No.55 拝啓、今尚淀み行く貴方へ 其の十
(裏):えー、作者は「やることがあったので……」などと供述しており……。
(磔状態):恩赦プリーズ。
(裏):はい、投稿遅れと誠意ゼロの物言いにより、死刑。
( ):死刑がそう簡単に決まってたまるかあばぁ。
(裏):もはやお家芸だろこれ。いや許されねーけどさ。
ィイイイイイィイィイィィィン---
どこかひんやりとした回廊に和楽器が鳴らすような揺らぎ、強弱が変わる音が耳朶を叩く。荘厳な音だ。観光名所の方がやはり向いていると思う。
……どこか現代日本にも似ている構造だな。白いコンクリートのような柱が左右真ん中に等間隔で奥に立ち並んでいる。壁は蛍光灯のようなものでガラス越しに照らされている。……あぁ、行幸地下ギャラリーって所に似ているな。一度東京駅に行った時に通った記憶がある。
『……なんか寒くない?なーの』
「毛皮なんていう一番厚着してる奴が言うなよ、全くもう……」
あ。
『ピャアァアアアア??!』
回廊の真ん中あたりに来た時に、突如現れた幽霊っぽい何かにベフェマが腰を抜かした。腰なんてないだろうけど、まぁとりあえず庇っておこう。
「……何用かな?こっちは今過去最高レベルでいいコンディションだからさ、気をつけたほうがいいよ?」
『こちらに害する意思はない。吾輩は無害である。そして、無害が故に貴様らが吾輩を害することも叶わない』
うおっ、めっちゃ流暢に喋るじゃん。言葉が通じるとは思わなかった。ていうか何そのこっちは攻撃できないからお前も攻撃なしな、みたいな理不尽の強要は。
『吾輩に攻撃は聞かぬと言っておるだろうが』
『……オールさん、確認なんでしょうけど無言で銃を撃つのやめません?なーの』
ぐぬぬ。引き抜き射撃を顔面に打ち込んだけど余裕の表情で受け止められた。なんでそんな不合理なことがまかり通るんですかねぇ……。そんなんなら私も無害で可愛い美少女になるから全攻撃無効になれないかなぁ……。
『吾輩は唯の伝達役である。この先にはこの「青の龍宮」から脱出を望むならば、この城の最奥でその望みを叶えるられるだろう。しかし、進むのであれば命を捨てる覚悟をせよ。最奥の守護者は貴様らも知っているであろう龍である』
まぁ、そうだよね。
「だとしても進むよ。当然だけどね」
『ならば進め、突然変異の同胞よ。この先の地下神社にて彼は待っている』
……?
「いや、突然変異って、何が--」
『では失礼』
そう言って消えてしまった幽霊。なに?これ最後通牒とかそういうやつ?うーん。ここまで来てでも引き返すやつなんていないでしょ。そもそもここから出ないとどのみち詰みだし。
『……行きましょう、オールさん』
さっきまで覚悟の決まった感じだったのに気が抜けちゃったのかね、ちょっと震えてるベフェマが催促してくる。なんか可哀想だな、気合い入れて準備してきたのに。憑依した黒くて石っぽい何かが震えてるぜ。……その石、作戦聞いたからそれの用途もわかるけど、絶対見た目とやることが合ってないと思う。
通路を抜け、廊下の規模の割には小さな、といっても勿論1人ずつなら余裕で行ける大きさの鉄製扉をこじ開け、中を覗くとあら不思議。
「……あら綺麗。急にモチーフが変わるねぇ。まぁ青龍の元ネタ的にもこっちのがあってるんだろうなー」
『お祈り……お祈り……』
そこにあるのはガラリと趣が変わった自然あふれる和風の神社。見上げれば星ひとつない夜空が広がり、何やら神聖な雰囲気がある。私たちはどうやら正面から来たみたいだね。おっきな鳥居が正面に聳えている。おぉっ、風も吹くんだねぇここ。砂利道の周りの桜から花弁が舞い散るのがとてもお洒落である。
『勝利のお祈りしたなーの!これでちょっとは勝ち目が上がったーの!』
君ジンクスとか結構そういうの信じるタイプなんだね。私は、あんまり信じてない方だからなぁ……。
「それにしても……この道、奥の神社までご丁寧に舗装されてるね。こんな時じゃなかったら感動の一つや二つしたのに……本当に運がない」
神社までは結構距離があるようだ。大体200メートルくらいかな?まぁ、あの中が戦場ってことでしょう。
『お花見にちょうどいいなーの……』
「そうだねぇ、花見団子食べたいねー……」
どうしたのかなベフェマ君?そんな驚愕した感じの視線を向けるなんて、まるで私が花より団子精神の人間とでも言いたいのか?違うね、これは実利主義っていう素晴らしい価値観に基づいたものであって……
『失望したなーの』
シンプル単語ほど刺さるなぁ!?……さて、気を取り直して。
「ここだね」
『ゴクリ……』
「はいではオープーン」
『ちょっ!?心の準備--!?』
ぼぅっ。
ぼぼぼぼぼぼぼ--
シャァァァァン。
「……酷く凝ってるじゃないか」
扉を開けた瞬間に付いたのは神社正面の扉を開いた奥にある道、その両脇にそれぞれ配置されている灯籠のうちの一番手前の一組。
そこから連鎖するように奥の組の灯籠へと加速度的にその青い光が灯されていき……その最奥で、一気にくす玉を割った時のような音と共に、最奥が明らかになった。
「……でたね中ボス。あんたなんかに怖気ついてちゃあいられないんだよ」
畳のようなものが一面に敷かれた、ただっ広い空間。周りは金のふすまようなもので天井含め覆われている。あーあー……本当にこれじゃダンジョンのラスボスじゃん。これで私、まだ青龍の後に誰か控えてる可能性も考えてたんだけど、これでその可能性は低くなったかな。
目の前に鎮座する巨大な龍。蛇にも似た東洋の姿で描かれるその姿は、青龍という割に翡翠の色の鱗で覆われている。デカいねぇ……全長何メートルだこれ?今も地に足……足ないけど、地に足立っているのに、しかも全身伸びきった状態でもないのに全長ざっと十メートルはあるからな。それじゃあ……ってぇ!?
『一息で葬る』
突然話し始めたことを気にする余裕はない。入ってすぐにいきなり不意打ち攻撃かますことに文句を言う暇もない。知っている、あの動き、あの挙動!喉が膨らみ口から漏れるその光、こんな屋内でぶっ放せるのかよ!
『『切斂吐息』』
「サイレンと息」?それとも「サイレント息」?絶対どっちでもないが、とにかくいつかの威嚇射撃とは比べ物にならない全力射撃が、無色の一切合切切り裂く竜の代名詞が逃げ場のないこの空間を吐息のように広がり解き放たれた。




