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狙撃-SOGEKI-

旅は順調に進んでおり、まずは滅んだ西の大地を目指すことにした。そこを取り戻せれば新たな繁栄も有り得る話だったからだ。


ここはその途中にあった村なのだが、宿がない。この手の小さな村には旅人が訪れるために宿が必ずあるらしいのに……この村はかつて宿だった建物があるだけだ。


「宿屋の看板が出てるのに、ドア開けたら廃屋だなんて」


「おかしいですわね……困ったら人に聞く、ですわ」

ウェラが村人に声をかけると驚いた様子で村長を呼んできた。


話は村長の家で行うことになった。


簡単に説明すると、この村は北にある砦からの襲撃を定期的に受けており、村に近づく者は誰でも襲うらしい。リール達は襲われなかったが、それは例外とゆうか、最近は人の出入りがなく、見逃したのかもしれないとのこと。


見張りが3人いて、そのいずれかが笛をならすと、中から兵が出てくるらしい。近づけば即座に笛を鳴らされる。兵は強く、ここの村の一番腕の立つ者でも足元にも及ばないそうだ。


「この村から攻撃を加えて、見張りを倒してしまおう。そのあとはウェラの魔法で一網打尽に」


「バカも休み休み言え。ここからでは魔法も届かないんだぞ」


村長が呆れて出ていった。だが、リールに勝算はあった。笛で合図を取っている以上、笛の音が聞こえなければ、兵は砦の中に残ったままだ。


それに、魔法の射程よりも視界の方が長いのだ。まっすぐ近づけば射程に捉えるよりも先に笛を鳴らされるかもしれない。


「皆、俺を信じてほしい」


強く言うリールに皆はその言葉を信じ、彼の指示に従うことにした。ウェルウィッチアとコーは近くの森に姿を隠し、ウェラがリールに付き添う。




狙撃は廃屋となった宿から行うことにした。


「土の精霊よ、我が名のもとに集いなさい。その硬さは鋼の如く。顕現せり力は音の如く。土の精霊よ、今一度、我が名のもとに力を示しなさい。―――顕現せよ、アンツィオ・ライフル!」


あまりの巨大さに支えるのがやっとになるリールを、ウェラは軽々と持ち上げ、狙撃に適したベランダに据えた。


「では、お願いしますわね」


リールは言われた通り狙撃体制に入った。ウェラも銃についている物と同じスコープを持たせてある。


「左下の変な目盛りがあるでしょ?これで人の頭がどこにあるかで距離が分かるんだよ」


およそ1000mか。遠いな。


「ウェラ、風向き分かる?」


「右からですわ。強さはそれなりといったところかしら」


右からの風だと、右回転している弾丸はホップダウンの影響で下へそれる。風自身で左にもそれる。


「この世界は球体?」

「ええ」

「北半分?南半分?」

「北側ですわ」


コリオリ力で右にそれるかな。北向きの射撃だし。コリオリ力で右にそれる分と、風で左にそれる分。風が吹いているタイミングなら、縦軸は同じだろう。


「風の精霊よ、我がもとに集いなさい。その静謐は凪の如く。顕現せり力は森閑の如く。今一度我もとに力を示せ!―――サイレント!」


「本当に銃声消せるの?」

「ええ。ただ、感じることはありますけど」



これで銃声はかき消せる。らしい


ドォオンッ!


凄まじい銃声だった。いや、正確には銃声ではない。音は全く無かったのだから。だが確かに銃声を感じた。


スコープの中には、赤い霧になった見張りが見えた。相手はどこからの何が起きてその見張りが死んだのか理解できず動揺して動けずにいる。リールは即座に狙いを定め、相手が冷静になる間を与えない。


ドォオンッ!


二人目も無事、赤い霧になった。残りは一人。最後の一人はわけが分からず恐怖状態に陥り、膝から崩れ落ちていた。


ドォオンッ!



「お見事、ですわ。さあ、次は私の番ですわね」


ウェラはベランダから飛び降り駆けていく。リールも慌ててあとを追いかけていく。コーやウェルウィッチアは兵が出てきた用に待機しているので、リールもそこに合流する。


「お見事であるぞ。そなたにはいつも驚かされる」

「まさに、未知との遭遇ですね」



コーとウェルウィッチアは驚きながら関心していた。そして、砦の中に火柱が上がるのが見えた。



「終わったかの。さ、村長に報告をせねばな」









「まさかそんな事がありえるはず……ありえない…」


「村長、本当でした!砦の中は死体しかありませんでした!」

「やっと、私達は自由になれたのね…!」

「何年ぶりだろう、勝利を隣の村に教えに行こう!」

「そいつは良いや!馬なんて使わず、走って教えに行こう!」


村人たちは一喜一憂していた。村長はリールの肩に手を置き


「少年よ、救ってくれて有難う。できることは少ないが、君たちをもてなそう」



その夜、ささやかながら宴が開かれ、美味しい食事に歌と踊りを披露された。


「ふふっこういうのも悪くありませんわね」


ウェラが言うとコーはグラスを手に


「折角だ、飲まないか?」


「ええ。喜んで」


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