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はじめての魔法

魔法使いの先生。エルフに人間の魔法使いを教師として呼ぶ。実は首都の方では良くある事らしい。人間のほうが教えるのが上手いらしい。


今日から先生として訪ねてくるのは若いらしい、と言うことしか分かっていない。詳細を聞きたくてもランダは出掛けており、ウェラは「知らない」と爪の手入れをしていた。





「どうも、今日からお世話になるウェルウィッチアと申します。よろしくお願いします」


丁寧な挨拶ができるようだ。確かに若そうだ。いや、リールより少し背が高い程度だから、たぶん歳はそんなに離れていないだろう。若いってレベルじゃない。


「若い女の子が先生を……なるほどねぇ」


ウェラが言うので、ウェルウィッチアが彼女を見る。見た途端、持っていた旅行鞄と杖を落して驚いていた


「て、天使様が……なぜ…ここにっ」


だが、その答えはウェラは言わなかった。かわりに、彼女との縁を話し始めた。


「私、貴方の一族には縁がありますの。先々代のアルテミシアは私を良く理解してましたわ……先代のエニシダは良く理解してなかったけど……昔は魔力を欲しいと言うから送り込んだものよ……」


「そ、そうですね…祖母……アルテミシアは貴方の事を警戒するように、と言っておりました。母……エニシダは仲良くしなさい、と言っておりました」



「くすくすくす、本当に、人間らしい教え方ですわ」


ウェラは笑っていた。という事はもしかして……


「……天使様が教えればよろしいのではないでしょうか?天使様の方が魔力量は上でしょうし」


「私は教え方が特殊だから、今後に繋がらりませんの。教え方が上手い人間に教えてもらうのが、もっとも効率よく魔法を覚えれますのよ」




そして、早速庭で魔法を唱える準備に入った。



「いいですか、最初は真似して下さい。土の精霊よ我名のもとに集いなさい。その硬さは鋼の如く、顕現せり力は光の如く。―――顕現せよ、ストーンバレット!」


そして、彼女の前に石の塊が浮かび、ブルズアイターゲットにぶつかり、石の塊は砕けて消えた。


「さぁ、どうぞ」


「土の精霊よ我名のもとに集いなさい。その硬さは鋼の如く、顕現せり力は光の如く。―――顕現せよ、ストーンバレット!」


そして、煙すら出なかった。何か間違えたか?


「おかしいですね。それだけの魔力を内包しているのだから、魔法陣くらい浮かび上がってもいいはずですが……」







その後、1日かけて詠唱を繰り返したが全く上手く行かなかった。


「何がだめなんだろう……」


「イメージ力」


ウェルウィッチアが言う。


「魔法はイメージした物を具現化すると言っても良いです。つまり、それが何かをイメージで固めなければ発動なんて夢のまた夢……。体の奥に有る魔力を感じ取って…そう、その温かい……そして冷たい力…それを解き放って…さぁ、今日は頑張ったのだから、もう寝ましょう?」






次の日。詠唱もちゃんと言わないと駄目らしい事を聞いた。その言霊が魔力となって魔法となる。


俺の深い記憶の奥底に眠る、そのイメージ



「土の精霊よ我名のもとに集いなさい。その硬さは鋼の如く、顕現せり力は炎の如く。―――顕現せよ、コルト・ガバメント!」


そして、それは手の中に現れた。少年の手には大きいその拳銃。大丈夫、使い方は理解している。遊底を引き、手を離す。リコイルスプリングの反発力で遊底は元の位置へ戻る。しっかり構え、引き金を引く。


ドパァン!


激しい銃声とともに、ブルズアイターゲットに穴をあけた。リコイルもガスブローバック程度のものでしか無い。魔法ってすげぇ。


ドパァン!

ドパァン!

ドパァン!

ドパァン!

ドパァン!

ドパァン!

ドパァン!

ドパァン!



あれ?俺何発撃った?この銃は7発装填だぞ……?そう思っていたら、リールはそのまま倒れてしまった。ウェルウィッチアは慌てることなく彼を支え、そのまま膝枕してあげた。


「初めての魔力消費です。そんなに消費したら目眩の一つして当然です。しかし驚きました。ボクは初めて見ますけど……これは拳銃…ですか?」


「うん……連射できるのは珍しい?」


「珍しいも何も…初めて見ました。まさに、魔法がなせる技だと思います」


ウェルウィッチアは特に驚いた様子もなく、新しい魔法としてそれを認めた。


だが、問題がなかったわけでない。


「消えないですね」


ウェルウィッチアが言う。


「確かにおかしい。魔法は本来、役目を終えたらすぐに消えるのだ。しかし、これはまだ姿かたちを残しておる。不思議な事あったものだ」


コーが氷の塊を宙に投げると、そのまま氷の塊は消えてしまう。


「では、ボクはこれを使えるのでしょうか」

ウェルウィッチアが引き金を引く。


ドパァン


確かに一発発射された。だが、ウェルウィッチアはそのまま倒れてしまった。あまりに魔力吸収量が多すぎるためだ。




そのため、本日の授業は中止となった。






「驚きました。あんなに魔力を吸収するなんて……」


二人が目を覚ました時には銃は消えていた。ウェラは爪の手入れをしていた。


「やはり貴方は規格外……ますます好きになりそうですわ……」


ウェラがウットリとした目でリールを見る。それを助けるようにウェルウィッチアが言う。


「しかし、日が沈みましたし、座学でもしましょうか。魔法を使うためには消費するだけでなく、魔力を還元して「無理ですわよ」


それを制したのはウェラだった。


「私は人間に魔力を還元する能力を持たせてませんわ。人間は消費するだけですの。そもそも、人間相手でも、魔力を渡すことはできませんのよ。やってみてくださる?」


ウェラは手を出す。ウェルウィッチアも手を出し、その上に手を乗せる。しかし、何も起きない。


「魔力を渡す、とはこうやるのですわ」


そう言ってそのままウェルウィッチアに魔力を送り込むウェラ。2人の手の間に青白い光がみえる。


「凄い……」


「人間は魔力を吸い尽くすために私がデザインしてますもの。エルフは体内で生産した魔力を排泄と一緒に魔力を大地に還元してますけれど」


「そうでしたか……」


「誰に言っても信じてもらえませんし、別に良いのだけど……ただ、貴方も誰にも言ってはいけないですわよ?反逆罪で吊るし首になっても知りませんから」


そう言うと、ウェラはまた椅子に座り爪の手入れを再開した。


「どういう事?」


「ボクは魔女会と呼ばれる集会に属していますので……意にそぐわない事はできないんです」


「組合って怖いもんね……」


ヌケニンは死すべしって言葉があるのだ。組合から抜けるとか、反逆すれば当然……おお、怖い怖い。




食事を終え、一息つきながら本を見る。魔法の本だ。基礎を学ぶなら本も良い。この本によると、生まれ持った魔力量は訓練によって増やせるという。強いストレスは強い魔力量を得る訓練として最適だと言う。つまり、社畜は最強。まさか……な


「ほら、お風呂、次入っていいですよ」


ランダがお風呂から出てきた。


「そう言えば、エルフに入浴の習慣があるとはとても……なるほど、貴方の仕業ですのね」


ウェラがリールを見る。そのとおり、大事な大事なアタックチャーンス。


「お湯に浸かるのは気持ち良いじゃん。でしょ?」


「ええ。この村にもたらした発明品で良い物ですよ。ほら」


「……リールと一緒なら入ってもいいですわよ」


ランダはそれにあっさり了承した。どうやら、この年なら異性と水浴びするのは普通らしい。



「温かい……確かに、気持ちいいですわ」


しかし、ウェラはリールの腕にしがみついて湯船に浸かっていた。温度はややぬる目なので、のぼせることはないと思うが……


「あの、離れてくれない?……狭い」


リールが言うと、ウェラは少し考え向かい側に移動した。これがどうした。ウェラの大事なところが全て見えてしまうではないか。


「ふふっどこを見ているのかしら?」

「あ、いや……ごめん」

「謝ってほしいわけではありませんの。どこを、見ているのかしら?」

「その……ウェラの…胸……、と…お股…」

「くすくす、貴方も男ねぇ……ほら、私が見せているのだから、貴方は隠さないでくださいまし」



くっそう、それが目的かって思うくらい、ちょっと恥ずかしい、ちょっと嬉しい入浴時間だった。










「それにしても、今日もお盛んですわね」

ウェラはリールの部屋を今晩も訪ねていた。しかたない。毎晩夫婦の営みが行われているので、そのあえぎ声が聞こえてくるのは仕方ない。兄弟を絶賛生産中である。


「ふぅ、私ともあろう者が、まさかこの程度のあえぎ声を聞かされただけで……貴方が居るからですわ」

その瞳は獲物を見つけた猫の物だった。





たっぷりとろけあった。


気分転換にトイレにでも行こうと、戸を開けると、まだ続いている夫婦の営みを盗み聞きしながらウェルウィッチアが自分の大事なことろをまさぐっていた。


お ま え も か 


見なかったことにした。それが優しさだろう。部屋に居たウェラをベッドに押し込み、ギュッと抱きしめる。ウェラはそれを受け入れ抱き合うように微睡みの中へ落ちていく。


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