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傲慢な天使と凍りつくドラゴン

リールは橋を渡り、森へと入った。そこで、光の玉を見つけた。実態はなく、光源が浮いているようだ。リールはそれに触れた。


「ふう、貴方のおかげで実体を持てましたわ」


その光源は小さな女の子になった。小さい、と言ってもリールよりも少し背が低いくらいか。


「君は…?」


「私はウェラ。よろしくお願いしますわ」

「こちらこそ……僕はリールと言います」

「早速で申し訳ないのだけど、貴方の家にお邪魔してもよろしいかしら」

「え?良いけど」



そして、彼女の顔を見てコーは凍りついた。とんでもない人を連れて来たらしい。


「貴方が河で魔力循環をさせたおかげで実体を持てるようになりましたの。まずお礼を」


そう言えば、この子、ウェラと言ったか。実体が無いって妖精とかの類だろうか


「い、いや、別に…」


「もっとも、放っておいて私が霧散しても、私は実体を持てるようになるのだけど……しかし残念ですわ。罪人を滅ぼせると楽しみにしてましたのに、罪を償わせるだなんて。罪を償う者に罰を与える事はできませんもの。本当に、残念ですわ」


「どゆこと?」


思わず言葉が崩れる。


「ほら、教えてあげなさい?」


ウェラに言われコーは説明を開始した。


「我々ドラゴン族が霊気循環の管理をしていると言ったな?その我々ドラゴン族を統括管理しているのが…この天使なのだ。良く、天使族を人間の爵位に例える者がいるが、天使族はおおむね伯爵と言われる事が多い。そして、我々ドラゴン族は……農民にも届かぬ奴隷あたりになる……それくらい地位に差があるのだ」


「そうなんだ……」


リールはそれしか言えなかった。


「概ね、そのとおりですわ。ただ、本当に残念。この村を消し去って、新しく源泉でも作ろうかと思いましたのに」


村のものが恐れていたドラゴンのコーが恐れているほどの相手。もしかして、やっちまった系か?


「しかし、無意味な殺生は……」


コーが言うとウェラは机に腰を下ろしながら言う。


「貴方方も生きるために獣を殺してるではありませんか。それと同じですわ。エルフが20人減ったくらいで世界は変わりませんわ。むしろ浄化されて良くなりますの。分からないわけではないですわよね?それとも、もう一回”戦争”したいのかしら?」


「と、とんでもないっで、ですが、彼らに挽回の時間くらい与えても良いではありませんか」


「貴方、ちゃんと頭で考えてる?おっぱいで考えてない?」

「い、いえ……そのような事は…」


そう言えば、コーがいつもの口調ではなく、敬語になっている。やばいのか。


「分からないリール君に教えてあげますわ。昔。ドラゴンが人間を滅ぼそうとしたのよ。魔力世界には必要ないってね。でも、それは大きな間違いですの。人間のようにただ自然を浪費する相手が絶対に必要なの。この世はそうやってバランスを保っていますわ。だから、ドラゴンと戦争する事になりましたの。人間の歴史には、天使が翼を広げ一陣の風となって戦場を支配した。と書かれているけれど……さて、ドラゴンの歴史には何と書いてあるかしら?」


その時のウェラの顔は本当に楽しそうだった。


「天使族による、ドラゴンの虐殺…と書かれています」


「貴方も分かるでしょう?力の弱い相手を圧倒的な力で捻じ伏せる。これがどれだけ愉快な事か。分からない貴方ではないでしょう?」

「はい、理解しております」


「リール君は、まだ理解してないみたいね?」

そう言うと、ウェラは組んでいる足の靴を脱ぎ、こう言い放った。

「ドラゴンちゃん。足をお舐め」


コーは躊躇することなくウェラの足を舐め始めた。


「そうよ、指の間も丁寧にお願いね」









「よくできました。えらいわね」


ウェラはコーの頭を撫でている。何が何だか分からない。だが、コーはもう足を舐めなくてもいいらしい、ウェラが脱いだ靴をコーが履かせている。


「ま、ここに来たのはリール君の事ですの。ハッキリ申し上げますわ。貴方、この世界の住人ではありませんわね?」


ここは嘘はまずい。正直に答えよう


「はい。僕は別の世界から来ました」


「本来、そのような事はありえない。しかも私の実体化のトリガーにもなった。たとえ他の世界の住人が迷い込んでも世界の自浄作用が働きますの。だけど、貴方は10年も生きてこれた。私にできることは2つ。世界の行く末を見届けるか、異物を取り除くか」


短い人生だったな……せめて魔法が使えたら違ったんだろうか。


「異物として排除するには、シルフの加護がある。本当に異物であればシルフがつく事はない。貴方は世界に認められていますわ。少なくとも、シルフには」


システムみたいな物なんだろうか


「貴方の記憶、見させて頂きますわ」



そしてリールは気を失った。


「大丈夫よ。記憶の濁流に身体が停止しただけですわ。じきに目を覚ますわ。しかし驚きましたわ。まったく関係ない、かすりもしない別世界からの移民だなんて。しかも記憶の一部を保持している」


「何かの前触れかの」


コーが心配そうに言う。


「そうですわねぇ、殺すのは勿体ない、でも、生かしておけない。せめて彼が人間の魔法使いなら、確実に生かしていたのだけど……エルフでは考えてしまいますわ」


「しかし、偶然とは言え、この河は……」


「ええ。理解していますわ。……はぁ、分かりましたわ。今、ドラゴンと戦争をしたら、それこそドラゴンを滅ぼしかねませんもの。貴方の言うことを聞いてさしあげますわ」


こうしてリールは、生きる権利を与えられた。


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