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No.36魔法少女には夢がある

( ):三話ほど一つ前に差し込んでおきました。投稿ミスですね。まだの方はそちらからどうぞ。

(裏):土下座するかぁ!

竜の軍を殲滅してから早数日。来る日も来る日もレベル上げに勤しむ私たちのレベルはすでに私が30、ベフェマが29だ。森が物理的に減ったので少し森から出てレベル上げもし始めたおかげで、少々経験値効率は上がったらしい。



お陰様でレベルは上がったのだが。



「そろそろ一回どこがこの層の最終地点か見ないとだよねぇ……」



広すぎるのだ、この層は。50階層でこのダンジョンは多分終わりだ。パシファイアーがここに送ってきた理由は青龍に後を任せるため。そしてその青龍はおそらくこの箱庭でも随分上位にいるはずだ。何せゲームクリアの鍵だからね。


つ、ま、り。そんな最上位の魔物がボスを務めるであろう階層が最終層でない確率は低いわけで。



『でも広すぎるーの……』



私たちはレベル上げと同時にこの最終層のボス部屋がどこか探索していた、のだがとにかくこの層は広くてどこがボス部屋かわからない。


今までだと大抵は最奥か中央にあったのだが、今回に限っては明らかにオープンフィールドなので、ボス部屋は中央じゃないかと思っている。



『大体この環境おかしいーの。どれだけ歩いても一向に荒野が続くなんておかしいなーのー……』



うん、どこまで歩いても赤黒い空が照らすばかりの荒野のみ。私たちが住んでいる森が逆に珍しいのだろうと思うくらい何もない。


ただ、それでも魔物はいるので、普通に襲われる。まぁ、と言ってもダイナスは中ボス枠だったらしく、あいつを上回る敵は現状いないのだが。


そもそもダイナスとの戦闘だって、継戦での疲労も含めてのあの死闘だったのだから、レベルも上がってピンピンしてる今の私が戦ってもお前より簡単に勝てることは請け合いだ。



「見つからないよねー……、いっそアプローチ変えてみる?」


『えー……それならどうするなーの?天空とかにあるとでもいうなーの?そんなの普通に辿り着け……えぇ?』



急に上を見上げて硬直したベフェマ。明らかに焦っているようで、冷や汗がダラダラと流れている。毛皮なのに。手を振ってみても反応がない。



「はっ……!まさか……死んでる……!?!」


『全然生きてますーの!!』



あいた、目の前で振っていた手を噛まれてしまった。まぁ痛覚死んでるから意味ないんだけどね。あ、でもHPは減るか。



『い、いいいやそうじゃなくてっ……!上!上ぇ!!』



んぅ?上がどうしたよ。今日はずっと曇天だから赤い雲しか……は?


目の前にある光景が信じられなくて目を擦る。いや、そんなものじゃあこれは消えてくれない。これは……!



「ラピ⚪︎タ……?」


『いや違うーの!?』



そこにあったのは、渦巻いた雲にその実態を隠されながらも、雲越しでも見える城の形をしたシルエットを落とす何かだった。



「いやいやいや、バ⚪︎ス言ったら落ちるくね?」


『何をそんな呑気なーの!??どう考えてもやばいやつなーの!絶対ラスダンなーのぉ!!』


「あ、そっか」



そうだわ。そういやこういうやつラスダンでよく出てたわ。ということは……?



「え、嘘あれ登らないとなの?」


『否定したいけど否定できないーの……』



そこにあったのは、強制登山(標高数百メートル足場なし)を要求するラストダンジョンであった……!


いやこれ難易度ゴミじゃね?製作者の悪意が滲み出てる……。



「悪そうな笑みでにっこり笑ってそうだなぁ……」


『オールさんがなーの?』



ベフェマ実は私のこと嫌いだったりしない?



「私の笑みはこんなにも輝いているのに!」



やめろその顔、なんだよ、まるで私の笑みは自分を悪だと気づいていない、最もドス黒い悪だ。な笑みだと言っているようじゃないか。






⬜︎






さぁやって参りました、第一回目、空中登山のお時間です。


ルールは簡単、どんな方法でもいいからあのバカみたいに浮遊してやがる空中城塞(台風の中)に突撃してやるだけ。


さぁ、それでは最初の選手はー?はいっ、わ⭐︎た⭐︎し!



「いっくよー?」



肉体変成起動!見せてやるぜ、私のマジカル⭐︎変身を!



「………」


『………』



ロングレッグ魔法少女()が出来上がった。



足が長すぎて胴体が崩れ始めてる魔法少女()はさらにそのまま足を物理的に伸ばし続ける!同時に私の胴体も崩れていく!


おぉーっと、ここで私が二つあった足を一本に統合!使える肉体を全て長さだけに集中だー!


現在標高百メートル突破ぁ!足を一本に統合したからもはや肉の塔にしか見えないがもういい、恥は捨てた!人間もやめた!



「へっへっへ!このまま台風に突入してあいたぁ!?」



ぐんぐん伸び続ける、たけのこ()な私にぶつかったのは城塞を覆う雲……とその内部に存在する嵐。嵐の中で雷が私の伸びゆく足に直撃したのだ。


一本足、というかもう細い塔みたいになっている私はその直撃を受けてバランスを取れるはずもなく、見事に倒れ始めた。


咄嗟に肉体変成でなんとか面積を減らすが、その途中で地面と激突。地面と熱烈キスをしてしまった。土ペロってこういうことか……。


なんか知らんけど空中城塞に馬鹿にされた気がする。んにゃろー、土ぺろさせやがって……、差し詰め青龍はムス⚪︎大佐かぁ?許さんっ!絶対目がー!目がーー!!してやるからなぁ……。



「くっそー、絶対行けると思ったのにー……」


『まぁまぁ、流石にこんな邪道で行けるとは思っていないなーの』



邪道かぁ……、邪道ねぇ……。



「私、多分正攻法見つけたよ」


『ほぁうぁ!?』


「ふっふっふ……では発表します」


『ごくり……』



でれれれれれれ、でんっ!



「あの雲の上から突入します」


『……?……!??………!!??!!?』



ははは、どうしたベフェマよそんなキメ顔のまま涅槃のポーズで道路を爆走する変態を見つけたような顔をして。


顔を言語化するなら「こいつは何を言っているんだ、……いや待て、まさかお前!?そんな馬鹿な!アホなのか!!?」といったところだろう。



『いやいやいや……え、嘘だろ?なーの』


「これが嘘じゃないんだよなぁ。私さっきあの雲の中突入したじゃん?その時にね、ちょっとだけど空が見えたんだよね。そう、雲に隠されていない赤黒ぉい空だよ」



あの雲の渦巻き、城塞を完全に取り巻いているのかと思ったら、どうやら上部だけは雲に隠されていないようだった。雲の維持の消費が激しいから侵入されにくいところだけ雲を維持しないで節約しているとか?


……世知ずらいことだなぁ、そうだったら。


とにかく、あのあからさまな雲は、自然発生する雲と同じく上は覆われていない。


そして、今も上を見れば曇天の空だが、あの渦巻雲とその周囲を取り巻く普通の雲は、ほぼ確実に局所的なもの。そもそもこんな空間に普通の物理法則を当てはめていいのかはわからないけど、ね。



「まぁ、他にも方法はあるかもしれないけど、今はこの方法でひとまず攻略してみない?どちらにせよレベル上げはまだ必要だろうしさ」


『ぐぬぬ……まぁ、オールさんの頭のかっ飛び具合についてはあとで話すとして、まぁ異論はないなーの。実際今たどり着けてもまともに攻略はできないだろうし、なーの』



うんうん、とてもいい返事だ。一部OHANASHIが必要な部分があるがな。



「そうと決まればひとまず空を飛ぶ手段の確保だね。まさか物理的に行けだなんていくら攻略でも要求するはずがない。そんなの実践する奴なんかいないだろうしね」



ははははは、なんだいベフェマ?そんな路傍で半裸のブレイクダンスしてるやつを見たような顔をして。



「まぁきっとどこかになんか落ちてるでしょう。さぁ、そうと決まればまた探索だよ!あ、敵だ」


『オールさんの頭はもう手遅れなーの……あ、はい『共鳴』しておくなーの』



よしよし、経験値みーっけー。思えばこの連携もだいぶ上手くなってきたよね。ベフェマが不意打ち『共鳴』でその後に私が刀で確殺、っていう一連の流れ。



この感じでもっと上手く……



『ーーあ゛』



「?」



ベフェマが信じられないものを見たような顔をする。今日百面相だな。まぁ、流石に今のは関係ないと思うんだけど……。なにか変なこと考えた訳でもないし、もしかしてさっきの件まだ引きずってる?



「……どうしたの?」


『えー、オールさん。攻略、案外なんとかなるかもしれないなーの』


「ーーはい?」


『とりあえずわたしのこと『分析』してくださいなーの』



ふむ……『分析』。




ーーー

個体名『ベフェマ』

種族:ネレゾ Lv29/52


状態:通常 ランク:D +


称号:『暗殺者Lv4』 STC:


HP:59/59 MP:0/0


STR:87 VIT:49 AGI:104 INT:147 MND:73 DEX:188


技能:『隠密Lv5』『不意打ちLv3』『麻痺の魔眼Lv1』『致命穿Lv6』『麻痺耐性Lv3』『毒耐性Lv1』

『熱源感知Lv6』『物理耐性Lv3』『闇魔法Lv1』『毒牙Lv6』

特典:『強制同調Lv1』『虚染め』

ーーー




……あぁ、成程。確かに大き変わっている点が一つ。



「感覚でわかったんだね?」



こくりと頷いたベフェマを尻目に新たな特典『強制同調』とやらの分析を行おうか。まぁ、これに関しては元の能力特性がわかっていたからすぐにわかった。内容は……。



『強制同調:選択した対象と自身の一部を強制的に同調する。また、損壊度が低い死体を対象に、自身を同調することで、その体を乗っ取ることを可能とする。習熟すれば、生きた存在の身体すら乗っ取ることができる。』



これだ。これはやばい。本当にやばい。壊れとかそういう次元じゃない。まごうことなきチートである。こんなん持ち出されたら即刻通報よ。運営仕事しろ。


だがしかし、ここはリアルな場所で、運営なんてものは……まぁ近いものはいるが、実際に運営するような存在はいないだろう。


詳しくみた限り、今のところは死体しか乗っ取れないようだが、これだけでもやばすぎる。戦略性の幅が一気に広がった。まぁ、それでもまだ私が考えていることの中には、検証が必要なものも多い。とにかく一度使ってみてから考えるか。



「ちなみにベフェマ……これ詳しい内容、把握できてる?」


『はい!なんか倒した相手乗っ取れるんですよね、すごそうなーの』


「あー、考えの方向間違ってるね、ちっち。これを使えば、敵軍の将軍とかになりすまして身内ゲバいくらでも起こせるってことだよ?内部崩壊とか工作が超簡単にできちゃうんだよ?もっとそのありがたみに気づくべきだね、全く」


『その方向でわたしの特典使用を考えてるオールさんが踏み外した方向に考えているきがするーの……』



失礼な、これもれっきとした生き残るための方策なんだぞ!……なんか外道とか言われそうな気がするけど、知らん。私が生きるための必要犠牲だ!なんだって代償が必要なんだ!私間違えてない!



「あー、まぁとにかく言いたいことはわかった。これで飛行系魔物をできるだけ綺麗に倒して、それ乗っ取ろうっていう話だね?」


『いぐざくとりー!なーの』


「おっけー、そしたら早速探しに行こう……って言いたいところだけど」


『??』


「いや、どっちにしろ私たちまだ攻略に適正レベルじゃないじゃん?」


『……あー。新特典のせいで完全に吹き飛んでましたーの』



うん、正直私も忘れかけてたが、わざわざ恥を晒す必要もなし。知ってたことにしよう。そうしよう。



「まぁ、ひとまずは試してみようか。経験値がてらにね」


『あいあいきゃぷてーん』

Tips:『強制同調』

進化した『共鳴』。よりベフェマの人生の本質を表した形になっている。ベフェマは他人のレールに従っているだけと自己評価したが、それは或いは、親や周りの人間の価値観を押し付けられる……つまり、同調させられているという言い方の方が正しいのかもしれない。強制同調とは、ベフェマ「が」同調させるのではなく、ベフェマ「を」同調させるという意味での特典なのかもしれない。

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