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No.58拝啓、今尚淀み行く貴方へ 其の十三

⭐︎⭐︎⭐︎ 【葬楽暗殺者】 ベフェマ






『ようこそ』



簡潔な言葉が扉を開けた瞬間に出迎える。目を向ければそこには先ほどまで対峙していた龍が佇んでいた。構造はさっきまでいた場所と同じか。



『本当なら今すぐ捻り潰したいところだが、この世界を有効化するためにも、説明してやろう。感謝しろ』


「急に拉致されてあなたは感謝するんだ。控えめに言って奇癖なのね?」


『っ……!こ、この世界は精神世界の一種だ。貴様も我も現実の肉体とは魂が遊離している』


『じゃあ、わたしの相方はどこなーの?』


『別の世界で対応している。この世界では貴様も我も能力は同じだ。違うのは意志の強さのみ。意志が相手に勝った時、この夢は現実に反映され、貴様らは死』


『じゃあメンタル豆腐の龍さんをフルボッコにすればいいのーね?』


『メ、メン……?!ま、まぁいい。これで貴様も我も攻撃が可能になったという訳だ。簡単に死んでくれるなよ?』


「煽りにまんまと乗るくらい沸点が低いと思考の程度も低いのねー』


「ッ、ガァアアア!」



直後、過剰なまでの多重落雷がベフェマの居る場所を埋め尽くした。








⭐︎⭐︎⭐︎ 【延戦刀士】 オール・フォルタム







説明が始まって早数分。私の体は現実ではないとはいえ、既にボロ雑巾のようにされていた。



『クハハハハハ!!!この程度の意志でこの我に勝てるとでも考えていたのかァ?!』



痛覚がある。現実では死んでいる痛みの警告が、ここでは随分と生き生きしているようだ。五感も、精神世界……詰まるところ夢なのだろうここにしては随分と鮮明だ。


お陰様で雷に穿たれ、風に裂かれ、その他諸々青龍が本懐とするであろう風と雷の能力が、現実世界における青龍の力を遥かに上回るだろう威力で私を刻んでいく。


全身が警鐘を鳴らしている。私の体が持たないと、対処をしろと吠えている。左腕はもう使い物にならない。雷かなんかで一撃死だ、世知辛いねぇ……。


え?なんであいつの威力が普段より跳ね上がるのがわかるんだって?そりゃあここに飛ばされる前にいくつか全力攻撃を見たのもあるけど……、一番はあいつの能力で行なっていたであろう城を覆い隠す雲だね。


あれだけの領域を、あれだけの厚みで、しかも突っ込んでくる外敵に対する対処までしてるとかそれだけでどんだけすごいかが推し量れる。



「……ま、だとしてもこの威力はインフレしすぎだと思うけど」



今もまた落雷が私の右足を穿つ。それだけで私の足は余波で両足ごとぶっ飛んだ。こんな威力の攻撃が弾幕レベルで迫ってくる。


特殊世界だからこそ許されたルールなんだろうけど、酷いもんだね。一撃で部位破壊レベルの攻撃を何発もだよ?それを何回も受けてる私の状態がどれくらいか、まぁわかるんじゃない?



まるで神経を毟り取られてる感じだ。慣れている体とはまるで勝手が違う。痛みのせいでまともに動けないね、欠陥器官だろこの痛覚とかいうやつ。まぁこんくらいしないと危険を知らせることができない時もあるのかもしれないね。



「……痛いけど、冷めてるのはなんでだと思う?」



つぶやいた言葉は吹き荒れる嵐にかき消される。というか、私は誰に言っているんだろうね今。


……ぶっちゃけよう。この類の強制的に相手を自分に有利なフィールドに引き摺り込む攻撃を青龍が持っている可能性は低い……、いや、正直言ってないと思っていた。


だって青龍はどう考えても私達より格上。わざわざ手間のかかることをしなくても殺せるし、プライドが邪魔して持っててもやらないだろうと思っていた。


私とベフェマ……いや、主にベフェマが決めてくれたこの作戦は至ってシンプル。まぁ、精神攻撃で隙作りまくって大技で奇襲袋叩きって感じかな。


シンプルに言ったのに簡単になってないのはご愛嬌。まぁ、私は言われたら理解に時間がかかるけど、他の人なら案外スッと頭に入るかもしれない思う。


そうだね……どんな予定だったんだっけ……。




⬜︎◆







『それじゃあ、作戦を説明するーの』



進化直後。私は目の前に座った……座った?ベフェマを前に話を聞く体勢を整える。ま、戦闘なんて想定外ばっかだし、大雑把でアドリブばっかでしょ。



『戦闘が開始したら、わたしが例の手記から得た情報で青龍の隙を作るーの。ただ、今のままだと()()ができないからちょっととあることをしないといけないけど、なーの』



例の手記。言わずと知れた私がガチャから得た誰かのメモだ。そんな手記には、恐らく青龍の上司であろう存在が人柱になる瞬間の記憶があった。


ベフェマ曰く、必要なのは仮称上司の声。できれば姿もあるといいらしい。手記そのままではそのどちらもが欠けていたが、ベフェマにはどうやらそれを覆す手段があったようだった。というか『強制同調』がそれだった。



私からすれば原理はよくわからないが、手記に記憶を残した人物と同調することで、その人物が見ている本当の光景を見れるらしい。


超理論じゃね?と思うかもしれないが、戦闘でキーになるだろうから嘘はついていないんだろう。私もベフェマも一蓮托生なんだから。



『隙を作ったら、その間に一撃を頼みますーの。これで、序盤に削れるだけ削るーの。ここで、煽りも入れておくと理性を失ってくれるかもだから、そちらも余裕があればお願いしましーの。でも、きっとその内持ち直されて反撃されるーの。そこからが本番だから、それまでにできるだけ手やら鱗やら削いでおいて欲しいーの。本番は、わたしがし……、いえ、とにかく時間を稼いで欲しいーの』


『きっと最後はオールさんがさっき見つけた()とやらが決め手になると思うーの。心当たりはあるから、わたしにそこは任せるの。そんでもって、その準備のために戦闘終盤は私は動けないからその間の陽動をお願いしますーの』




一気に来たね。でもまぁ、やることはそこそこシンプルじゃないかな?多分、青龍は魔法特化……とまではいかなくても、結構そちらにリソースを費やしているはず。


そっちの魔法の対処法さえ学べばベフェマが万事解決してくれると……。これは、今回はベフェマに全部助けられた形だね。あとで埋め合わせしないとだなぁ、まぁ生きてたらだけど。





「了解。護衛は任せてよね」




私が生き残るために、そして、ベフェマとここを出るために。

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