No.29あなたはだあれ?
( ):やはりタピオカ。タピオカは全てを解決する。
(裏):飲んだ後バリバリ働いてたもんなー。うん、きもいぐらいに。
( ):素直に仕事頑張ったね、って褒められないんですか?
(裏):これがツンデレ流褒め方。
( )ツンデレは自分のことツンデレって言わないわ。
⭐︎⭐︎⭐︎【刀士】???
そうか、気絶して倒れたか。私は仮にも◼︎◼︎……あぁ、今はオールと名乗っていたか。彼女と同じ肉体を共有しているが故に、彼女がなぜ倒れたのかわかっている。
答えは至極簡単で、貧血によるものであるだろう。今まで肉体の変成に多くの血液を使ったからな。同時に、継戦の疲労もあったろう。まぁ、総じて言えば、ここで倒れたのは仕方がないとも言える。最も、仕方がないからとそれで死を免れるわけではないが。
死霊というのは相当に特殊な存在なのだろう。オールが持っていた情報の中には、精霊とは元来半透明で、物理的攻撃が不可能な存在らしい。だが、死霊はその精霊と同一系統でありながら肉体を持ち、物理的損傷を負い、今こうして死にかけている。
考えればわかることだが、この体は、というよりもこの種族自体が矛盾している。死んだ肉体なのに生きている。まさに生死物とでもいうべき存在。それゆえに、この肉体への攻撃の通り方は少々特殊のように思える。
例えば、致命攻撃。心臓や首への攻撃など、普通に生きていればそこを絶たれた時点で死が確定する部位。ところが、この体にはそんな弱点とでもいうべきものがない。それに加えて、技能『死背』によって、一撃必殺はオールにとってあってないようなものだろう。
まぁ『死背』に関しては、オールはまだ理解していないようだがな。一体どうしたら『死背』の解釈を死に背く、ではなく死の背後、として分析しようとするのか。逆に不思議と言えるだろう。この技能が精霊としての力だというのにもったいないことだ。まぁ今はこの話はいいか。
さて、肉体の致命的な攻撃は意味がない。ならば肉体に関する攻撃では完全に破壊でもしなければ死霊に問題はないのか。
残念ながらこれもまた違う。そうあってくれれば自分が出張る事にはなっていないし、オールも気絶などしていないだろう。
まぁ、これも簡単な話で、一撃で瀕死になることはないが、今のようにHPは減る。ここがよくわからないシステムの影響下にある以上、HPを 0にすればそれが物理的にであろうがなんだろうが関係なくオールは倒せる。
その過程により与えられる状態異常に関してもまた同様に。
……さて、ここまで長々と語ってきて何が言いたいのかわからないという者のために言わせて貰えば、オールはこの体のことをよく理解できていなかった、ということだ。
おかげで、本来表に出るはずのない自分が表出し、オールは眠る羽目になっている。
ーー思い出したくない記憶を封印するために、なかったことにするためにその記憶の過程で生まれた自分ごと私は封印した。そんな見たくもない存在があるお陰で、今のオールは生きている。皮肉だな。
別に、今こうして表出したからといって、オールを害する気などない。ここで主導権を奪おうなど考えてもいない。
なぜか?それは、自分という人格自体がオールを守るためにあるから。彼女の心が壊れぬように、トラウマを錯覚させて乗り切るために自分はいるから。
そして、何よりも裏切り者を、自分たちを殺した相手に報復をするために。自分が抱え込んでいるこの記憶はそうして初めてオールを傷つけなくなるのだから。
「……そのために、今ここで倒れはしない」
ここまでの思考は約1秒間。自分というこの人格は、生まれた瞬間からその殺意を研いでいる。だからこそ、自分の銃と刀の技術は両方ともに高い。私が苦手だった刀の技術も長い鍛錬の時を経て途轍もなく上昇している。
ゆっくりと立ち上がる。パシファイアーは攻撃を仕掛けてこないな。警戒しているのか?ふむ……愚策。
一瞬で全速力で走り、動き始めた光の帯の間に身を当てぬように入り込む。そして、自分はあっさりとあの牢獄から抜け出した。
意外と思考しているようだ。随分と驚いているな。だが、それを待つほど自分は悠長では……
『待って。あなた、だれですーの?』
ふむ、これは自分とオールとの違いがわかりやすすぎるのか、ベフェマとやらの感が鋭いのか。前者だと思いたいが……
「……よく気づいたな。自分はいわばオールの裏人格だ。本来なら表に出ることはないのだが、何分非常事態でな。別に危害を加えるつもりはないので、安心して欲しい」
まぁ、個人的には彼女は気に食わないのだがな。個人的にはその立場が。まぁ、主人格はオールだ。ならば判断は彼女に任せるとしよう。
……それでも、いずれは決定的に意見が食い違う時が来るのだろう。重い過去を忘れ、昔のように明るく振る舞う私。対して、負に塗れた過去から生まれた自分。人を信じれる私と、人という存在自体に憎悪を抱く自分。
いつかは、その日が来る。だとしても、今は。
『……安心してという割には、随分と剣呑な目なーの』
「……すまない、少々思うところがあってな。敵対する気がないというのは本当だ」
今は、だがな。
『……ひとまずは信用するーの。でも、警戒はするなーの』
「それで十分だ。さて、それではあの水晶をさっさと壊してしまおう。君は自分が合図した時に『共鳴』を使ってくれ」
ベフェマは渋々といった様子で承諾してくれた。まぁ、今は本当に共闘してくれた方がありがたいので良かった。
『ところで、あなたはなんと呼べばいいーの?』
危うく光の帯に触れるところだった。
「……今、この状態でそれを聞くか?」
『でも、なんて呼べばいいかわからないからそれで判断が遅れそうなーの』
……一理ある、のか?だが、そうしてくれないとパフォーマンスが下がるならやはりなんとかせねばなるまい。ふむ、どういった名が自分には相応しいのか?
『よろしければわたしがつけてもいいなーの?』
ありがたいが、オールにもそう言って名付けていたな。名前をつけるのが好きなのだろうか?とりあえず頷いておく。
『よし!それならもう決まっているーの。あなたの名前は……ワン。ワン・スプリングスなーの』
……自分はどう反応するべきなのだろう。ワン、というのは中国である名前で聞いたことがあるが……自分は中国の人と何処か似通っているのだろうか?まぁ、悪い気はしないが。
『オールさんの裏だからね、なーの』
そうか、思ったより単純だったな。気づかなかった。灯台下暗しとはこのことか。
「何はともあれ、これで懸念は消えたか?」
『あなたの信用に関して懸念は残るけれど、今はひとまずないーの』
ならばよし。それでは早速行動を始めるとしよう。今までは回避だけだったからな!そろそろ動かなければ。
「さて、では手始めにーー」
敵は2体か、後の一体はただの石像と化しているな。では、『鎌鼬』。ついで『水車』。
瞬時に片方へと突撃、と同時に急所へ突きを入れる。即座に絶命する片方へは一瞥もくれずに、刀を抜きながらもう片方へと上から円を描くように首を断つ。
『条件を満たしました。技能『鎌鼬Lv1』及び『水車Lv1』を獲得しました。』
『条件を満たしました。技能『静流水Lv6』技能『枯葉舞Lv6』技能『神刺Lv1』技能『旋風旗Lv6』
技能『鎌鼬Lv1』技能『水車Lv1』が技能『風水刀然Lv5』へと変化しました。』
一瞬で死んだ肉塊二つは無視して、本命の水晶へと突撃。何か聞こえた気もするが、気にする必要はないだろう。……なんだか、自分が使っている刀術の流派名を聞いた気がするが、気のせいか。
構わず、水晶へと突撃。道を狭むように妨害してくる光の帯は難なく回避する。記憶を失ったせいか、オールはできていないようだが、いずれは解決するだろう。何せ自分もオールだからな。
そして、水晶の元へ到達。一度刀を振るってみるが、硬さが違うのだろう。まるで刃が通らない。
だが、そんな者の相手に対処するための手段などとっくの昔に覚えている。少々難易度が高いが、自分にとっては問題ない。
一斉に光の帯が自分の逃げ場を無くすように囲みながら迫ってくる。だが、そんなもので精神が揺らぐなら自分を作り出すまでに私は、壊れている。
硬い相手にも、大抵は何処か切りやすい場所がある。それは古傷だったり、関節だったり、機能上必要な割れ目だったり、だ。
目指すのは先ほど元の大きな一つの正三角錐に戻った水晶の、変形に必要な割れ目。たとえどれだけ改善しようと、機能として必要なために、完全には消せない。故にーー
「『一切』」
切れる。
見事に横半分に分かたれた水晶から光が漏れだす。そして、自分の視界を光で埋め尽くした。そして、同時に自分の役目も終わったのだろう。自分の意識も薄れていき……また、元の記憶の底、深い闇へと落とされた。
『条件を満たしました。個体名:オール・フォルタムの種族レベルが4から22へと上昇しました。』
『条件を満たしました。称号【刀士】のレベルが3から6へと上昇しました。また、称号【銃士】のレベルが2から6へと上昇しました。』
『条件を満たしました。技能『風水刀然』レベルが4から7へと上昇しました。』
( ):最近早めに投稿している気がする。まぁいいよね、休日だし。
(裏):じゃあ空いた時間でもっと頑張ろうね。
( ):人の心ないんか?
(裏):そういえば呪術廻戦の直哉さん、CV決まったそうですね。
(真顔):なんで知ってるんですか、私がそれで喜んでたの。
(裏):え、そうなの?
(自爆):………




