人が集まりゃ、群れを成す
「おお……ッ!!『残華』!!」
ソウタの剣が振り下ろされ、炎が瞬く。
相手は植物モンスター。植物モンスター相手に炎は弱点だろう。事実、本体に斬撃を喰らったモンスターは瞬く間に光となって消えた。
いまのは、王国の剣士の大半が修めているというランドルフ流のアーツらしい。シンプルな振り下ろしの型なのだという。後隙が大きく、発動まで少し時間が掛かる分、威力は折り紙つきというアーツだ。
だが、それだけ。炎を出す剣技などではない。炎の方は、剣から出ているらしい。いわゆる属性武器、魔法剣の部類らしい。厳密には、魔法剣とは異なるというが……説明されてもよく分らんかった。ソウタとレンも現物を見た方が、早いって説明をぶん投げたしな。
「ふぃ~~結構、様になってきたな」
「そうだな」
結局、ロールは俺とソウタがアタッカーになった。理由はシンプル。ダメージを効率よく与えられるからである。まあ、時にはタンクぽいこともこなすが。それで、レンは遊撃。まさしくシーフってな感じで、足止めやら嫌がらせが主体になった。
これが、上手くいった。俺とソウタがダメージリソースな関係上、俺とソウタの一方はヘイトを集めてしまう。しかし、片方は動けるため、片方が引き付け、もう一方が攻撃ってな感じになった。レンは俺たちの潤滑油みたいな感じだ。サポートと嫌がらせ、その両方を行い、戦闘を有利にしてくれている。
「この感じなら、もっと下に潜ってもいいだろ?」
「俺もそう思う。どうだソウタ?」
「ああ、俺も異論はないよ。これなら、なんとかなるんじゃないか?」
よっしゃとレンが喜ぶ。
レンの性格的に、ガンガン進みたいってところを我慢していたみたいだからな。ソウタがフォローに回っていたけど、そろそろ限界だったのではないだろうか?
「早く行こう!!」
「そんな急ぐなって……」
そんなこんなで、外で買った地図を頼りにダンジョンを潜っていく。途中、何度かエンカウントしたが、慣れた植物モンスターだ。いまさら、俺たちの敵じゃない。
それはそれとして、レンとソウタから面白い話を聞くことができた。
「ありゃ、深夜騎士団の人たちか」
「ミッドナイト……?」
すれ違うプレイヤーを見て、レンがそう零した。
五、六人くらいのパーティーだ。相当な実力者のように見える。
「ああ、有名なクランだよ。フィーエルに拠点を構えてるんだ」
「ほぉん……」
なんも知らん。
そんなものがあるんだなぁ……
「有名クランはいいよなぁ。手厚い支援とか受けられるし……」
「へぇ、レンはクランに入りたいんだ」
「……それはちょっとな」
おや、意外だ。
性格上、入りたいと思っていたんだが……
「大きいギルドは支援も手厚い分、規律とかルールもめんどくさい。それに、ゴタゴタに巻き込まれることもある」
「レンは縛られるのは嫌いだからな。昔っから、ゲームでクランとかにゃ入ってないんだよ。入っても身内だけのヤツだったしな」
「ほぉん、なるほどねぇ」
まあ、こういうゲームだ。楽しみ方も人それぞれだろう。
かく言う俺も、縛られるのは嫌いなタイプだ。だから、グラーフから逃げ回っていたりするんだが……
「今の……深夜騎士団以外のクランだと何が有名なんだ?」
「お、興味湧いてきたか……」
そうだなぁ、とレンは喋り始める。
「やっぱ、有名どころは紅鎧だな。本当はクリムゾンユナイトってクランなんだけど、クランメンバーは赤い鎧を着ているんだ。そこから、紅鎧って言われてる」
「あとは、帝国のツキノワも有名だぞ。表に出てくることはあまりないらしいが、帝国を裏で操っているクランらしい」
変わり種でいうと……とソウタとレンは続けてくれる。
魔法使いだけのクランや調薬、錬金術のクラン、PKクラン……覚えておいて損はないだろう。というか、いくつか聞いたことある名前もあった。やはり、生産系のクランは耳にしたことがあった。街でNPCたちも噂していたクランだった。
「これはクランじゃないんだけど……バトラーと『村』は有名だ」
「…………村?」
バトラー……ってのはともかく、『村』ってなんだ、『村』って。
「バトラーは、闘技場を根城にしているプレイヤーたちだな」
バトラーって執事のことじゃないんだ……
「それで『村』は、簡単に言えばプレイヤーがつくった街みたいなもんだ。共和国にあるんだが……まあ、そこが無法地帯なんだ」
「ほぉ……」
なんだろう。裏カジノとかオークションでもやってんのかな?めちゃくちゃ面白そうな気配がする。
「PKのたまり場みたいなもんだから、レアアイテムなんかよく取引されているらしいんだ。俺とソウタも一度は行ってみたいって話してるんだけど、これがなぁ……」
「なんだよ?」
「さっき、無法地帯って言っただろ?あれな、『壬生浪』に近いレベルなんだ……」
うっわ。まじかよ、誰が作ったんだよ。最低だよ。やめろよ、あんなん再現するの。
もしかしなくても、狂人の集まりみたいだな。
まあ、その分アイテムが集まってくるんだろう。それで、餌も大量に釣れると。
「よく出来ているな、まったく……」
これを考えたのは、グラーフなみの性悪だろ。だけど、グラーフではない。
アイツは戦闘が雑魚雑魚の雑魚だ。ヤツは自分が狙われないためにも、最低限の治安や規律は敷くタイプの女である。少なくても、力が全てという世界は作らない。
「ソウタ……」
「ん?」
「レンはともかく、お前は行くの止めとけ。レンは地べたはいずっても生きていくタイプだと思うが、お前はそうもいかないだろうから」
「お、おう……」
それは誉め言葉なのか?とレンは訝しんでいたが、安心してくれ。誉め言葉ではあるよ。まあ、『壬生浪』の中ではな。
「おっ、着いたか」
そんなこんなで話していると、どうやら着いたらしい。
少し前から、周りの植生が変わり始めていた。
いままでは、花畑のような様相だったが、緑が濃くなり、森や林という感じがする。
「ここからが森林エリアだ。さっきとは、モンスターが変わってくる。
植物モンスターもいるが……この環境だからな。周りに紛れているから、十分に気を付けるように。それと、昆虫のモンスターもエンカウントし始める。だから、レンは索敵の際には気を付けろ」
はーい、と俺とレンは頷いた。
どうしてか、ソウタがリーダー的な役目に落ち着いた。こうして仕切ってくれると、引率の先生味を感じる。
きっといい先生になるはずだ……知らんけど。
次は森林エリア。
聞いた話によると、植物モンスターと昆虫モンスター、そしてPKがひしめくエリアらしい。
ここなら、ハクロの気を引く素材もあるだろう。ハクロもそう感じているのか、袖から顔をのぞかせている。
「さぁて、と。次のエリアも頑張るかぁ……!!」
期待に胸を膨らませながら、俺たちは新たなエリアに足を踏み入れた。




