はじまりのはじまり
俺はエルフ!10歳!
ではない。もともと日本人だ。日本に居た頃は車で遊ぶ年齢だった。20代を謳歌していたとも言える。
伊勢湾岸自動車道を気持ちよく走っていたら横風に煽られ、さらにハンドル操作を誤り……までは覚えている。そこから先は覚えてない。気がついたらエルフに生まれ変わっていた。
しかし、文明人って奴ぁ、電気がないと何もできないんだな。痛感するぜ。俺にできるのはこの村外れの石版を磨くだけ!
だが、この日は違った、いつもは磨かない床板も磨いていたところ、模様の有る石板を発見。丁寧に磨いた。
「この地に縛り付ける……名を……コー…?」
石版ではなく、石碑かもしれない。何か書いてあった。そろそろ帰るか。と踵を返そうとして、ピカピカに磨いた床板で滑ってころんだ。
「あいたたた……やば」
ころんだ拍子に石碑の真下の石版を頭突きでぶっ壊してしまった。
「(そなた、汝たるや)」
エルフ語ではない。だが、聞いたことが有る言葉だ。これなら返答できる
「(私はリールと言う者です。貴方は?)」
「(ほほう、竜語が話せるのかそなた。面白い。我が名はコー。そこに書いてあるであろ?)」
封印されていた者を解き放ってしまった。
「しかし、わらわを見ても腰を抜かさぬのはそなたくらいであろ。そなたの家に案内してくれぬか?」
こうして、彼女を家まで案内した。
「ただいまー」
「おかえりなさ……い」
まぁ、そういう反応になるよね
「ちょっと、皆をよんでくるわね」
「ほっほ、わらわのためにご足労有難うございます、といったところかの」
その少女は嬉しそうだった。
「おお、そなたは覚えておるぞ!わらわを封印した巫女の一人であろ?」
コーが嬉しそうに一人のエルフに歩み寄っていく。
「はい……その節はどうも……」
「あの時は中々楽しかったぞ。再開するかえ?」
「いえ、ご勘弁をっ」
そのエルフは焦っていた。まぁ、要は宿敵?だもんな。たのむよぉ、戦争にならんでくれよぉ?
「しかし…700年くらいかの?そなたらにとっては長かったのではないか?」
長いってもんじゃないよ。700年あったら弥生時代が奈良時代になるんだよ?
「しかし老けたのう」
「さすがに700年も経っては……」
俺の目には見た目麗しいのだけどな、なんで分かるんだろうなぁ
「しかし、巫女は7人おったはずだ。他の者はどこへいったのだ?」
「すでに他界しております」
「早死とはらしくないの」
700年で早死とか、エルフって何年生きれるんだ?
「原因は分かっておりません……相手がいるかどうかも不明です」
「おおかた目星はついた。ま、追って話そう。ほれ、他の者に用はないのだ、散れ、散れ」
彼女には逆らえないのか、村人たちは帰っていった。そして、1対の夫婦と1人の少年。そしてドラゴンだけが残った。
「さて、今どきのエルフには珍しく、シルフの加護を得ておるな」
そのドラゴンがデコピンをかますと、頭の中から光り輝く妖精が頭から出てきた。
「それだけ魔力があり、心も清らかな証拠であるぞ。そなたらには、憑いておらぬな」
最近のエルフは、人間の魔法使いに魔力が劣るって聞いてたけど、まさか?
「1000年前は、エルフと言えばお供のシルフが居るのが当たり前であったがの。最近は見なくなった。そなたは貴重だぞ」
あれ、封印されたのが700年前でしょ?1000年前ってどういう事よ
「コー、ところで何歳なの?」
「おお、よくぞ聞いてくれた。わらわは3200歳ぞ。今年できっかりだ」
まじかよ、西暦より長生きしてるのかよ。人類の歴史って、大したことなかったんだな。あれ、待て。飛行機が登場して100年しか経ってない。人間て進化の速度がせせこましいのか?もしかして
「しかし、ドラゴンはもっと恐ろしいと思っていました」
母親、ランダが言う。その瞳には不安が写っていた。
「まぁ、わらわも心くらいある。順を追って説明すると、世のドラゴンはそれぞれ得意属性がある。炎と風。それに土と水だ。しかし、わらわはどこにも属さぬ氷の属性を持って産まれた。4大属性以外のドラゴンの存在を許すかどうか。その会議は幾度となく繰り返された。特に土のドラゴンのレーは強く反対しておった。結局、長である炎のドラゴン。テーが追放を決定したのだ」
「だれも庇護しなかったの?」
「いや、水のドラゴンであるリーは最後まで追放を反対しておったぞ。今、どこで何をしておるのか分からんがの」
つまり、コーは異端児として村を追い出されたことになる。村のしきたりって怖い。
「あー。ドラゴン様」
「コー」
「え?」
「わらわの名前はコーである。覚えよ」
「コー様、お部屋の準備ができたので、しばらくそちらでどうぞ」
「気が利くのう。わらわもおのごの目の前で脱ぐのは気が引けるからの」
こうして、激動の1日が過ぎた。ベッドの中で思い返すと、あのドラゴン。結構グラマスだったな……




