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帝国の牙

家庭の事情で随分執筆が遅れてまして、次回も来月くらいになると思います



「ウェルウィッチア、ウェルウィッチア!」


ウェラが寝ているウェルウィッチアを揺らして起こしている。


「ん……あ、あれ…?」


ウェルウィッチアが目をこすりながら上半身を起こす。


「昨日どれだけシたのかしら。もう日はとっくに登ってますわよ」


ウェルウィッチアは前を隠す事を忘れて空を見上げた。眩しい太陽がそこに浮かんでいた。


「あ、いえ……あっ」


「ほら、着替えて」


「ちょ、ちょっと……おしっこ!」


ウェルウィッチアは少し離れた場所でしはじめた。リールはウェラと顔を見合わせたほどだ。魔物がいるかも知れないのを考えれば、人目がない場所で用を足すのは危険が伴う。だが、ここまで堂々としているのは始めてだ。


「確かに……魔物は排泄時を狙って襲ってきますけども……これは…」


ウェラも流石に困惑していた。それだけ焦っている事だと思うが……。







馬車は町へ急ぐ。ウェルウィッチアはリールをじっと見ている。


「ど、どう……したの?」


「……さっき…見ました?」


リールはウェラと顔を見合わせ


「うん」


正直に答えた。ウェルウィッチアはリールに詰めより


「……忘れて下さい」


リールの胸に顔をうずめた。思ったんと違う。


「リール……まさに両手に華ではありませんか」


ウェラが腕に抱きついてくる。助けを求めようとコーを見ると、コーは反対側の腕に抱きついた。


「英気の補充だ……わらわはこれから……いや、我らはこれから指名手配されているであろう町へ行くのだぞ?当たり前だ」


当たり前って何だっけ?てか、コーが……






「おい、お前。積荷を見せろ」

見張りはすぐに荷台を見た。当然そこにリール達は乗ってるわけで


「……おいお前ら。おとなしくついてきなさい」


事を荒立てるつもりはないので、素直に従う。



と、そのまま監獄に放り込まれた。




「話を…する間もありませんでしたね」


「とはいえ……」


作りがしっかりしており、とても出れそうにない。


「陰謀論と言っても、まだ空想の域を超えてませんもの。話した所で……」


「でも、爆弾はあるんですよね?」


「本当にこの町に運ばれたかどうかも分かりませんけれども」


予想が外れて首都を爆破する可能性だってありえる。




「……天使様の魔力で壁くらい吹き飛ばせませんか?」


ウェルウィッチアの言葉にウェラは腰を下ろしながら


「それが……精霊の声がまったく聞こえなくて……ウェルウィッチアはどうですの?」


「……そう言えば…」



魔女会の総本山がある街なのだから、対魔法使い用の牢に入れるのは基本かもしれない。



そんな事を思っていると、リールの頭から光る球体が出てくる。リールが触れると、その光球は女の子へと姿を変えた。


「まぁ、お久しぶりですわ」


ウェラがその小さな女の子にカーテシーで応える。そして、すぐに腰を下ろす。


「貴方の前に姿を表したのは何年前だったかしらねぇ……?」


「さぁ?」


突然の雑談についていけない。顔見知りという事だけは理解した。


「急いでいるようだし、手短に。ここはもともと魔女たちの隠れ家だったのよ。魔力を遮断し、精霊との対話を不可能にする。そうすることで魔女たちは人間達に虐げられるのを防いだ……」


それを聞いてウェラは自身の膝に肘を置き頬杖をついて


「どこが手短なのよ」


とぼやいていた。シルフは気にしない様子で話を続けた。


「ま、リールにわかりやすく言えば魔女裁判って奴ね。魔女は害悪って風潮が昔あってね。有る事無い事……いえ、冤罪で次々と死刑にしていった。本物の魔女は少なかったみたいだけども……とはいえ、魔女たちはそれにめげずに人間達を守ってたみたいだね……だから、ここは魔女たちの隠れ家だったってわけ」


今、そこが地下牢になっているって事は、この話……随分昔の話じゃなかろうか。


「で、魔力の遮断って言っても、ただ遮断するだけじゃない。体の中の魔力を吸い出す能力があるのよ」


「空っぽにされたら動けなくなると思うのだけど?」


ウェラが言うとシルフはウェラのデコをつつきながら


「そう。そうならないから、ここは適しているのよ。微妙に残るのよ、魔力が」


微妙に残った所で魔法が使えるほど残ってないんじゃ意味がない。強行すれば昏睡してしまう。


「でね、ここの魔法錠を解錠できるだけの魔力さえ確保できれば……問題ないと思っているの」


なんだこのシルフ。説明不足でまるでこの小説みたいだ。


「まぁ、リールがエルフって言うのも大きいわねぇ。エルフって、外部から魔力を取り込んで、増幅して、大地に還元するでしょ?」


あぁ、その説明は前ウェラに聞いたな。で、それが何の関係が?


「で、ここは基本的に魔力が完全に遮断されて補充できないばかりか、吸い出されてしまう。で、まぁ、エルフってね…魔力を物として保管しておけるわけ。それが、ここに保管されてるってわけ」


そのシルフは元気よくリールの股間を指差した。


つまり、そこに解錠魔法が発動できるだけの魔力が保管されていると。とんでもない話だ。


「で、そのまま抱き合うと結界みたいな魔法がでちゃうから、それで消費するのは困る。取り込んだ魔力をそのまま出しちゃ意味ないからね」


ウェラは最初目を細めたがすぐに目を見開き


「なるほど!」


ちなみに納得したのはウェラだけで、コーもウェルウィッチアも、そしてリールも理解していなかった。


「どういうこと?」


リールは聞いた。


「ウェラから聞いたでしょ?魔法生物は精ではなく魔力を出すって。魔女は人間でありながら魔法生物と同じ性質を持つ。だから、この隠れ家にいながら子孫繁栄ができたってわけ」


いまいち話が見えないが……もしかして?


「人間とエルフの中間が魔女ですものね。魔力を帯びた人間でなければ子孫を残せないだなんて、いつ滅んでもおかしくない、弱くて狙われやすい種族ですのに……1000年続いた由緒正しい種族ですのよ」


つまり、魔女って職業じゃなくて種族だったのか……


「まあ、人間社会では力が弱いとか男だと魔法使いって言われて区別されてるけどね。ま、それは置いておいて。たとえ後から作るのが無理でも、すでにそこに保管されている分は吸い取られずに残ってるって事。それに、魔力はわずかに残っているから、チャンスもあるわ」


なんか、とんでもない事になってきた


「でも……それをどうやって誰に渡すんですか?」


ウェルウィッチアがリールの股間の前で浮遊しているシルフを見ながら言う。


「そりゃ、あんたが飲めば良いのよ」


ウェルウィッチアは理解が追いつかず口をパクパクさせている。


「まぁ、そうなるでしょうね」


やはり理解しているのはウェラだけ……ではなさそうだった。コーもよく理解しているようだった。


「その話をするのはまた今度。私は解錠の構文を書いているから、その間によろしくね。ウェラ、ちゃんと手伝うのよ」







~しばらくおまちください~










「ボク……本当に……もう、お嫁に行けない……」


ウェルウィッチアが涙目になっている。まぁ、そうなるな


「さ、魔女さん。この構文に触れてくださいな」


ウェルウィッチアが、その空中に浮かんでいる文字に触れると牢獄の扉が吹き飛ぶように開いた。


「解錠……?」


リールが言うとシルフは舌をチロリと出し


「ごめん、ちょっと構文間違えちゃった」


絶対に態とだ。


「さぁ、今から…」


ウェラが先陣を切って階段を駆け上がると、そこは荒野が広がっていた。


ウェラは思わず検索魔法で現在地を表示させた程だ。ここは間違いなくリムール市街だった。


人だけではない。かつてここが街であった証そのものが消し飛んでいた。建物は跡形もなく消し飛んでいる。爆心地から離れていた場所の建物は形こそ留めているが、かつてそれが建物であったとは思えない程の損傷を受けていた。



呆然と立ち尽くすウェラの脇からウェルウィッチアが階段を登って、そしてそのまま気を失った。



「遅かった……」


リールが言うとコーは


「生存者は……いなさそうだの……」


爆心地はどこだろう?そう思うほどの範囲で被害が及んでいる。


「そうだ、看守!看守は?」


階段を降りて詰め所の扉を開けると、そこの看守は気がついていなかった。取り押さえられそうになるのを無理やり引きずって外に出し、彼らは初めて被害を知った。


「な、何が……」


「私達は……こうなるのを防ぐために……この街に戻ってきました…」


「お、俺のせいだ……俺が…せめて話さえ聞いていれば……」


「やめなさいな。どうせ聞いた所で罪人のたれ事だと無視したでしょう?しかし…これでハッキリしてしまいましたわね。帝国は……レトラン帝国は……理由はどうであれニホニア連邦領内を爆撃してしまった」


手で持てる程度の大きさの物でこれだけの火力を発揮する爆弾……抑止力としても、侵略の口実としても……最初の一歩としては十分なものだった。






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