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ストレンジアルカディア  作者: 東夜 空
天を仰げ、地に伏せろ、汝らの屍を超えて我らは行かん
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呪われた刀


 ヒイロに『雷光』を預けて、俺はエバーテイルの外に出ていた。

 なにやら嫌な予感がしていたので、『隠密』を使ったうえで外に出ている。なんとなくだったが、最近ノーザやら姫様やら……少し面倒ごとに巻き込まれているからな。コッチでもホクロク殿あたりに突っかかれる可能性は十分にある。

 俺の『隠密』スキルじゃ微妙ではあるが、それでも使わないよりかはマシのはず。まあ、使った甲斐があったかは知らんが、平和に外に出れた。


「さて、と……」


 始めるか。

 呪刀を抜く。その刀身は黒く、禍々しい。だが、以前と違って鈍らではない。

 黒いゴブリンの首魁を倒したときも、この前の屍谷での戦闘のときも呪刀は普通の刀以上の切れ味を見せてくれた。元々は名刀なのだ。その片鱗を垣間見ているに過ぎないのかも知れないが。


 いま俺がしようとしているのは、呪刀の能力確認だ。

 急いでする必要はないと考えていたのだが、ソウハを見ていて考えが変わった。

 これから先、あのレベルと渡り合うためには切り札が必要だ。今の俺には切り札と呼べるものが、云い方を変えるならば必殺技がない。必殺技……幼稚な言葉だが、その本質は絶対な自信だ。これが決まれば勝てる。もしくは勝てる状況を造る。そういったもの。

 おそらく、兄さんも有している。いや、あの熱線がそれだろう。

 バルムンク。ソウハの『風』とは違う。ソウハの『風』は、俺の『纏雷』に近い。しかし、バルムンクは圧倒的な一撃だ。今の俺には……おそらく、マネが出来ない。


「参考にするべきは、ソウハだな」


 ソウハの『風』の本質が、自己強化なのか、それとも風を放つものかは分からない。だが、アイツは両者を可能にしている。それは、俺の『纏雷』にもその可能性がある。


「だけど……」 


 それはまだまだ可能性の話だ。今の『纏雷』では、それは出来ない。

 だから、その前に呪刀を確認する必要がある。

 なにせ、新しい発見があるかもしれない。


「ハクロ、見本をお願い」


 まずは『簡易呪詛操作』だ。多分、『呪詛放出』もそれに関わることだろう。

 俺もハクロと一緒にいて、そこそこになる。とはいえ、そんなに長くないが、たいてい一緒にいる。だから、アイツのことはある程度知っている。というか、聞いている。自分から聞くこともあれば、アイツが勝手に喋ることもあるが。


「はいはい……」


 袖からハクロが下りる、いや落ちる。

 そのまま地面に着地して、ハクロは息を吐くように呪詛を操る。


 ……おそらく、呪刀を佩いている影響だろう。手に取るようにとまではいかないが、呪詛を感じ取れる。

 希薄な気配のそれが、ハクロの前に集まっていく。それは呪詛を感じ取れるからこそ理解できる異常。本来、形を持たぬものが形を持つ。

 黒く、暗く、深淵(くろ)く、(くろ)く……紛うことなく世界のバグ。

 それが渦巻き……そして霧散する。


「…………こんなモノかな?」


 むうう……カケラ程度だが理解できるが故に、その出鱈目差が分かる。


「コレは……無理だな」


 ハクロのレベルは無理だ。

 呪詛の物質化、それは可能かも知れないが……ハクロのレベルの呪詛操作、いや呪詛支配は無理だ。それこそ『呪』そのものでなければ。


「まあ、試しみるか」


 物質化でも十分に使えるだろう。

 そう考えて、『呪詛放出』、『呪詛操作』を使ってみる。


「うお……」


 呪刀から呪詛が溢れ出てくるのが感じられる。

 それも出力を変えられるようだ。増やして……減らしてみる。うん、最大放出量はそう多くない。

 呪詛が可視化されるレベルではあるが、物質化はしていない。端から見れば、黒い霧が刀から溢れ出ているようにしか見えないだろう。

 つまるところ……呪詛をビームのように出すことは出来ないということ。


「ガワだけなら何とかなるかもなぁ……」


 でも、外側だけ作ったとしてもハッタリにしかならんか。


「まあ、それは兎も角として」


 『呪詛操作』だ。

 目の前の呪詛が形を変える。

 手足のようにはいかない。子供の粘土遊びのように、何か形をとることはない。

 ……大まかな輪郭を造ることは出来る。だが、細部までは造れない。

 手を造ろうとしても、なんとなくの形しかできないのだ。指は造れず、出来ても突起のついた何かが出来るだけだ。


「うぬぬ……」


 いや、そこはむしろ俺のイメージが足りていないのかも知れない。なにせ、俺はトコトン芸術方面は無理だからなぁ。

 それに自在に動かせるなら兎も角、使いにくいリモコンを通じて操作しているようなもの。上手く出来ないのは、俺が原因なのか、性能的に限界なのか……どちらにせよ出来ていない。


 ここは切り替えて、別のことを試すべきだろう。

 ……射程と凝縮を。


・・・・・


・・・・


・・・



「なるほど……」


 そうか。そうか。

 うんうん、と頷く俺の隣でハクロが呪刀を眺めている。


 それは兎も角、結果をまとめるとしよう。


「基本的には、せいぜいが簡易ってところだな」


 『簡易呪詛操作』の名に恥じないものだった。

 『簡易』に相応しく、操作自体は難しいことは出来ないみたいだ。

 まず、形状については細部までは造れない。大まかな形だけだ。逆を言えばシンプルなものならば造れるということ。たとえば三角錐や円錐、柱や球などと言ったものは……ってことになる。

 次に凝縮。

 これは凝縮すれば凝縮するほど操作が難しくなり、物質化までは出来なかった。この時点で、それを楽々やってのけるハクロが規格外なのか分かるだろう。

 最後に射程。これに関しては、およそ三メートル。それを超えると操作が効かなくなった。


「これだけだと微妙だけど……」


 収穫はあった。

 それは呪詛の状態異常だ。


「あまりにも関係なんで忘れていたが」


 屍谷。

 あそこは常に呪詛が充満している異常地帯だ。それが故に、常人は対策をしなければならないという。そういや、ソウハも何かしていたな。

 呪詛関連、呪い関連だと、呪印のおかげで無効化してしまう。だから、別に快適だなぁとしか思えてしなかった。


「そんな感じだったもんな……」


 重要なのは生物に悪影響を与えるというもの。いや、中には呪詛のせいで進化してしまうのもいるが。あの黒いゴブリンのように。

 まあ、ヤト曰く、ハクロ曰く、呪詛は世界のバグ。そのために在り方を歪める物である、らしい。それを信じるなら、呪詛ではマトモな進化はなしえないのだろう。それこそ、指向性を誰かが与えなければ。


「まあ、それは兎も角として……」


 ネットで調べてみた限り、屍谷で生じる影響は『衰弱』。全ステータスが下がり、スタミナ消費が上がるデバフらしい。

 だが、レベルやスキル構成によって減少値が異なるらしい。微々たることもあれば、まともに動けなくなることも。それに『衰弱』のデバフは、屍谷の瘴気に長く当てられていると悪化するらしい。そのために、聖水を使用して瘴気を祓うのだそう。


 それを見て、試しにゴブリンに呪詛を流し込んでみたら、明らかに動きが悪くなった。つまり、『衰弱』状態になったということだ。

 これは使える……と思ったんだが、生憎と流し込まなきゃならん。刀に呪詛を纏わせて斬るだけじゃ、なにもならんかった。この感じだと、そのまま斬った方が早いんだよな。


「まあ、これだけ分かっただけでも儲けもんだ」


 呪刀をまだ眺めているハクロを袖に戻して、帰ることにする

 とりあえず、試したいことは終わった。


 そろそろダンジョンでも潜りに行くかぁ?

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