リベンジダンジョン
「久しぶりだな」
そう俺が言うと、レンとソウタも久しぶりと返してくれた。
今日はダンジョンに潜りに来ていた。前回。そうフンブスまで来ておいて、ダンジョンに入れなかった前回だ。前回とは違い、今回はしっかりギルドに入っている。もう俺を阻むものはいない。
ダンジョンに潜るなら、とソウタとレンに連絡をとってみたところ。彼らも了承してくれたのだ。そんな経緯で、フンブスで彼らと合流していた。
「いや、大変だったな」
ソウタがそう言葉にすると、うんうんとレンも隣で頷く。
「まあ、アインセンまで戻ったからな。かなり手間だった」
無駄なクオリティを誇るストアカである。街の間の移動も実際に動かなければならない。面倒なことに、お手軽な転移などはなく、ローディングの後に別の街にいる……なんてことはない。そういうところはゲームであっていいのに。
まあ、そこは多少ゲーム。馬よりも早い生物がおり、金を払えばそういった馬車にも乗ることが出来るのだ。全てが金次第てのも、なんともリアリティ溢れている。
それに、だからこそ一期一会が際立つというもの。これはこれで、世界観を成り立たせていると感じられる。
いやー、大変ではあったなぁと回顧している俺に、ソウハとレンはそれじゃないと首を振る。
「それも大変だっただろうけど……アインセンに王女様が来たり、『刀姫』も来ていたって聞いたぞ?掲示板じゃ、何かのイベントか?って騒いでた」
「そうだぞ。レンなんて行きたいって騒いでいたからな」
なるほど、王女様と『刀姫』ね……。
ちょっと、知らないかな……?なんというか存じ上げていないと申しますか……俺に会いに来ていたと言いますか、問い詰めに……斬りかかりに来ていたと言いますか。
「あー、ソウダッタンダ。チョット、シラナカッタ」
「ウッソだろー、結構騒いでいたらしいぜ?」
「ほら、俺ってあまり掲示板とか見ないから……」
なんなら、面倒ごとに巻き込まれそうだから、フレのメールも無視っているというか。内容だけ確認して既読つけていないというか。
そういうイベント事というか、有名プレイヤーに興味があるのか、レンが早口に巻き立ててくる。ソウタにヘルプの意味を込めて視線を送ると、彼は仕方ないと嘆息して助け船を出してくれた。
「ほら、レン。カガチが困っているだろ。その辺でやめにしておけよ」
「…………ちぇー、俺もアインセンに居ればよかったなぁ」
「お前、この前装備を新調したせいで金がないだろ。だから、アインセンには歩いていくしかないぞ?」
「だったら、歩いていってた」
「馬鹿じゃん。どちらにせよ、今回は運がなかったってことだ。次の機会に期待しようぜ」
ぽんぽんと慰めるソウタ。
いや、運があるだろう。あんなのに巻き込まれていたら、身体が持たんぞ。やめとけ、やめとけ。碌なことにならん。
「まあ、それはいいだろ……」
今日のメインはダンジョンだ。
RPGと言えば、ダンジョンだからな。俺もそうだが、ハクロのやつも相応にテンションが上がっている。
「で、役割はどうする?」
タンク、アタッカー、ヒーラー……基本はこのあたりか。あとは、アタッカーの中でも魔法職なのか、物理職なのか……前衛、後衛などなど。
まあ、俺もこういったゲームはあまりやってない。だから、聞きかじった程度の知識しかないが……役割分担の大切さは知っている。『壬生浪』でも、あんな混沌としてゲームであっても役割分担はあった。誰が肉壁になるだとか、そういった話ではあったが。
「俺がタンクでいいだろ。で、レンがシーフ。カガチがアタッカーって感じじゃないか?」
「さんせーい。俺は異議なしだ」
レンとソウタが口々に言う。
それに俺も意見はない。
なので……
「うんじゃ、それでいこう」
・・・・・・・
・・・・・
・・・
「任せた!!レン!!カガチ!!」
植物のツタを捌きながら、ソウタが叫ぶ。
「あいよ!!」
「任された!」
レンの短剣が両の手で閃く。ウォルターのそれとは劣るが、アーツを使用することによって技術をカバーしている。
短剣が光を伴って、ツタを斬り裂きながら本体を突いた。述べ五回の斬撃。そう言ったアーツなのだろう。
それを横目に、俺は向けられたツタをかいくぐり、植物モンスターを斬り裂いた。
「――――!!!」
光となって消える植物モンスター。
どうやら、俺の攻撃が止めとなったらしい。
いやはや、初戦闘だったが、けっこう上手くいったな。
「……ふぅ、おつかれ」
いぇーいとハイタッチ。
少し離れたところに居たソウタともハイタッチ。
「初戦闘にしちゃあ上手くいったな」
「そうだな。これなら、問題なさそうじゃないか?」
俺とレンがうんうんと頷きながら、所感を話し合う。
そんな一仕事終えた俺たちをソウタがいや、と遮った。
「後ろから見ていて思ったんだが、レンとソウタの距離が近すぎると思う」
「そうか?」
「結果的に上手くいったが……互いに攻撃し合うんじゃないかって、冷や冷やしたぞ」
そうかね?
そう意識していなかったし、そもそもパーティープレイもあまりしないもんだから詳しくないが、どうなんだろうか?確かに、互いが足を引っ張り合うのなら人数という利点は欠点に成り代わってしまう。
いつもはウォルターくらいとしかパーティーを組まなかったから、失念していたが……そうか。フツーは攻撃が当たらないように気を付けるべきだよな。
いや、ウォルターの動きは散々知っているし……仮に当たったとしてもウォルターだしなぁ。
などと俺が考えていると、レンが不満を漏らした。
「それで上手くいっているんだからいいだろ」
いわゆる結果論。上手く云ったからいいじゃないとPDCAサイクルを否定する言葉。
聞く人が聞けば、怒られるだろうに。
「そうじゃない。レンは気づいていないけど、カガチはお前の動きを見てから動いていたぞ。つまり、カガチが自由に動けてない。今は余裕があるから上手くいっているが、強敵が出てきた時には……」
レン自身も心あたりがあったのか、ソウタの言葉に言い返せない。
「いや、待ってくれ。それは俺のクセみたいなもんだ。だから、そう気にしないでくれ」
「そうなのか……?」
とはいえ、
「ソウタの意見は真っ当だと思う。俺もレンも互いの動きに詳しくない。だから、少しはここら辺で慣らしていかないか?」
少なくとも、慢心して先に進む方がいい。
それに知らないよりも、知っていた方が動き易いことには変わりない。
二人も同じ思いのようで、しばらく合わせるためにこの辺りに留まることになった。




