外だなぁ。
(裏):一個一個の字数少ないしそんなものだろ。
いない、いない。周りを見渡してみる。灰色のそれらしき影はない。あるのは瓦礫ばかりだ。何度も、何度も確認する。瓦礫をこじ開け、でこぼこになった走るのには絶対に向いていない廃墟を走破する。
っ……!いないじゃん、あんの緑色青龍まさか嘘ついたか?!でもここでそんなことしたって意味ないだろう!いや、ここであいつが嘘をついている可能性は低いはずだ。わざわざ展開していた強風を一時的とはいえ弱めているんだ。あいつの性格から見てもそんな意味不明な真似をするとは思えない。
「……っ、ふぅー」
天を仰いで、思わず悪態をつきたくなる衝動を抑える。そのついでに、目線で何がどうなっているのかを未だ空高くに滞空している青龍に問いかける。
『……いない?まさか、そんなことはないはずだぞ。今さっきまで我は目線で捉えておった。一瞬だぞ?我が貴様の方へ目を向けたのは』
「でもねーじゃん!座標ミスってんじゃねーのかよ!そっからもう一回探すことはできないわけ!?」
『そんなことは今やっておる。そもそも我と貴様は殺し合いの最中のはずだぞ……我だから付き合ってやってるのだ、感謝してほしいところだ……、むぅ。やはり、いない。先程まで確実にいたはずなのに……』
「はーつっかえ、ん“んっ!あんたのその変流剣?だかなんだか知らんけど、その展開してるそれはさ、範囲内のもの識別したりする効果ないの?よくあるじゃんほらー」
『待て、今使えないと言ったか?使えないと言ったのか!?こ、この状況で、圧倒的に有利である我にか!!?』
「どうなのー?」
『ぬっ……ぬぬぬ……今からでも貴様の遺体捜索の協力を放棄してやりたいところだが、決めたのは我だ。答えよう、そのような効果は存在しない。そんな効果がついているのは余程高性能な【神ど……いや、この話はいいか。とにかく、我はそんな能力は持ち合わせてはいない』
チっ、だめか。じゃあどうする?今こうしてベフェマの遺体を探しているのはもちろん弔ってやりたいからだし、それと同時に体力の回復も兼ねている。長く探すのは大事だが、これ以上意味もなく探してもきっといいことにはならないだろう。というか十中八九あっち側が焦れてまた真っ向勝負に挑んでくるに違いない。
そうなれば今度こそ私は負けるしかない。まだこの状況でのあいつに対する策だってたってないのに……!どうする、作戦を考えるためにも今はやはり時間稼ぎは必要。それなら、できれば相手の意表をつく手段として温存しておきたかった肉体変成のパターンを使うか?いや、でも……!
『……どうやらもう遺体を探す目処は立たないように思えるな。我の能力でもダメ、貴様の能力でもダメ……ならば、もうどうしようもないのではないか?潔く散った方があの世でベフェマと会った時の手土産になるだろう』
「そういう冥土の土産とか嫌いなんだよね……!そもそも、実質ここは私たちにとっちゃすでにあの世なんだよ。一回私たちはすでに死んでるからさぁ……」
『……ふむ。つまりこれは2度目の死になると。貴様がいた星のことは我は知らないが、すでに死んだことがあるという体験は珍しいな。それでもここまで足掻くというのは感心するべきか、意地汚いというべきか……』
「あんたにどう言われようと関係ないけどさぁ、私としてはこのまんまじゃ終われないわけ。しっかりベフェマは弔ってやりたい。それに死ぬ気だって毛頭ない。私はどっちも取るしかないんだよ」
『ほう、選ばないと?それは愚かだな。二兎を追うものは一兎も得られないのだぞ?』
ん?今違和感を感じたのは……あぁ。
「……あんた、なんでそのことわざ知ってんのさ。そりゃ地球のことわざなんだよ?」
……時間稼ぎ兼、必要な質問をしようか。
私は今まで、青龍とかは今でこそ生贄なんて処分になって私と戦っているけど、元々神だった彼らは、名前からしてもみんな地球由来の神とかそんなんだと思っていた。でも、今さっきの言葉からしておそらく作られたとか言っていたこの箱庭の世界は別として、他の天然の異世界とかがあるんだと解釈できる。
そして、彼ら青龍とその一派は地球という惑星など知らないらしい。さて、私は別の惑星と地球で全く同じ単語を使って、同じ意味を示すことわざがあるっていうのはちょっと考えづらいんだよねー?
『ム?今の言葉のことか?これはラプラスの共通言語だからな、我はその地球?の言語との関連性は知らんぞ?』
「……じゃあさ、君は世界情勢には詳しいの?まぁさ、簡単に言えば、地球って単語は君が情弱だから知らないだけってこと?」
『……なぜ質問を我はされているのだ。まぁ、答えてもいい気分だからな。我はこれでも最近までの世界全体の情勢には詳しい方だったと自負しておる。我が主人も立場上詳しくならざるを得なかったしな』
そうか。つまり、地球という存在はラプラス、正確にはその言語体系にはほぼ確実に関与していないのに、その言語は共通言語と同じと……。うん、きな臭いね?
私が考えているのはつまるところ、地球はそのラプラスなる国から惑星だろうそれとなんの関連性もない、なのに言語は同じというものだ。私自身、考えに飛躍があったりする気がするから他の人にはこの考えが分かりずらいかもしれない。が、私はなんとなくここは疑いを持つべきだと思っている。理由?ただの勘だよ。
そして、ここからもう一つ私は明確に疑問として浮上したものがある。
「ねぇ、冥王って知ってる?」
『それは称号のことか?いや、貴様が聞いているのはおそらく人物名、あるいは立場の名だな?我は全く知らないと言っておこう。というか、我から得られるものなどないだろう?何がしたいのだ……』
いやぁ、これが得るものがあるんだよねぇ……。あぁ、一応忘れてる、なーんていう諸君らのために説明してあげよう。
冥王とは、私たちがこんな箱庭に飛ばされる直接的原因を作ったへんt……いや、あの会話だけでそう判断するのは良くないな。私たちをこの箱庭に案内した変人だ。私たちを案内したことからして、おそらく「箱庭計画」なるものの結構高い地位についていると思う。
「冥王ってのはねぇ……この箱庭に関わっている奴の中でも特に偉い奴のことさ」
その言葉で、まぁ予測していたけど青龍の雰囲気が変わった。今まで、どこか優しさを感じさせていた青龍の雰囲気が一瞬で鋭いものへと変わる。
『ほう……それは、どんな奴だった?』
「うーん?なんか女性みたいな声してたなぁ、後軽薄でやべえ、わけではないけど変な人だった」
ここで引いては行けない。聞かないといけないこれは。表情筋は動かさないで余裕ぶって声を発する。まぁ察していたことだ。こいつがここにいる理由、そして共通言語ということからして勢力が高いラプラス。なんかしら、というかここにくることになった原因が彼女らなんだろう。
『……そう、か。知っている存在だな、そいつは。だが、そいつは余り気が利かないものであるが、悪い奴ではなかったな』
気が利かないかぁ……私の推察では彼女は最高責任者とかそこらだろう。あの計画を、上司からの命令でやっているとするならばあまりにも奔放すぎるし、計画のことを軽視し過ぎている。
つまり、この箱庭の設計も彼女が関与しているだろう。ならば日本語をあの泉……まぁその正体はモンスターだったわけだが、とにかくそんな私たちしか読めないような言語を、わざわざそんな性格の冥王ができるなんて思えない。
元々あの日本語を見た時に、こんな気遣いを神とかいう私のイメージでは自由な奴らがするとは思えなかった。それが違和感としてなっていたのだが、それが今の言葉でほぼ明確に疑惑としてなった。
さらに、日本語という地球由来の言語が、なぜラプラス側の存在に知られているのか。
疑問が溢れてくる。でも、ここでいつか知るべきなこととして心に留めるべきなのは、地球という存在は、ラプラスにとってなんなのか。これは、気になる。今はわからない。それでも、何か重要なことにつながる気がするこの疑問は、きっとその答えを否が応でも知ることになるのだろう。
だが、そのためにも。
「俄然、ここで死ぬわけには行かなくなったね……!」
『フフフ……!何か掴んだのか?我は余り頭が良くないのでな、わかることといえば、今貴様が我に対し再び挑もうとしていることのみ!此度こそ、貴様の命を、その掴んだものごと終わらせよう!』
再び風が吹き荒れ始める。考えてみれば、ベフェマの遺体を探すのはこいつを倒したあとでいい。といっても、ほぼ確実に今のまま挑めば死ぬ。だから、ここで切り札をきる。
ぶっちゃけ、私の切り札である全身粒子化はトドメをさせる状況で確実に息の根止めるために使うつもりだった、が、今使ったとてきっと大きな一撃を加えることはできるはず。状況を好転させるためにも、やるしかない。
正直言って、あちらもまだ使っていない札がある。だから、そのジョーカーを使われる前に終わらせなければ。狙うは一撃必殺だ。
『荒べ!我が至ったこの空よ!』
いつのまにかあちらは亡くなった爪を全快させていた。でも、それはこちらも同じ。どっちにしろあっちに地の利がある以上、こうして回復されるのは予想済みだった。だからこっちもせめて回復はできるよう時間稼ぎを施したのだ。
「ここまでは、予想通り……」
あえなく私は空へと飛ばされる。そして身動きができないのだから当然あちらからすれば格好の的。フェイクなしの直進する青龍を視界に収めながら、準備だけは進めていく。
『さぁ、これで終わりかぁ!?』
んなわけないでしょ。肉体変成発動。
『!?』
青龍が振りかぶって私に叩きつけた爪がそのまま空振りする。そして、当然勢いをつけて攻撃したんだから前へとつまづくわけだが。まぁここ空中だしつまづくってのはちょっと違うけど。
とにかく、ここで青龍が隙を晒したのは事実。だから、ここで一気に武器を作る!
今の私は非常に希薄だ。だから広範囲に存在するし、そこから粒子を集めて武器を作れる。つまるところだ。
『っ、どこから!?』
青龍の全天周囲に銃や刀が現れる。もちろん一つや二つなどではない。一つ一つ弾が一個しかないし、一度振ってしまえばそれで砕ける刀ばかりだ。だが、今はそれでいい。まだつぎはぎで残ってる青龍の鱗がないところへ、銃弾を、刀を差し込む!
『ぐ、ぅ…!ま、まさかここまできてまだ……!』
諦めるかよばーか!全部最良の結果で終わらせる!
やっぱり、初見殺しである私の切り札はその分威力が高い。多分今ので六割くらいまで回復していた青龍の体力が一気に二割程度まで削れたはずだ。え?いくらなんでもダメージ大きすぎないかって?わかってないね。私が出した銃や刀は私の体全部を使って、一回しか使えないという条件で作ったんだ。確かに数が多いから性能は下がってるかもだけど、それでも普段のより二倍程度は高い。
そんなものを全て弱点に当てたら、そりゃあそこそこの結果は出るでしょう。そして、こうして考えている暇もそんなにない。実際私が正面から与えられる結果なんて微々たるものだ。一割だって削れないでしょう。
「だから、弱ってるここが最初で最後の好機なんだよ!」
一瞬で肉体を戻す。思えば、この能力もレベルが上がって、スキルが統合されて早く変化するようになった。それのおかげで今、私はこいつが反応する前に有効打を叩き込めている。
『ご、が……』
よし、思った以上に削れてる……!これなら、案外余裕を持って--!?




