ゴミを集める。ただし捨てはしない
「いやー数が多いだけで、そこまでじゃあなかったな」
途中、後衛の連中が鬱陶しかったが、そこはソウハが解決してくれた。また、ハクロも助力してくれたのも大きい。相変わらず呪術師という輩は希少らしい。野生のモンスターも呪いを使うことは少ないため、わざわざ呪いの耐性スキルを取得するプレイヤーは少ない。まあ、呪いを使うモンスター相手ならば、装備をそれ用にすればいいだけだしな。
と、まあこんな感じでハクロの呪術が刺さったという訳である。
そして啖呵を切った俺は、漁夫というか隙を狙って縦横無尽に動いていたのだ。
「カガチ、さ」
「うん?」
「スキル少なすぎない?」
おおと、いきなり核心ついてきたな。
まあそれは俺も感じていたことだ。持ち前の戦闘スキル頼りにここまで来たが、そろそろキツくなってきた。一撃、一撃は『纏雷』で強化できるが、必殺コンボがない。兄さんのようなブッパ出来るなにかがあればいいんだけど……。
名前:カガチ Lv75
ジョブ:戦士
所属:なし
ステータス
HP:760
MP:740
STR:60(66)
DEX:48
AGI:64(70)
INT:5
VIT:8(4)
*()内表記は呪印解放時のステータス
ステータスポイント:2
《スキル》
【短剣 Lv5】【刀 Lv16】【錬金 Lv10】【隠密 Lv9】【隠蔽 Lv2】【跳躍 LvMAX】【再生(未)】【迅雷流 Lv10】【雷耐性 Lv8】【縮地 Lv5】
スキルは一、二……十個か。やっぱり少ないな。これまでスキル関係を積極的にとっていなかったってこともあるが、一番は何とかなってきたのが原因だろう。
というか、【再生(未)】とか勝手に生えてきたものだし。
思えば、最後にステータスを確認したのは昨日のことだ。確かギルドの研修会で見たんだっけ。そう考えると、昨日だけでレベル上がったのか。まあ、あれだけゴブリンを倒したんだし、妥当というところではないだろうか。
「ちょうど十個だな」
「……十個は少なすぎるよ。あと、ジョブは?」
「……戦士」
「はあ!?なんでまだ戦士なの!?」
それは俺も知りたい。正直なところ、ジョブ自体頭からすっぽ抜けてた。そういや、そうだった。このゲーム、ジョブもあったんだった。
「武器は刀だから、中位職は侍になると思う。侍は『刀』スキルが十以上あればいいから……」
「それは辛うじて大丈夫」
「辛うじて……?」
仕方ないだろ。レベル自体は諸事情でたたき上げたけど、スキルはさっぱりなんだ。
「ま、まあ、侍に成れれば侍関係のスキルツリーが解放されるから」
「……なんか、おすすめのスキルとかある?」
「……カガチも私と同じで、アーツはあまり使わないから……」
そして、ソウハ先生による有益なスキル講座は始まった。
「まずは『常駐戦場』だね。刀を装備している限り、ステータスが上がるパッシブ」
「あとは『跳躍』の上位スキルの『空歩』。これは侍のスキルってわけじゃないけど、有用。これで二段ジャンプが可能になるよ」
「個人的に『無重力』。少しの間だけ無重力にするスキル。空中で体勢を変えるのに便利だし、なにより上手く使えば落下ダメージを軽減できる」
「パッシブスキルでいうと、『武の心得』も強い。最初はそこまでだけど、後々強くなるヤツ」
「他には『剣舞【序】』もそこそこ。刃のついた武器を振るうときに補正が入る」
「私が個人的に重宝してるのは、『自己回復』スキルだけど、カガチは『再生』があるから要らないかな。とりあえず、『再生』スキルをしっかりと芽吹かせること」
「残りは『魔力操作』かな。見たところ雷を纏うスキルは、魔力に由来してそうだから。多分、力になるはず」
結果として……
スキル
【短剣 Lv5】【刀 Lv16】【錬金 Lv10】【隠密 Lv9】【隠蔽 Lv2】【跳躍 LvMAX】→【空歩 Lv1】【再生(未)】【迅雷流 Lv10】【雷耐性 Lv8】【縮地 Lv5】【常駐戦場 Lv1】【剣舞【序】Lv1】【無重力 Lv1】【武の心得 Lv1】【魔力操作 Lv1】【心眼 Lv1】【猛火 Lv1】
こんな感じになった。
『心眼』と『猛火』は、ジョブチェンジした時の得点である。侍のスキルツリーから二つ、ただで取得できたから取ったスキルだ。
『心眼』はスキルのリキャストを速め、見えないモノを感じるスキル。そして『猛火』はSTRとAGIに戦闘時に補正が掛かるスキルだ。
ソウハに聞いたところ、どちらも弱くはないらしい。まあ、『猛火』はともかく『心眼』は効果が微妙であるため、なかなか取得するプレイヤーはいないらしい。曰く、『心眼』をとるならアーツの火力を上げるスキルを取得するらしい。
「ありがとうございました。ソウハ先生」
「いや、カガチがおかしいだけだから。なんで、あのスキルでそこまでレベル上げられたの……」
「そりゃあウォルターと頑張ったからね。あの蟻マラソンの地獄を何度繰り返したか」
「うげぇ、アレやる人いたの?」
おっと、これは新たに話を聞く必要がありそうだ。初心者の俺たちに何をさせたんだよ、グラーフ?
「さて、どこか行きたいところある?カガチに合わせる」
「ありがと。もともとフンブスのダンジョンに行く予定だったんだけど……ちょっと切り札の準備をしないといけなくてな。屍谷に行きたい」
屍谷。ハクロがいうには、そこは『呪い』が集まる特別な土地だという。普段から可視化するほどの呪詛が渦巻いている穢れた地。
屍谷という言葉に、ソウハは顔を歪ませた。
「屍谷……いいけど、準備は出来てるの?」
「準備?大丈夫、大丈夫」
「カガチの大丈夫は信じられないで、有名なんだけど……」
どこのどいつだ。そんなほら吹いてるヤツ。
「うわ、気持ち悪」
「酷くね?」
屍谷。そこは呪詛渦巻く、死者の楽園だ。正者を恨む呪詛は、当然のように肉体を蝕む。具体的にはランダムなデバフ、ステータス低下らしい。それを防ぐためには聖水を定期的に振りかけるか、聖職者の浄化を受けるか、耐性装備を身に着ける必要があるという。
だが、俺には無縁な話だ。この身はすでに呪印という最上の呪いに蝕まれている。最近、成長期とばかりに育った呪印を見てると育成ゲームでもしている気になる。まあ、あながち育成ゲームというのは的を得てるんだろうが……。
と、まあ俺はこの呪詛の霧の中でも平然としているのだ。
しかし、この呪詛を前にして、喜ぶヤツが二人。正確には一匹と一つ。
言うまでもなく、一匹はハクロ。そして残るは呪刀である。
変わらぬ吸引力。どこぞの掃除機のキャッチコピーが似合いそうな速度で呪詛の霧を吸い取っていく。そこで悪ノリしだしたのがハクロだ。限界というのは試したいもの。俺もその気持ちは十二分に分かる。ハクロは持ち前の呪詛操作により、周囲から膨大な呪詛を集めると刀に注ぎ始める。呪刀も呪刀とて、その呪詛を遅延なく吸い込んでいくものだから、どんどん量が多くなっていく。
結果として、俺もろとも呪詛に飲み込まれてしまったのだ。
やりすぎだろ。加減を考えろよ、馬鹿野郎。
「コレ、俺じゃなかったら死んでるよな?」
「さあ?そもそも私はこんなことになってるプレイヤーは見たことないし」
「そりゃあ、そうだ。こんなキテレツなこと、やるヤツはいないだろ」
まあ、俺もやってないのだが……悪いのはハクロっていう蛇が原因なんだ。
「まあ、いいんじゃない?……おかげで、ゾンビとかスケルトンも寄ってこないし」
そうなのだ。この屍谷が不人気な理由として、ゾンビやスケルトンがいるのだ。ゲームジャンルからしてホラーではないのだが、見た目が見た目である。それだけで人気のない理由は十分なのである。
うん、俺も苦手じゃないけど、できれば見たくないからね。しかもストアカレベルのリアリティで、ゾンビだのを再現されたら吐き気するよな。
「……気分は空気清浄機、か」
……なんでこんな清掃活動してるんだろうね。




