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No.57 拝啓、今尚淀み行く貴方へ 其の十二

⭐︎







「リ・アストロ」という魔物がいる。彼らは黒く無機物然とした形をしており、なおかつ普段は決して動くことはない。普通に見れば、景色に見事に溶け込んだ黒い岩のように見えるだろう。



そう、彼らは動く必要がない。なぜなら、彼らは本当に植物のような生態をしているからだ。彼らは、無機物であるがゆえに食事を必要としない。かといって植物のように光を浴び、自ら栄養を作り出すこともしない。



だが、彼らは何もしないで生きられるわけではない。彼らは、誰かの()()がなければ生きていけない。




そう、彼らは自らは動かずに、近くを通った存在の記憶を読み取る。それが、彼らにとっての()()なのだ。だが、読み取った記憶は別に他者から奪って得たものではない。ただ、記憶をコピーするように彼らは読み取るのだ。そして、その記憶も一般的な動物や植物のように栄養として消化されるのではない。



彼らが得た記憶は、彼ら自身が持つメモリーにすべて蓄積される。だから、彼らには自分の記憶というものはあるが、少ないものなのである。



しかし、ここで記憶を蓄積することで、彼らは一つの利点を得る。それが、『追体験』による記憶の再生。彼らにとって、記憶は栄養であると同時に、武器でもあるのだ。誰かに襲われた時、誰かの痛み、苦しみ、辛酸を思い出させる記憶を彼らの目に、脳に植え付ける。こうすることで、彼らはこの魔境の中で、厄介な生き物として手を出されずに生きられている。



では、そんな厄介な技能を敵に積極的に攻撃転用したならば。目の前の光景こそが、その答えであるのだ。






⭐︎




先頭から十分……とまでは行かずとも、それに近いだけの時間が経ったように思える。言葉による煽り、ベフェマが適宜入れてくれる精神攻撃によって隙には困らない。今の所は最高レベルでうまくことが運んでいる。だが、だからこそ不安が拭えない。




『外道がっ……』




知っている、こんな風にうまく行き過ぎている時。いつもなんらかの想定外が始まる。体の特性上流れないはずの汗が、額に滲んでいる気がする。



誰かの痛みが青龍にこだまする。体ではなく、心が痛む。そして、精神的なその隙を私たちは見逃さない。きっと、こんな陰湿な方法は青龍にとっては不快で、許し難いのだろう。それは、今までから想定している青龍の性格からしても明確だ。



「……なんと言われようと構わない。私たちは、死にたくないからここにいる。生きたいという醜い願いに応えるために動いているんだから」




私の言葉(煽り)が、痛みに対する憎悪が、主人を騙られたことが、元々の青龍の怒りを燃え上がらせる。そして、溜まりに溜まったその黒い心。それが満ちることで私たちが練った作戦は終わりへと向かう。さぁ、これで最後だ。




「そんなんだから、主人さんを守れないんじゃないのー?」











プチっと、何かが弾けた音がした。





『……『代行権限』、発動。その心を砕いて殺す、【夢見る光の崇拝神社】』









⭐︎⭐︎⭐︎ 【延線刀士】 オール・フォルタム







「……はっ!?」



なんだ、今ここどこで……!



「やっべ、こんなことしてる暇ねーじゃん、青龍どこだ!?」



目の前の光景に理解が追いつかない。さっきまでの荘厳な広間はどこいった!?なんだこの平坦な灰色空間は!!



目の前にあるのは、空も、地面も灰色の何かで覆われているよくわからない空間だ。これは、なんだ、隔離でもされたのか?なら、ベフェマとも分断されたってことか?じゃああの子1人は結構厳しいのでは……!?



いや、待て。落ち着こう。まず、今ここにいるのは私だけ。みた限りここには私以外は存在しない。おそらく、

『代行権限』何某による私の転移。



ここで、あり得るのは私がまず物理的に展示された可能性。この場合、私だけがその権限とやらを使われたか、全員がその権限の影響を受けているのか。



そして、個人的に一番やめてほしいのが精神だけ転移させた場合。この場合、私の肉体は現実に残って操作できなくなるから、青龍の意識が残ったままならそのまま殺される。本当なら、発動だけで相手の生殺与奪を握れるなんてないと思いたいんだけど、私達と青龍の間にはまだまだ力量差がある。そんなインチキもありえるかもしれないのだ。



「とにかく、最悪の場合を考えて、この場からの脱出……せめて青龍の意識体だけでも発見しないと……?あれって……」



突如として灰色の床から光が溢れ、かと思えば、金色の神社が下から浮上してきた。うわっまぶしいな……。なんだあれ?遠くだからよくわからないけどすごいおっきそうだな……。もしかして元々青龍がいた神社と関係あるかな?でも確か神社云々って青龍も言ってたよね?




「こう、自動で扉が開かれると入りたくなくなるのわからないかなぁ……?」



どうぞ入ってくださいと言わんばかりの神社に他にすることもないのでさっさと入る。のだが……。



「……これわざわざ私を隔離してまでやる必要があることなのかなぁ、青龍君?」



『無論、必要なことだ』



開けたらさっきの現実空間と同じ構造の広間が、外観とは逆に灰色となった状態であり、その中央にはやはり青龍が鎮座していた。








中身と外観のギャップ酷くない?

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