ドラゴンの説教
「さて、わらわがそなた達を呼んだのは……そなた達に聞きたい事があったからだ」
ドラゴンが村の真ん中の空き地に村人たちを集合させていた。何が始まるんだろう。絶対、ろくでもない。勘で分かる。説教というレベルじゃないぞ。
「この裏の山。あんな所に山は無かったはずだ。誰の仕業だ?匂いでおおよそ見当はついておるがの。名乗りあげよ」
え?あの山。人工の山なの?嘘でしょ?
「私、です……」
名乗りあげたエルフは首が縮んでいる。
「ほほう、そなたか……」
キッとにらみつけると、彼女は膝から崩れ落ちた。ドラゴンを怒らせると怖いらしい。そして、コーは大きく息を吸い込んだ。あ、これ怒鳴るやつ。耳塞いどこ
「ふざけるのもたいがいにしろ!事の重大さが分かっておるのか!?」
怒鳴られた彼女はそのまま頭を地面に押し付けた。土下座スタイル。頭抱えてるけど。
「理由くらい聞いておくぞ!」
コーの言葉に彼女は震えた声で
「魔力をバカにされたのが悔しくて……」
力比べってか、そうゆう奴ね。分かるよ分かる。非力をバカにされた奴が石を持ち上げてって奴と同じでしょ?
「ほほう、誰に?そいつも同罪だ」
「ケニア村長です」
その一言にコーは睨む相手を変えた。
「言い訳を聞こうか」
「いえ、ありません。私は日頃……」
村長がそこまで言った時、コーは耳を掴み地面に叩きつける。痛そう。
「ならばいつまで突っ立っておる!貴様も這いつくばれ!」
ドラゴン怖っ鬼教師とか裸足で逃げ出すわ
「お、お許しをっ」
「誰が頭を上げていいと言った!そなたは床を舐めておれ!!」
そしてコーは一息ついて説明を始めた。
「分からぬ者もおるようだから説明するが、あそこは霊気循環の丁度真上だ。つまり、精霊や妖精。その他魔法生物にとっては聖地に等しい地だ。我らドラゴン族はその地を統括管理しておる」
また怒鳴るやつじゃん。
「あそこの力を得ておった者は死んだか苦しんでおるであろうな」
案外怒鳴らないな。疲れたか?人間なら、怒り心頭は5分が限界と言われてるしな
「多くの命を奪った時は、さぞ気分が良かったであろ?」
やべぇ、こっちの方が怒鳴るより怖い。本能で危険を感じる。
「本来であればこの村を地図から消し去る所だが、貴様たちに良心の欠片があるらしい。誰かが楔を打ち込んで延命しておる。それに、そなた達の命乞いをわらわは聞いておらぬ。時間をやろう」
「も、もとに戻らないんですか…?」
「死んだ人間を戻せるなら、戻せるであろうな?」
「どうしたら…」
彼女が口を開きかけているのを見て、コーは顎に手を当て考える。
「そうだの……。あの山のてっぺんから、村の下の湖まで河を作れ。良いな?山を作れるのだ、河くらい余裕であろ?」
そしてコーはため息混じりに
「だれか建築に長けた者がおるであろ?この村の家はどこの村の建築方とも異なるからな。その者は、河に橋をかけてくれぬか。隣の森に行けぬと不便であるからな」
そしてコーは土下座している彼女を立たせ、帰るように指示した。
「で、だ。上水はそこの井戸なのは理解できるが……下水は誰が整備したのだ?エルフらしからぬ」
お、これは名乗り上げるか
「俺っす。所構わずしてるのが気になったし、何より、堆肥として利用したかったし……それに整備って言ってもトイレ作らせただけだよ?」
「ふむ……なるほどな。エルフの屎尿は栄養価も高く、魔力を帯びているからの。だから森でされるのは困る。魔力過多になってしまう。魔法生物が力をつけるのは良くない事もあるからの。人間のソレとは根本的に違うのだ」
そして、しばらく時間が過ぎた。全力で怒るのに疲れてきたのだろうか。
「何が気に障ったの?」
リールが不思議そうに言うと、コーは
「こやつが力の弱い者を見下したことよ。まったく……」
「見下したつもりは……ただ、成長を促せれば、と…」
「そなたからは今も反省の匂いがせぬ。それに先程「日頃」と言いかけたであろ?」
「は、反省はしております…今後はこのような事がないように……」
「何度もするであろ、そなたの事だ。それにわらわの鼻は誤魔化せぬ。今、そなたはこの瞬間を逃れる方法を探しているにすぎぬ」
「そ、そのような事は決して…」
「ふむ、そなたからは腐った匂いがする」
あれだ。根性が腐ってるってやつだ。
「あの者の属性は土であろう?溝は作れても水は流せぬ。そなたの属性は水だ。あの河に最後、水を流してくれぬか」
「いや、それは……」
「できぬとは言わせぬ。そなたからは「できました」以外聞きとうない」
ケニア村長は唇を噛みしめていた。
「分かったら今日は帰れ。明日の報告を楽しみにしておるぞ」
こうして、ドラゴンの説教は幕を閉じた。ドラゴンが怒ると怖いっていうの、滅茶苦茶力が強いから、なんだろうな。




