No13.鮮血は踊る
( ):ちょっと考え中ですが、投稿時間、朝にするかもしれません。
( ):色々と変更することが多いと思うので、迷惑がかかってしまうとは思います。
( ):なんとか安定して投稿できるよう努力致しますので、今しばらくお付き合いいただければ幸いです。
⭐︎⭐︎⭐︎【狂戦士】緋血狂猩
猿にとって、懸念すべきことは何もない。毎日をただ同じように過ごすのみだ。そう、そうあるように決められている。
だから、見慣れないものは優先的に排除するように生きているし、毎日必要な数の魔物を狩っている。
だから、少し珍しい形をした獲物が来た時も変わらない。
いつもと同じように一撃で処理して、腹が空いているならば食い、空いていないならそのまま放置するだけ。
まるで機械のようなその生き様に、いや、実際に機械と同じその生活に異常が起きたことは、少しの揺らぎを猿にもたらした。
だが、その揺らぎは関係ない。
たとえ揺らごうと、猿は猿のなすべきことを行うのみ。
一撃で仕留められなかったなら、次はより強い力で、確実に、今度こそ二撃で仕留め切る。
思考は一瞬だ。単純かつ明快。揺らぎの原因であるヒトガタにもう一度、先ほどよりも強い力で攻撃するだけ。
ーーーなのに。
受け止められた。いや、正確には受け流された。
たとえそれが本来の力の八割に満たないものとしても、今までほぼ一撃で全ての獲物を仕留めてきた猿にとって、それはゆらぎどころではない、明確な動揺を与えた。
奇妙な腕を振るって自分の攻撃を受け流したそれは、さらに少し似た姿、人の姿をしていた。
その手は、左腕の5本指は、刀を握っていた。猿の知らない、けれど危険なものと判別できる凶器だ。
「ふふ、動揺してるね?その様子だとあんまり自分の攻撃を受け止めた敵はいなかったんじゃない?わかりやすいね」
猿にはそれが何を言っているかはわからない。
それでも、おちょくられているような、みくびられているような、そんな雰囲気を感じ取った。
猿は今までそんなものを感じたことはない。目の前の貧弱な人と同じような獲物達からは、震えと発汗、恐怖に類するものしか感じなかった。
理解できない。そして、それは今自分が感じているものにも言える。
沸々と燃えたぎるような、頭が熱くなるような、とにかく目の前の敵を叩きのめしたいと思わせるそれ。気づいていないだけで、猿はその生において極度の憤怒を初めて発露させていた。
そして、猿は舐め腐ったこの存在を必ず叩きのめすと怒りに満ちた目で決意する。
余裕?手加減?そんなものはもういらない。
あらゆる全てを使って縊り殺す。もはやこれは蹂躙ではない。
この世界では当たり前の、そして両者共に初めての死闘である。
⬜︎
受け流し、受け流し、受け流し、そしてそこから流れるようなカウンター。あれから何分が経ったのだろうか。猿の怒りはもはや天元突破していた。
その緋色の体毛は完全に逆立ち、怒髪衝天を衝くと調べた時に、いい見本となりそうなものである。
しかしながら、この猿の怒りには、正確には苛立ちに由来する怒りには少しの同情があってもいいかもしれない。
目の前の敵はまるで機械のような同じ行動しか繰り返さないのだから。
「ア゛ア゛ッ!」
また猿が怒りによる全力の拳を振るう。
体格としては圧倒的なまでに猿が優っているが故の、敵の全体を覆うほどの大きさの拳は、しかして先程から同じく刀を添えられ位置をずらされる。
どんな方向から、どれほど不規則なリズムで、どれほどフェイントを重ねようとも結果は変わらない。
かといってずっと同じように拳を受け流されていると急激に加速した刀が円を描いて猿を斬る。
そう、技術だ。今この矮小な人間は圧倒的体格差に圧倒的技術差で対抗しているのだ。
幾度も幾度も同じ解答の繰り返し。ただ一定周期に猿が斬られ、猿が傷ついてゆくだけの結果が繰り返される。
そんな状況が続いてもう何時間。日はすでに傾き始めている。
ジリ貧なのは猿の方。先に限界が来るのは猿の方。であれば、一向に変わらない戦況に先にブチ切れてしまうのは、勿論猿の方。
「ガァアアア゛アア゛アァァアアアア゛!!!」
もはや戦術も何もなくただ目の前の存在に飛びかかった猿。
「ーーあっは」
瞬間、それまでのカウンターが可愛く見えるほどの差速度で、今までとは一線を画す速度で振るわれた刀が、ただただ早く、円を描いて猿の胸を深く切り裂いた。
⭐︎⭐︎⭐︎
目の前にはぐったりと倒れ血溜まりを作る巨大な猩々。
我ながらよく倒せたものだと思うものだ。まぁ、型通りに刀を振るえば面白いように思った通りの結果で動いてくれたのもあるけど。
もしかして戦闘経験が少なかったのだろうか?
私も同じなはずなんだが……あっ、天才は対処できないものにぶち当たった時、それを解決するのが難しい……なんて言ってた気がする。もしかして猩々もそのパターンだったのだろうか?
最初に天狗の鼻叩き折ってやらぁ!なんて言ったけど、本当に当たっていたのかもしれない。
……私が猩々戦で行ったことは難しいことではない。
相手の動きを知っているパターンから予測し、それのうち一つに当てはまった場合、その回答となる型で刀を振るう技術『静流水』。
これはペンギン戦でも使ったと思うけど、実は刀が元だったりする。
これ覚えるの苦労したなぁ……英単語みたいにとにかく暗記だもん。それも失敗すると痛いから余計辛い。
そしてもう一つ。相手の動きから運動エネルギーをもらってさらに早く刀を振るう技術『旋風旗』。一つ重要なことを教えてあげましょう。
扇風機じゃないです。旋風旗です。
いや、しょうもないって思うかもしれないけど、ホント重要なんだから。一回これで茶化したら師範代にぶちのめされて一日中全身ヒリヒリしてたもん。暴力は犯罪ですよ???
そんな扇風機さんですが、実はこれ、連続で受け流すと前の受け流しで得た運動エネルギーに重ねてさらにエネルギーをもらえるから、連続で受け流すほどカウンター時に早く攻撃できるっていうやつだ。
んまぁ、運動エネルギーを保持したまま何度でも上乗せとかそれもう理論値みたいなものだから、普通は10回も蓄積できればいい方なんだけどね。
……ぶっちゃけ、私の刀の技術はそこまで高くないからってのもある。
私はとある道場に通ってて、そこでこういった技を習ってたんだけど、結果は中の上。今私がなぜか持ち合わせている銃の技術に比べれば、全然低いんだよねー。
ともかく、私はその二つでなんとか相手を殺しきった。正直、肉体変形が一度に一つしかできないから無理かと思ったけど、銃は近距離には向いてないし、刀で戦うしかなかった。
それでも、なんとかなったんだ。今日はもう、モフヘビを連れて帰ろうか。
…………。ポジティブな考えをいくら考えたって拭えない。
だってそうでしょう?もう出来てもおかしくないはずの、倒したなら当たり前に出るはずの、出なくてはならないはずのレベルアップ表示がないのだから。
ふと、猿から流れる血の色が、緋色に見えた。錯覚?いや、違う。血が完全に色を変えた。
「……あぁ、なるほど」
……っはぁー。そうさ、そういうことなんでしょ?第二段階ってか、ったくさぁ……。
⭐︎
血が、さざめいた。真っ赤な真っ赤な血色が、緋い緋色に染まり切る。猿からの流血が完全に止まる。
猿は、緋血狂猩は、今まで全力を出していなかった。それは出し惜しみではなく、単純に力の使い方を知らなかったが故。
猿は狂戦士だ。それはつまり、どれだけその身が痛もうとも決して止まらず、ただ愚直に敵を葬る戦士。
その狂戦士という猿が生まれ持つ称号が、その身に力を与える。
それは、痛みをただ無視するだけの能力。だが、そんな小さな能力は、同時に目覚める猿の種族由来の能力によって真価を発揮する。緋血に染まり、狂える猩々は己の血を操る。
猿から溢れていた血溜まりがまるでその背中を押すように倒れていた猿を起こす。
血に塗れ、充血した目が、目の前の敵を再び穿捕えた。
同時に、猿を起こした血溜まりは猿にまとわりつき、鎧と化す。要所要所しかまだ守れない程度の脆弱な能力。それでも、猿に、否。猩々に相対する死霊には微かな焦りの気配が滲んでいた。
(定型文):ブクマ感想……ぶつぶつ……
(裏):壊れてて草
Tips:緋血狂猩
それは試練であり、蓋でもある。この「箱庭計画」及びその裏の目的を達成するにあたって、撃破目標たちを計画参加者が打倒することは必須だ。
けれど、だからと言って最初から撃破目標たちに積極的に動かれたならば、プレイヤーは即座に死亡する。当然だ、成長できていない雛鳥と、戦闘経験を十分に積んだ怪鳥。どちらが強いかなど火を見るより明らかだ。それはいくら雛鳥の成長能力が怪鳥のそれを大幅に上まっていようと同じ話である。
だから彼らがいる。蓋であり、撃破目標たちを活性化させるために鍵となる彼らが。
因みにコイツも普通に強い枠なので、それはそれでプレイヤー死にまくるんじゃね?という懸念が計画を進めるものたちの間で出たとかないとか。でもめんどくさくなった計画最高責任者が「ましゃーないだろ!」と言って押し通した。
結果、予想以上にプレイヤーが死んだ。計画を運営する奴らは青ざめたとか。最高責任者は異国の文化である罰、SEIZAとやらを一時間続けられた上に痺れた足をツンツンさせられて絶叫したらしい。




